ジョリーグッドと大塚製薬 VRでひきこもり対策支援 家族や支援者の活用広げて利用者拡大狙う
公開日時 2024/02/14 04:51
ジョリーグッドは、大塚製薬との共同事業であるVR(バーチャル・リアリティ)プログラム「FACEDUO」で、新たに「ひきこもり家族支援VR」の提供を始めた。FACEDUOは、これまで統合失調症患者の就労やコミュニケーションの支援など患者本人を対象としたコンテンツが主だったが、ひきこもり家族支援のコンテンツでは当事者の家族や支援者などの活用を想定。家族会や支援者養成などで活用してもらうことでサービス利用者のすそ野を広げる狙いだ。2月8日にあった発表会で、心理士でもあるDTx事業部の外川大希ビジネスプロデューサーは「VRを通じたリアルな体験で真の理解や共感、気付きにつながる。支援の質の画一性や向上も期待でき、支援者の養成にも活用してほしい」と期待を込めた。
◎医療機関だけでなく行政や支援機関の利用拡大も見据える
2022年10月にサービス提供を始めたFACEDUOは、精神疾患患者のソーシャルスキルトレーニング(SST)プログラムとして展開。現実の社会生活の様々な場面を、360度空間のVRで体験しながら学ぶことができる。利用料は1アカウントごとに月数万円からの定額制で、医療機関を中心に約50施設に導入されている。新たなコンテンツの導入によって、精神科病院やクリニック、就労支援施設だけでなく、ひきこもり支援に取り組む行政機関や支援機関などへの拡大を見据える。
ひきこもり家族支援コンテンツは「状況体験」「工夫発見」「実戦練習」の3パートで構成され、ひきこもりの子どもとの日常のやり取りを親と子双方の視点から体験。専門医による監修を基にしたアドバイスを基に課題や改善策を学ぶ内容になっている。外川氏は、ひきこもり当事者の中には外出自体にハードルがあり、支援の手が届きにくいといった問題点を指摘。その上で「家族や支援者がひきこもりの方との適切な関わり方を学んで、当事者が支援機関につながっていける流れをつくっていきたい」とし、医療機関の受診や支援機関への通所などを促進して、相乗的にFACEDUOの利用や普及拡大につなげる狙いも示した。
◎DTx「実態は黎明期」 医療者の理解や上市までの長さに課題
発表会では、同社の片岡遊DTx事業局長がデジタルヘルスやDTx(デジタル・セラピューティクス)の市場動向を解説した。高血圧や不眠症などのデジタル治療アプリやゲームを通じたADHD治療アプリなど次々に新たなサービスが生まれている一方で、市場では苦戦も強いられている現状を紹介。その上で「チャンスでもある課題」として、①デジタル治療を使うタイミングや使い方が医療者に理解されにくい②薬事承認や上市までの期間が長く、ローンチ後にブラッシュアップしていく技術サイクルとのギャップがある③病院などでの処方に限られ、市場流通のスケールが限定される④患者が毎日使いたくなるモチベーション設計―を挙げた。片岡氏は「DTxというキーワードはホットになっているが、実態はまだまだ黎明期で探索的な時期にある。これからどう市場に受け入れられていくのかというフェーズにある」と語った。
また、Appleが2月に発売した次世代型デバイス「Vision Pro」に触れ、「現実空間にいろいろなものを掛け合わせることができ、非常に画期的。VisionPROを含めたXR(クロス・リアリティ)デバイスは今後も進化すると思っており、空間を掛け合わせて仕掛けを作ったり、シームレスに使えたりする点はデジタルヘルスとも非常に相性がいい。より注力して取り組んでいきたい」と強調した。