【中医協総会 12月8日 議事要旨 処遇改善についての課題と論点】
公開日時 2023/12/11 05:59
中医協総会は12月8日、処遇改善についての課題と論点について事務局から説明を受け、議論した。本誌は診療・支払各側委員の発言について議事要旨として公開する。
(※事務局説明は略)
小塩会長:はい、ありがとうございます。それでは、ただいまの説明につきましてご質問等ございましたらよろしくお願いいたします。長島委員お願いいたします。
長島委員:はい、資料24ページの論点(処遇改善についての課題と論点)に沿ってコメントいたします。これまでの主張の繰り返しとなりますが、春闘の全産業平均の賃上げ率が3.58%となっている中、医療介護の賃上げは一般企業に及んでおりません。その結果、高齢化等による需要増加にも関わらず、他産業に人材が流出し、医療分野における有効求人倍率は、前職種平均の2から3倍程度の水準で高止まりしており、人材の確保が困難となっています。
そして、公定価格による経営する医療機関においては、価格転嫁できないことなどにより、経営努力のみでは対応が困難です。賃上げを確実に達成していくという政権目標に沿うためにも公定価格である診療報酬を確実に引き上げる体は必須と言えます。ただ、看護職員処遇改善評価料は、資料24ページの課題にも記載されている通り、看護職員処遇改善補助金を受けた医療機関の処遇改善を維持することを担保しなければならず、補助金の仕組みを診療報酬でどう実現できるかを検討した結果の産物であったと認識しております。
これに対して、今回の改定では、全ての医療関係職種の賃上げが必要であり、看護職員以上に医療機関や職種により処遇が様々であることが想定されます。このため、看護職員処遇改善評価料の仕組みにとらわれず、診療報酬としてどのような評価方法が考えられるのかについて検討が必要であり、「入院・外来医 療等の調査・評価分科会」において技術的な検討を行うことに異論ありません。
私からは以上ですが、小塩会長におかれましては、看護協会の専門医に機会を聞く機会をご検討いただければ幸いです。
小塩会長:はい、ありがとうございました。続きまして林委員お願いいたします。
林委員:はい、ありがとうございます。資料24ページの論点についてでございますが、医療機関等の職員における処遇改善につきまして「入院・外来医療等の調査・評価分科会」で分析検討いただくことにつきましては賛同いたします。
全産業平均を下回っている全ての医療機関等の職員につきましてしっかりと分析を行っていただきたいと思いますので、分科会におきまして引き続きご検討のほどよろしくお願いしたいと思っております。以上でございます。
小塩会長:はい、ありがとうございます。それでは続きまして森委員お願いいたします。
森委員:はい、ありがとうございます。薬局、医療機関における処遇改善について発言させていただきます。新型コロナウイルス感染症の流行、6年連続の薬価改定、物価・賃金高騰などの影響により、薬局や医療機関の経営は大きな影響を受けていますが、診療報酬は公定価格であるため、増加したコストの転嫁等ができず、物価上昇に対応してスタッフの生活を支えるための賃上げなどの処遇改善が満足にできていない状況です。
先日の医療経済実態調査の結果でも薬局の給与の伸び率は、管理薬剤師で1.5%、勤務薬剤師で0.1%。日薬の賃上げ状況調査ではベースアップ金額が全産業の半分にも満たない金額となっています。また、薬局の事務職員の平均賃金は年間280万円と全産業の平均を大きく下回っています。薬剤師を初めとした医療職や事務職員などの人手不足に拍車をかけている状況で、特に事務職員等の人手不足は深刻な条件状況になっています。
薬剤師は薬局だけでなく医療機関でも地域医療を支えるために働いておりますので、このような視点も含めて、今回の改定で薬局や医療機関における処遇改善の実施に向けた採用が必要で、どのような対応ができるのか検討していくべきものと考えます。
論点に示されている内容に異論ありませんので、「入院・外来医療等の調査・評価分科会」におかれましては、これらの視点を持ってご議論やご検討をお願いできればと思います。私からは以上です。
小塩会長:はい、ありがとうございます。それでは佐保委員お願いいたします。
佐保委員:はい、ありがとうございます。まず資料24ページの論点に書かれていることに異論はございません。患者が安心して医療を受けられるために、医療人材の確保が重要であり、そのためには、医療機関で働く全ての労働者の賃金改善は必要不可欠と考えます。実際の賃上げに繋がる確実に従事者の従事者の手元に気づく仕組みについて、技術的な分析、検討をお願いいたします。私からは以上です。
会長:はい、ありがとうございます。松本委員お願いいたします。
松本委員:はい、ありがとうございます。資料24ページの論点につきましては、これまでも申し上げてきました通り、処遇改善は医療機関、薬局のマネージメント、すなわち配分の見直しで対応することが原則だと考えております。
政府の方針として、賃上げに対応しなきゃならないことは十分理解いたしますが、医療経済実態調査で明らかになった一般企業で利益剰余分に相当する資本の増加分を原資にすれば対応は可能なはずと考えます。
また、論点の冒頭に、医療関係職種は全産業平均の賃上げが追いついていないとの記載がございますけども、一方で医療関係職種より賃金が伸びていた業界もございます。
今後も医療費が増加し続ける中で、医療関係職種の賃上げを単純に患者負担や保険料に転嫁すべきではないと考えます。しかしながら、相対的に賃金が低い医療従事者の職務改善について配分の見直しで吸収するところであれば、一定の理解はできます。
