バイタルケーエスケーHD・村井社長 薬価差圧縮も収益は「仕入れ価上昇で相殺」 薬価改定後の価格交渉
公開日時 2024/11/12 04:50
バイタルケーエスケー・ホールディングス(HD)の村井泰介代表取締役社長は11月11日、第2四半期決算説明会に臨み、4月の薬価改定後の価格交渉について、「なんとか薬価差は圧縮してきている」との感触を示した。ただ、「仕入れ原価は上昇しており収益改善はそれほど大きくない」と述べた。10月実施の長期収載品の選定療養については、「影響を判断するには時期尚早」と断ったうえで、「長期収載品が減って、それに代わって後発品が伸びるパターンはここ数年ずっと続いている。その動きを多少加速させるだろうが、大きく変わるほどではないのではないか」との見立てを示した。9月末時点での妥結率は全体で93.5%。
◎24年度上期業績は増収増益 医薬品卸事業「実質的な営業利益は前年比24%増」
24年度上期の業績は売上高が前年同期比1.0%増の2970億7900万円、営業利益が0.3%増の28億7600万円、親会社株主帰属純利益が3.1%増の24億2000万円で増収増益だった。コアビジネスである医薬品卸事業では、売上高は0.8%増の2795億4100万円、営業利益は3.2%増の27億2400万円だった。営業利益は、新型コロナワクチンの配送受託による収益が消失したものの、個々の医薬品価値や流通コストを踏まえた価格交渉などの取り組みが奏功し、「実質的な営業利益では前年比24%増となった」(村井社長)と強調した。
通期の業績予想は変更しなかった。計画に対する上期の進捗率は売上高が50.4%、営業利益が52.3%だった。親会社株主帰属純利益の進捗率は40.3%だったが、「下期に政策保有株式の売却益を多めに計上予定のため」としている。
◎物流強靭化へ投資ファンドと出資契約締結 婦人科領域特化の新設部署も本格始動
この日の決算説明会では「長期ビジョン2035」(23年5月公表)の進捗にも触れた。9月には投資ファンド「マーキュリア・サプライチェーン投資事業有限責任組合」との出資契約締結を発表した。物流関連の革新的技術やビジネスモデルを有するスタートアップ企業等を投資対象としており、資金提供のほか、連携や協業にもつながる期待がある。一條武代表取締役副社長は、「今後も物流の2024年問題やカーボンニュートラルへの対応など社会課題の解決や、大規模災害時にも医薬品安定供給を維持するための強靭な物流体制構築に取り組んでいく」と述べた。
◎ケーエスケー WHS部発足 女性MS3人体制で大阪市と近郊の産科・婦人科に営業活動
また、ケーエスケーでは、婦人科領域に特化した医薬品やフェムテック商材などを提供するウィメンズヘルスケアソリューション(WHS)部が発足し、7月から営業活動を本格始動させた。女性MS3人体制で大阪市やその近郊の産科・婦人科を得意先とする。岡本総一郎代表取締役副社長は、「子宮頸がんワクチンなど売上面でも効果が徐々に出始めている。働く女性の医療課題に焦点を当て、京阪神の都心部を中心に拡大していきたい」と手応えを示した。
◎動物用医薬品卸の子会社に独禁法違反疑い 「あらためてお詫び」
このほか、連結対象の子会社である動物用医薬品卸会社・アグロジャパンが10月に入札を巡る独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会による立ち入り検査を受けたことについて、村井社長は、「あらためて深くお詫びする。事態を厳粛かつ真摯に受け止め、検査に全面的に協力していく」と述べた。