オルミエントの若年性特発性関節炎・小児アトピー性皮膚炎の追加など4製品承認へ 薬食審部会が了承
公開日時 2024/02/06 04:50
厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は2月5日、日本イーライリリーのJAK阻害剤・オルミエントの多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(pJIA)の効能追加およびアトピー性皮膚炎の小児用量追加など新薬4製品の承認可否を審議し、いずれも承認を了承した。この中にはサノフィの抗IL-4/13受容体抗体・デュピクセントの特発性の慢性蕁麻疹の効能追加もある。
◎抗HIV薬・ツルバダの予防適応、事前評価で公知申請を了承 保険適用なし
また、23年11月の厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請が妥当と判断されたギリアド・サイエンシズの抗HIV薬・ツルバダの「HIV-1感染症の予防」の効能追加に関して、同検討会議が作成した報告書に基づき、事前評価を行い、了承した。通常、事前評価が終了した段階で、薬事承認を待たずに保険適用されることになるが、同省保険局の担当者は、第二部会事後ブリーフィングで「ツルバダの保険適用の範囲はHIV感染者の治療を目的として使用した場合に限る予定にしており、通常通り予防に関しては保険適用しないという考え方になる」と話した。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽オルミエント錠2mg、同錠4mg、同錠1mg(バリシチニブ、日本イーライリリー):「既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は4年。
JAK阻害剤。若年性特発性関節炎(JIA)は、16歳未満で発症する6週間以上持続する原因不明の関節炎と定義される自己免疫疾患であり、小児期リウマチ性疾患に分類される。pJIAの適応を持つ生物製剤には、ヒュミラやエンブレル、オレンシア、アクテムラがあり、「基本的にはこれらの生物製剤と同様の臨床的位置付けと考えている」(厚労省医薬局担当者)としている。
JAK阻害剤としてpJIAの適応取得はオリミエントが初めて。用法・用量は「通常、2歳以上の患者には体重に応じバリシチニブとして以下の投与量を1日1回経口投与する。・30kg以上:通常、4mgとし、患者の状態に応じて2mgに減量すること。・30kg未満:通常、2mgとし、患者の状態に応じて1mgに減量すること」となる。なお、新規格の1mg錠には、過去の全ての適応が付く。
▽オルミエント錠2mg、同錠4mg、同錠1mg(バリシチニブ、日本イーライリリー):「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は4年。
20年12月に「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」の効能・効果で承認されており、成人に対する用法・用量が設定されている。追加される小児の用法・用量は「通常、2歳以上の患者には体重に応じバリシチニブとして以下の投与量を1日1回経口投与する。・30kg以上:通常、4mgとし、患者の状態に応じて2mgに減量すること。・30kg未満:通常、2mgとし、患者の状態に応じて1mgに減量すること」となり、「2歳以上」での設定となっている。
既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の効能・効果を持つ経口投与のJAK阻害剤には、リンヴォック錠とサイバインコ錠があり、いずれも小児の用法・用量が設定されているが、リンヴォックは「12歳以上かつ体重30kg以上」、サイバインコは「12歳以上」での設定となっている。
▽デュピクセント皮下注300mgシリンジ、同皮下注300mgペン、同皮下注 200mgシリンジ(デュピルマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「既存治療で効果不十分な特発性の慢性蕁麻疹」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。
ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体。特発性の慢性蕁麻疹(CSU)は、膨疹や皮下深部の浮腫が突然現れることを特徴とする慢性炎症性皮膚疾患。
用法・用量は「通常、成人にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。通常、生後12歳以上の小児にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として体重に応じて以下を皮下投与する。・30kg以上60kg未満:初回に400mg、その後は1回200mgを2週間隔。・60kg以上:初回に600mg、その後は1回300mgを2週間隔」となる。
デュピクセントにとってCSUは、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、結節性痒疹に続く5つ目の適応となる。海外でCSU の承認を取得している国・地域はない(23年11月時点)。
▽オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mg、同点滴静注120mg、同点滴静注240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。上皮系皮膚悪性腫瘍は、上皮系腫瘍として系統別分類される皮膚がんの総称であり、有棘細胞がん、基底細胞がん、乳房外パジェット病、皮膚付属器がん(汗腺がん、脂腺がん、毛包がんなど)などが含まれる。患者数は2万5000人未満と推測されている。
90%以上の患者は手術療法を中心とした局所治療による根治が期待されるが、根治切除不能な進行・再発例は予後不良で、標準治療が確立されていない。厚労省医薬局の担当者は「現在使用されている主な医薬品として、カンプト、ペプレオ、ブレオがあり、臨床的位置付けとしては、治療選択肢の一つになる」としている。
オプジーボの上皮系皮膚悪性腫瘍について、海外で承認を取得している国・地域はない(23年10月時点)。
▽ビキセオス配合静注用(ダウノルビシン塩酸塩・シタラビン、日本新薬):「高リスク急性骨髄性白血病」を効能・効果とする新医療用配合剤。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
若年者(65歳未満)急性骨髄性白血病(AML)に対する標準的寛解導入療法はアントラサイクリン+標準量シタラビンである。ビキセオス配合静注用は、アントラサイクリン系薬剤のダウノルビシンとピリミジン系代謝拮抗薬シタラビンを5:1のモル比で配合したリポソーム製剤であり、白血病細胞に取り込まれ、細胞内でリポソームが分解されて有効成分を放出し、薬効を発揮する。用法・用量は寛解導入療法と地固め療法で設定されている。
AMLの患者数は約1万1000人で、投与対象となる高リスク患者はそれより限定される。海外ではAMLにおいて米国・欧州を含む31カ国以上の国・地域で承認されている(23年10月時点)。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽アレジオン眼瞼クリーム0.5%(エピナスチン塩酸塩、参天製薬):「アレルギー性結膜炎」を効能・効果とする新剤形医薬品。
用法・用量は「通常、適量を1日1回上下眼瞼に塗布する」となる。