薬価下支え充実求めるも「薬価上げだけで解決するとは考えづらい」 不採算品再算定後も赤字拡大 中医協
公開日時 2023/09/21 06:28
日本製薬団体連合会(日薬連)は9月20日の中医協薬価専門部会の意見陳述で、医療上必要性の高い品目に対して不採算品再算定など「薬価を下支えするルールの充実」を訴えた。日本ジェネリック製薬協会は赤字品目が昨年よりも今年で拡大し、3割にのぼるとのデータを提示した。今年4月の薬価改定では、不採算品再算定が臨時・特例的に全品に適用されているにも改善傾向が見られないことから、診療・支払各側から指摘が飛んだ。「単純に薬価を上げただけで解決するとは考えにくい」と支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)との指摘もあがった。
日本ジェネリック製薬協会は製造原価率(22年10月の薬価に対する原価率)が80%を超える赤字品目が23年8月時点で32.6%とのデータを提示。この内容を説明した川俣知己副会長は、「原価高騰の影響が改善されておらず、厳しい状況が続いている」と意見陳述した。
一方で日薬連の岡田会長は、「基礎的医薬品、不採算品再算定、最低薬価といった薬価を下支えするルールが設定されているが、必ずしも十分とは言えない状況」と指摘。「次期薬価制度改革では、薬価を下支えするルールの充実化をぜひともお願いしたい」と強調した。不採算品再算定については、「安定供給や品質確保のための体制等を確認した上で、不採算品再算定を希望する銘柄のシェアが一定以上であれば適用することをルールに追加する」などの要件緩和を訴えた。
◎GE薬協・川俣副会長 23年度改定の不採算品再算定の特例適用「十分な再算定ではなかった」
これに対し、「本年度の不採算品再算定の臨時特例的適用による改善はなかったのか」(診療側・長島公之委員・日本医師会常任理事)、「令和5年度改定で対応したにもかかわらずなぜ問題が解決されないのか」(支払側・松本委員)と診療・支払各側から指摘が次いだ。
日本ジェネリック製薬協会の川俣副会長は、「不採算品再算定の計算の仕方において要件を満たさない品目というのもございましたので、こういったものが十分な価格改定ができていなかった」、「十分な再算定というふうにはなっていなかったということと、それから、原材料原価の継続的な高騰と、製造経費が十分に反映できていなかったというのが実情」と述べ、理解を求めた。
支払側の松本委員は、「例えば特定の企業が対応できてないとか、元々非常に低い価格で売っていたのでカバーできてないとか、もう少しそこを突っ込んで教えていただかないと、単純に薬価を上げただけで解決するとは考えにくい」と指摘した。
◎安定確保と品質確保に向けた適正活動行う企業で医療上必要性高い品目は個別銘柄に
GE薬協の川俣副会長は、「安定供給確保と品質確保に向けた適正な活動を行う企業の品目で、医療上必要性の高い医薬品等については、個別銘柄改定の対象とすることを検討いただきたい」と訴えた。
これに対し、支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「適正な活動を行っていないという企業もあるということだと思うが、これはどのぐらいの数が適正でない活動を行っている企業の数としてあるのか」と質した。
これに対し、川俣副会長は、「適正な活動を行っていない企業が、今回不祥事を起こし、供給停止している。私ども残りの企業でこれバックアップする努力をしている」と説明。さらに、「現在供給している供給量に対して十分な余力を持つことによって、今後の自然災害ですとか、特定企業における爆発事故、火災、こういったものの供給停止に対して我々がバックアップできるような生産余力を持っているということも、今後の企業要件にとっては大事なことだと思う。そちらが対応でき、できていくところというのが、どれほどの数になるのかというのが今後の議論ということになろうかと思っている」と述べた。
◎後発品への置き換わり進まない品目に 診療側・長島委員「信頼性に問題もある」
このほか、後発品への置き換えが進まない長期収載品があることについて、GE薬協は、「薬価収載から長期間が経ち、長期収載品の薬価も低く、その薬価の差も少ないような成分では置換えが進みにくい」と説明したことに対しても、指摘が上がった。
診療側の長島委員は、「品質、有効性、安全性だけでなく、価格、情報提供、安定供給なども含めて、差が少ないのであれば、医療機関や薬局の体制加算による推進策も含めて、後発医薬品への置き換えは可能なはずであり、それができていないのは信頼性に問題もある」と指摘した。
GE薬協の川俣副会長は、「やはり我々の努力不足ということは確かにあろうかと思う。置き換えが進まない医薬品に対して私どもが先生方にご説明をするということの取り組み方が十分でないという事例もあったかと思います。こういった部分に関しては私どもとしてさらに使用促進ができるような取り組みを行ってまいりますが、まず現在は供給不足に対して十分に対応するところから進めてまいりたい」と述べるにとどめた。