厚生労働省保険局は11月９日の社会保障審議会医療保険部会に、長期収載品の使用を選定療養に位置付け、後発品との差額を一部自己負担とすることを提案した。長期収載品から後発品への置き換えを進めることで、長期収載品依存から脱却し、研究開発型ビジネスモデルへと転換を促す狙いがある。出席委員からは賛同する声があがり、今後は対象範囲や給付範囲に議論が移る。詳細は今後詰めることになるが、「薬価収載から長期間が経過し、薬価の低い品目」では薬価差が少なく、後発品への置き換えが進みにくいことが指摘されており、まずはこうした品目を軸に対象範囲についての議論が進む見通し。年末までに議論を詰める。

厚労省は「イノベーション推進と安定供給確保に向けたビジネスモデルの転換」を打ち出し、これに合致した薬価制度を構築する方向性を示した。長期収載品は薬価の高止まりが指摘されており、新薬メーカーの長期収載品依存も指摘されて久しい。長期収載品から後発品へのさらなる置き換えを進めることで、薬剤費の配分を見直し、イノベーション推進と安定供給を実現する制度としたい考えだ。

◎後発品の置き換え推進へ「従来とは異なるアプローチで」　患者嗜好で長期収載品選択も

このため、後発品については安定供給を前提に、さらなる推進が求められる。後発品の置換率は数量ベースで80％となるなど浸透が進んできているが、金額ベースでは５割程度にとどまっており、「従来とは異なるアプローチで後発品の置換を進めていく必要がある」とした。この方策として厚労省がこの日提案したのが、長期収載品の使用を選定療養に位置付け、差額を一部自己負担とすることだ。

後発品への置き換えが進まない長期収載品について、日本ジェネリック製薬協会は、「薬価収載から長期間が経ち、長期収載品の薬価も低く、その薬価の差も少ないような成分では置き換えが進みにくい」としている。また、外用剤（貼付剤・点眼剤）などで効果には差がないものの、使用感などの付加価値で長期収載品の使用を選択していると推察される品目もある。厚労省の調査でも、医師が先発品を指定する理由は、「患者が先発品を希望するから」
がトップになっている。

◎「医療上の必要性」で除外など配慮求める声あがる　

こうしたことをベースに議論が進むとみられるが、対象範囲について委員からは「除外要件」を求める声もあがった。後発品への置き換えが進まない品目の中には、「医療上の必要性」が理由であるケースもある。例えば、抗てんかん薬では、発作が抑制されている場合は服用中の薬剤を切り替えないことが推奨されており、後発品に切り替えることが難しい。猪口雄二委員（日本医師会副会長）が「医師の判断の下、患者さんにとって医療上必要な品目が適切に選択できる仕組みとするなど、参照価格とは異なるものである必要がある。精緻な議論が必要だ」と述べ、“医療上必要な品目”への配慮を求めた。佐野雅宏委員（健康保険組合連合会副会長）は、「一定の配慮が必要。選定療養の除外要件を設定することはもちろん考えないといけない。適正な運用の観点から医学的妥当な判断を担保する必要がある」と述べた。一方で、北川博康委員（全国健康保険協会理事長）は、「患者負担にも配慮し、幅広く当てはめるべき」との声もあがり、こうした声を踏まえて対象範囲の検討を進める。

薬価制度では、“G１・G２ルール”が導入されており、上市後10年が経過してた品目については、後発品への置換え率に基づき、長期収載品の薬価を段階的に引き下げられており、薬価制度との整合性も踏まえて、検討を進める方針。検討会では、後発品の供給不安が続く中で、「前提とする安定供給が全くできていないことが問題」（池端幸彦委員・日本慢性期医療協会副会長）など、安定供給に対する懸念も聞かれ、安定供給に配慮した制度設計を行うこととなりそうだ。

◎「後発品超える薬価分は一律自己負担」の参照価格とは異なる仕組み

長期収載品をめぐっては、これまでに参照価格制などが議論されてきた。厚労省は、参照価格制について、「後発品の薬価を超える部分は一律、全額自己負担」と説明し、今回提案した制度は参照価格制とは異なることを強調した。選定の療養の導入は、健康保険法の附則に明記されている３割負担の原則には抵触せず、導入に法改正の必要性はないとしている。