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長期収載品の選定療養 基準の後発品は「最も高い薬価」を 国がGL策定などで明確なルール設定を

公開日時 2023/12/04 06:30
中医協総会は12月1日、長期収載品を選定療養として位置づけることについて議論し、前提となる後発品の薬価を3価格帯のうち、「最も高い薬価」を基準とすべきとの意見が診療・支払各側からあがった。“医療上の必要性”を理由とする銘柄別処方(変更不可)では保険給付を認める方針であることから、診療側は、患者トラブルなどが起きないよう、明確なルールの設定を求めた。公益側の飯塚敏晃委員(東京大大学院経済学研究科教授)は、「国民にもわかるようガイドライン等の策定をご検討いただけないか」と指摘。国民への丁寧な周知を求める意見も診療・支払各側から示された。

◎前提の後発品、最低薬価基準で保険給付の“逆転現象”も

厚労省はこの日の中医協に、長期収載品を選定療養とする際の前提となる後発品の価格を論点にあげた。後発品の最低薬価を基準とする場合、最高薬価の後発品を選択したほうが長期収載品を選択するよりも、保険給付が高くなる“逆転現象”が起きる可能性を指摘し、基準となる後発品の価格帯を論点とした。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「長期収載品よりも後発品の方が保険給付範囲が大きくなるようであれば、後発品使用促進の意味、つまり医療費の伸びを抑えつつ、国民皆保険の維持を図るという意味がなくなってしまい、制度上の混乱が大きいように思う」と指摘。「あくまでも後発品の使用が促進され、複雑になりすぎない形で設定するのが適当」との考えを示した。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「後発品の最高薬価を基準とすることが良い」と表明。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「後発品の最低価格を基準とした場合、患者にとっては後発品を使用するインセンティブがより強く働くとは思うが、それによって保険給付がむしろ多くなることには違和感を覚える。これは複数ある後発品の中間の薬価を基準とした場合にも、価格差によっては起こりうることだろう」として、
「後発品の最高薬価を基準とすることが妥当」との考えを示した。

◎選定療養の患者負担水準「AGか否かで給付率変えることも一考」

選定療養の際の患者負担の水準については、診療側の長島委員が、「長期収載品の薬価を超えて無制限に上乗せするのは当然のことながら適当ではない。また、長期収載品の薬価よりも低い金額設定を認めることで競争を煽るようなことは、医薬品の安定供給の観点からも適当ではない」と述べ、選定療養導入に際しても、長期収載品の収載薬価を基準にする必要性を指摘した。

診療側の森委員は、「(後発品と長期収載品の)差額に対して保険外併用療養費内で見る部分と、選定療養費とする部分の率を設定するなどの検討が必要」と表明。「“AGか否か”で給付率を変えることも考えられるが、複雑な仕組みとなり、現場が混乱することがないよう配慮が必要ではないか」と述べた。

患者の自己負担について診療側は「過度にメリハリを利かせると、自己負担が変動することによる患者さんの混乱や、安定供給に支障が生じる恐れがある。最初はできるだけ低い割合から始めるべき」(診療側・長島委員)、「さらなる供給不安を招くことのないよう、急激な自己負担の変化により患者さんの選好が大きく変わることのないよう配慮が必要。導入初期は、過度な負担増加につながらないよう慎重に進めるべき」(診療側・森委員)と患者の自己負担に配慮することを求める声があがった。

一方、支払側の松本委員は、「後発品との差額の全額は当然ないと考えるが、患者の負担増に一定の配慮をしつつ、後発品を選択するインセンティブとなる程度の水準を設定すべき」との考えを示した。

◎支払側「患者希望は原則選定療養に」 診療側「医療上の必要性から患者希望のケースも」

厚労省はこの日の中医協に、保険給付と選定療養の適用場面を整理し、イメージを示した。後発品を調剤した場合は、いずれも保険給付となることが前提としたうえで、「銘柄別処方(変更不可)で医療上の必要性を理由とする場合」については、先発品としての保険給付を認める方針を示した。一方で、銘柄別処方(変更可)や一般名処方で、患者希望により先発品を処方・調剤した場合や、後発品の確保が困難な場合の保険給付のあり方について論点にあげた。

支払側の松本委員は、「銘柄名処方の場合で、患者希望により先発医薬品を処方・調剤した場合と、一般名処方した場合は、いずれも原則として、選定療養を対象とした上で、除外の理由をレセプトに明記するなど、医学的妥当な判断を担保すべき」と述べた。