いろんな時間は限られておりますので、分科会で技術的に検討することは了承いたしますが、あくまでも技術的な分析のみであり、最終的な決定は総会で行うということには十分ご留意いただきたいと思います。
また、仮に診療報酬で対応するにしても、幅広い職種や医療機関を対象とするのであれば、看護職員処遇改善評価料のように個々の医療機関の職員数と患者数に応じた仕組みには限界があります。特に診療所については、医療経済実態調査で経営が好調なことが明らかですので、極めて慎重に対応すべきです。
受診する医療機関によって自己負担が変わるなど、診療報酬が複雑になりすぎないことにも配慮し、賃上げの一部に充てるイメージで、最低限の評価に留めるべきと考えております。私からは以上でございます。
小塩会長:はい、ありがとうございます。はい続きまして鳥潟委員お願いいたします。
鳥潟委員:繰り返しで申し訳ございませんが診療報酬の中で処遇改善を行うというのは非常に難易度の高いことだと思っておりますので、検討を進めることに関しては異論はございませんけども、やはり患者負担が避けられないことなどから、慎重な検討をお願いしたいというふうに考えております。
小塩会長:はい、ありがとうございます。池端委員お願いいたします。
池端委員:はい、ありがとうございます。資料24ページの論点について技術的検討を分科会で進めるということについては賛同したいと思います。
先ほど松本委員も発言されていましたが、時間的余裕はあまりないと思います。この分科会でどの程度、何回ぐらい議論してそして総会で最終決定することになるかと思いますけども、その辺のタイムスケジュールを事務局がどう考えているかお聞かせいただきたいと思います。
特に評価料でこれを広げるのは非常に難しいと思うので、その辺も含めて、例えば介護保険の処遇改善加算のような方法をとるのかどうかということも含めて検討になると思いますけども、タイムスケジュールだけでも教えていただければと思います。以上です。
小塩会長:ありがとうございます。ただいま池端委員から分科会のタイムスケジュールについてのご質問ございました。いかがでしょうか?
事務局:医療課長でございます。本日この場でご了解いただきますれば日程調整を開始します。複数回の検討を年末年始を挟んで行っていただこうと考えてございます。年明けのしかるべきタイミングで総会に諮らせていただきたいと思っております。以上です。
小塩会長:はい、ありがとうございます。他はよろしいでしょうか。先ほど長島委員から木澤専門委員のご意見もというご要望でしたので、よろしくお願いいたします。
木澤専門委員(日本看護協会常任理事):はい、ありがとうございます。医療関係職種の賃金引き上げに向けた診療報酬上の技術的検討を行うに際し、「入院・外来医療等の調査・評価分科会」において、必要な分析を進めることについて異論はございません。
看護職員処遇改善評価料を算定している医療機関では賃金が改善されましたが、対象医療機関が限られておりますので、看護職員全体の3分の2にあたる約100万人は対象外になっております。
看護職員の給与は年齢が上がっても横ばいで、40代前半では一般産業より7万円以上低くなります。この給与には夜勤従事手当も含まれており、業務量や命に向き合う責任の重さに対して、見合っているとは言い難い状況です。ましてや、看護補助者は医療関係職種の中で最も低い賃金であり、全産業平均を大きく下回っております。医療の場は、様々な医療関係職種が自らの役割を果たし、協働することで成り立っております。生産年齢人口が減少していく中で、医療関係職種の人材確保は、安心安全な医療を国民に提供し続ける上で不可欠です。
医療関係職種の処遇改善に向けてしっかりと中医協において議論するためには、以上のようなことに、ご留意いただき、詳細かつ丁寧な分析を分科会にお願いしたいと思っております。私からは以上となります。
小塩会長:はい、お待たせいたしました。太田委員お願いいたします。
太田委員:はい、ありがとうございます。論点の分科会において検討進めることに関して異論はございません。我々病院団体は入院基本料としての基本料の大幅な引き上げを求めてきてございます。
もちろんこれがいわゆる処遇改善にしっかりと使われたかどうかっていうものの検証というのは必要ではありますけれども、前回の看護の処遇改善評価料でやったように、これ本当にテクニカルに100何十種類だとか200種類だとかっていうようなものをやっていかないと確実に処遇改善に振られるような仕組みを作るのは難しいというふうに思ってます。
なので、それに関して本当にそこまでの詳細な設計をするのか、それとも各医療機関に任せていただいて、その地域の中での労働市場等による様々な神の見えざる手によって、ある一定程度しっかりとその処遇改善が行われるような形で監視していくのかを含めて、どこまで診療報酬上テクニカルな制度設計をしていった方がいいのかどうなのかということも含めて、分科会の方でメリット・デメリットを検討いただきたいと思います。
確かに全産業平均と比べて全体では賃上げに追いついてないことはありますが、いくつかの病院はもう処遇改善加算をもらった以上に全ての職員の給与を上げたと、自力で何とか上げたというところもございます。
どこの基準から(賃金を)上げたことを評価するかがありまして、いわゆる地域の平均より上がっていたらいいのか、既に最初に上げたところから更に上げないと評価されないのかなど、様々な論点が出てくるかというふうに思います。
本当に限られた期間になりますけれども、分科会の方で積極的に様々な案を作っていただけることを期待しております。以上です。はい、ありがとうございます。
小塩会長:他はよろしいでしょうか?はいそれでは他にご質問等ないようですので、本件に係る質疑はこのあたりといたします。今後、事務局におかれましては本日いただいたご意見も踏まえて、対応していただくようにお願いいたします。