政府・総合経済対策 診療報酬等トリプル改定見据え「人材確保に向けた賃上げ」財源確保へ 食費見直しも
公開日時 2023/11/06 04:52
政府は11月2日の臨時閣議で、事業規模37.4兆円の総合経済対策を決定した。医療関連では、2024年度の診療報酬、介護報酬、障害者福祉サービス等の同時改定(トリプル改定)を見据えつつ、「喫緊の課題に対応するため人材確保に向けて賃上げに必要な財源措置を早急に講ずる」と明記した。看護補助者等の離職を防ぎ、かつ全産業平均を下回る医療関連職種等の賃上げを継続的に支援する。一方、物価高騰対策では入院時の食費の基準が長年据え置かれたことに言及。診療報酬の見直しに向けて年末の予算編成過程で検討することも盛り込んだ。
◎岸田首相 “コストカット型経済”からの変革 攻めの投資拡大へ
岸田首相は2日夜、首相官邸で記者会見に臨み、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を発表した。主眼は、足元の物価高から国民生活や事業活動を守る対策に万全を期すというもので、その中で「賃上げ」の流れを各所に波及させる内容が盛り込まれている。岸田首相は会見で、「低物価・低賃金・低成長に象徴される“コストカット型経済”から30年ぶりの変革を果たすまたとないチャンスを迎えている」と述べ、「このチャンスを活かし、物価上昇を乗り越える構造的な賃上げと脱炭素やデジタルなど攻めの投資の拡大によって消費と投資の力強い循環につなげていく」と強調した。
◎賃上げ、離職防止で看護補助者の確保・定着支援事業推進へ 財政支援
医療・介護分野については、看護補助者の給与水準が全産業を下回り、現場における離職の実態などが明らかになるなど、地域医療の維持・継続を懸念する声が日本医師会をはじめ医療関係団体から提起され、臨時国会でも度々議論となっていた。今回、閣議決定した総合経済対策においては、「医療・介護・障害福祉分野においては、2024 年度の医療・介護・障害福祉サービス等報酬の同時改定での対応を見据えつつ、喫緊の課題に対応するため、人材確保に向けて賃上げに必要な財政措置を早急に講ずる」との文言を明記し、政府としても対応する姿勢を鮮明にした。さらに施策例において、看護補助者の確保・定着支援事業の推進も盛り込まれた。
◎入院時の食費 診療報酬見直しと合わせて24年度予算編成過程で検討
一方、物価高騰への対応については、「入院時の食費の基準が、長年据え置かれ、介護保険
とも差が生じていることを踏まえ、診療報酬の見直しに向けた検討を行うことと併せ、それまでの間、早急かつ確実に支援を行う」との方針を示した。なお、23年度中は「重点支援地方交付金」で対応するが、24年度については、「地域医療介護総合確保基金による対応を念頭に、診療報酬の見直しと合わせて24年度予算編成過程において検討」するとした。
◎医療DX推進 医療従事者の事務負担軽減へ 診療報酬改定DXにアクセル
このほか医療分野では成長力や国内投資を促進させる観点から「医療DX」の推進に関する項目が明記されている。医療・介護分野における効率化の視点から、「ICT技術の活用と、それによる生産性向上の結果を診療報酬・介護報酬制度へ反映することが重要」と指摘。24年4月実施の医師の働き方改革を睨み、「医療従事者の事務負担等を軽減するため、診療報酬の算定に関するシステムの開発を始めとした診療報酬改定DX等の推進を行う」と明記した。また、オンライン診療の普及拡大を視野に、「居宅以外にオンライン受診が可能な場所について明らかにするほか、都市部を含めオンライン診療のための医師非常駐の診療所を公民館等で開設可能とすることについて23年内に結論を得る」などの考えも明示されている。
◎SaMD 二段階承認の考え方の明確化 診療報酬制度のあり方で結論・措置へ
さらにイノベーションを牽引するスタートアップ等の支援については、プログラム医療機器(SaMD)に触れ、「市場が急速に拡大し医療の高度化に資することが期待される」として、「二段階承認の考え方の明確化や診療報酬制度のあり方について検討を行った上で、23年度中に所要の措置を講じ、普及の加速を図る」との見解も盛り込んだ。