一方で、診療側からは“患者希望”が医療上の必要性と重なるケースがあるとの指摘が出た。診療側の長島委員は、診療現場では「もっと複雑」と指摘。患者希望で先発品を選んだケースとして、「使用感や効き目の違いなど、患者さんご自身が感じている医療上の必要性が理由となっている場合もある」との例をあげた。診療側の森委員も、臨床現場での判断の難しさを指摘。小児用の粉薬や高齢者への錠剤などを例にあげ、「様々なケースがあることを踏まえ、慎重に考えるべき」と述べた。貼り心地など製剤工夫をした医薬品については、「製剤ごとに判断するのではなく、個々の患者さんごとに評価すべき。医学・薬学的な観点から製剤工夫したものが必要と判断される場合は、医療上の必要性があるものとして扱うべき」との考えを示した。

◎医療上の必要性 患者トラブル避けるためにも明確ルールを GL策定検討を

“医療上の必要性”については、明確なルール設定を求める声が診療・支払各側からあがった。
診療側の長島委員は、「自己負担が増えると、トラブルになる可能性もある。どのような場合に保険給付となるのか。あるいは、どのような場合に選定療養となるのか。明確なルールを設けていただく必要がある」として、代表的な事例によるシミュレーションなどを踏まえた検討の必要性を指摘した。

診療側の森委員は、「現場の薬局が判断に迷うことのないよう、また、患者とのトラブルとなることがないよう、なるべくシンプルな形にして処方箋で判断できるようなスキームにしていただきたい」と要望。過去に薬剤一部負担金を導入した際に医療現場が混乱したことを引き合いに、「今回は、患者個々によって“使用できる、使用できない”ということがあり、より混乱するのではないか。丁寧に説明できるよう、準備しておかなければいけないのではないか」と述べた。

支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も、「医療上の必要性があると認められる場合の解釈については、客観的な判断が可能となるよう、基準や具体例を明確に示していただきたい」と述べた。

公益側の飯塚敏晃委員(東京大大学院経済学研究科教授)は、抗てんかん薬では医療上の必要性により長期収載品がガイドライン上で推奨されているケースがあることを引き合いに、「医療上の必要性の捉え方が、仮に医療機関によって大きくばらつくことがあると、国民が大変混乱する。どのような場合に医療上の必要性があるのか、国民にもわかるようガイドライン等の策定をご検討いただけないか」と述べ、様々なケースを例示することを求めた。患者の希望により使用された場合のケースや頻度を把握する必要性も指摘し、「データ上で識別、把握できるよう診療報酬の項目等での工夫ができれば、お考えいただきたい」と要望した。

◎後発品供給不安 「全体として供給できているものは対象に」の声も柔軟な運用求める

供給不安が続く後発品の確保が困難な場合については、支払側の松本委員が「出荷停止や出荷調整がかかっているものは、一定の配慮が必要だが、全体として必要量が供給できているものについては、原則として選定療養の対象とする方向で検討すべきではないか」との考えを示した。

診療側の長島委員は、「後発品の供給不安により、やむを得ず先発品を選択せざるを得ない場合も当然ある。そういった場合も、選定療養とすべきではない」との見解を表明。診療側の森委員は、「出荷調整になっていなくても入手困難なことがあり、出荷状況、それから薬局の在庫は日々刻々と変化をしている。一定の考え方を示すことが必要だが、流通在庫状況から柔軟に運用できるようにする必要がある」と柔軟な運用を求めた。

支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は、「後発品がないにもかわらず、選定療養として自己負担が増すということに対して患者は納得できないのではないか」と指摘した。

◎院内処方、入院時の対応 診療側は除外求める

院内処方、入院時の対応については、太田圭洋委員(日本医療法人協会副会長)が急性期一般入院基本料を算定する医療機関では薬剤費を出来高請求しているとして、選定療養の導入で「かなり大きな混乱が入院現場に出て、流通がかなり大きく変わる可能性があり、非常に影響は大きいと思う。入院の院内処方また入院時については、今回の選定療養の議論から外すべき」と表明。池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も、「入院に関してはこの選定療養は非常に馴染まない。出来高の入院については外していただきたい」と要望した。

◎対象品目 診療側「一定程度置き換え進んでいるもの」 支払側「“5年、50%”を目安に」

対象品目については、G1・G2、Z2などのように、長期収載品の薬価ルールが後発品の上市後の年数に着目したルールになっていることから、厚労省は「後発品上市後の年数」、「後発品の置換率」の観点を論点にあげた。

診療側の森委員は、「後発品上市後の一定期間は置き換えを進めていくために必要な移行期間であるため、少なくとも後発品上市直後は対象とすべきではない。また、後発品の置き換え率については安定供給への影響なども踏まえ、一定程度置き換えが進んでいるものを対象とすることが良い」と述べた。

一方、支払側の松本委員は、「極力広く対象にするという観点で、後発品上市後の年数はZ2の適用時期となる5年が一つの目安になると考える。後発品の置換率は、医療上の必要性に配慮した除外要件の設定を前提とした上で、50%を目安とすることが考えられる」と表明。“50%”とした理由について、「半数を超えれば、ある程度後発品が浸透したと考えられるライン」との考えも示した。


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