【中医協薬価専門部会 9月20日 議事要旨(その1) 関係業界からの意見聴取・診療側委員との質疑】
公開日時 2023/09/21 04:52
中医協薬価専門部会は9月20日、2024年度薬価改定をめぐり関係業界からの意見聴取を行った。本誌は、診療側委員との質疑について議事要旨(その1)として公開する。
(意見陳述者)
・日本製薬団体連合会 会長 岡田 安史氏
・日本製薬工業協会 会長 上野 裕明氏
・日本ジェネリック製薬協会 副会長 川俣 知己氏
・米国研究製薬工業協会 在日執行委員会 委員長 シモーネ・トムセン氏
・欧州製薬団体連合会 会長 岩屋 孝彦氏
・再生医療イノベーションフォーラム 代表理事会長 志鷹 義嗣氏
・日本バイオテク協議会 会長 山田 英氏
・米国バイオテクノロジー イノベーション協会 代表代理 海老原 恵子氏
・日本医薬品卸売業連合会 会長 宮田 浩美氏
笠木部会長代理:それでは質疑に入ります。それでは長島委員お願いいたします。
長島委員:ありがとうございます。業界からのご意見ありがとうございました。いくつかの質問と意見を申し上げたい。資料「薬―1」の3ページ、ドラッグ・ロス品目の分析(日本における必要性)に関する質問です。ドラッグ・ロス品目の分類にて、一番上に日本で当該疾患への既存薬がない品目が52%ということは、残りの48%の品目は代替できる類似薬があるという理解でよろしいでしょうか?
続いて、資料4ページ。ドラッグ・ロス品目の分析まとめについてです。世界における日本の状況を鑑みれば、いずれの領域においても、薬価が安くなってしまう日本では売上げが見込めないという企業経営論理にあてはまってしまう可能性があります。また、資料7ページの要因分析のまとめにおける海外と日本の比較においても同様です。
そこでまず、資料7ページ下の「課題解決の方向性」について質問します。3つの点(①薬価が想定しやすく分かりやすい制度にすること、②欧米と比べて遜色ない薬価が期待できること、③上市後の薬価が予見でき、薬価引下げのリスクが低いこと)を複合的に実現する必要がある、とのご意見ですが、この複合的にという意味は、予見性をいくら高くしても、それだけでは駄目で、欧米と比べて遜色ない薬価がついて、その後薬価引き下げがないという薬価制度にしなければいけないという要望でしょうか?
その場合、予見性の意味は一体なんでしょうか? また、欧米との比較ということで申しますと、アメリカでは、製薬企業が自由に価格を設定できるものの、医薬品のアクセスが、患者さんの経済力によって左右されています。一方、日本では国民皆保険制度のもと、国民負担の軽減と医療の質の向上の観点から、きめ細かい薬価の評価方法を定めております。このように、そもそもの前提が異なっています。これを比較する場合には、十分に留意する必要があると考えます。
次に質問です。日本には日本ならではの良さがあり、例えば薬事承認から一定期間内で迅速に保険適用し、保険適用後は広く国内で使用可能になることなどは、他の国にはない、日本市場の大きな魅力ではないかと考えますが、そうしたメリットに加え、なおかつ、欧米のような高い薬価を設定しなければ、ドラッグ・ラグ/ロスは解消しないとお考えなのでしょうか?
また、領域ではなく、(日本の製薬企業が)バイオ医薬品に対応できない等の薬の性質の問題もあるのではないでしょうか?
さらに、今回の資料では触れられておりませんが、近年の毎年薬価改定がドラッグ・ラグ/ロスにどのような影響を与えているのか、ご見解がありましたら教えてください。
資料5ページ。ドラッグ・ラグ/ロスの要因について質問します。日本は薬価算定ルールが文書化されておりますし、個別医薬品の薬価算定の根拠が、事後に公表されると理解しておりますが、将来の薬価の想定が難しいというのは、日本にだけ当てはまる問題なのでしょうか?
次に、資料10ページの「有用性加算などの評価を拡充」について質問します。資料10ページでは、統計的な有効性を示すことが難しい薬事承認に関わらないデータ等も評価することを提案いただいておりますが、統計的な有効性が示されておらず、また、様々な価値観の評価方法を体系的に整理した考えもない中で、どのように評価すればよいのか、イメージができません。何かイメージがありましたら教えてください。
資料15ページの「後発医薬品・安定確保医薬品等の製造原価」に関する質問です。本年8月の状況ということですが、本年度の不採算品再算定の臨時特例的適用による改善はなかったのでしょうか?教えてください。
資料19ページの「後発品への置き換えが進まない長期収載品」についての意見です。本文4行目に「長期収載品の薬価も低く、その薬価の差も少ないような成分では、置き換えが進みにくいと考えています」とあります。しかし、品質、有効性、安全性だけでなく、価格、情報提供、安定供給なども含めて、差が少ないのであれば、医療機関や薬局の体制加算による推進策も含めて、後発医薬品への置き換えは可能なはずであり、それができていないのは信頼性に問題もあると考えます。
資料33ページの「具体的な価格調整方法(案)」について質問です。海外で想定される価値評価を踏まえた価格調整とありますが、海外4か国では、どれぐらいの精度で価格の予測ができるのでしょうか?また、前回、事務局にもお願いしましたが、海外4か国における新薬の薬事承認から保険適用までの期間について、情報の提示をいただければと思います。
最後に、全体に対して質問いたします。通常にも増して、今回のご意見は、新薬、後発品ともに「プラス評価」を求める要望事項ばかりのように見えます。業界の皆様は、その財源についてはどのようにお考えなのでしょうか? ご意見をいただければと思います。私からは以上です。
笠木部会長代理:長島委員ありがとうございました。それでは関係業界の方々から適宜お答えいただければと思います。
岡田日薬連会長:新薬系のところは上野製薬協会長からお願いします。
上野製薬協会長:はい。それでは資料14ページまで、長島委員からご質問いただきました点について、私ならびにPhRMA、EFPIAの方々からもご意見をいただきたいと思います。
最初のご質問で資料3ページ「ドラッグ・ロス品目の分析(日本における必要性)」で今回分析した75品目のうち39品目が当該疾患で既存薬のない品目ということでございます。残りの36品目については、これは当該疾患で既存薬はございます。ただ、作用メカニズムが違うということもございますので、必ずしも全てが代替できるということではないと認識しております。
続きまして資料7ページ目のご質問ですが、我々が提案する3つの要望(①薬価が想定しやすく分かりやすい制度にすること、②欧米と比べて遜色ない薬価が期待できること、③上市後の薬価が予見でき、薬価引下げのリスクが低いこと)についてです。ドラッグ・ラグ/ロスの解決に向けて薬価の観点からいくと、薬価が想定しやすくわかりやすい制度、欧米と比べて遜色ない薬価を維持できること、そして上市後の予見性の3点を複合的にと申し述べており、これが全てかというご質問だったかと思います。基本的にはこれらが全て満たされることが重要であるというふうに考えております。
この点については海外から日本に持ってくることについての意見もあろうかと思いますので、EFPIAの岩屋会長お願いします。
岩屋EFPIA会長:いただいた意見についてできる限りお答えしたいと思います。いくつか質問いただいた中で、日本は薬事承認をいただいてから薬価がいただけるまでの期間が非常に短く、そこが非常に明確であることが“美点”ではないかというご指摘がありました。
まさにその通りだと思います。日本はマーケットアクセスが、薬事から薬価という部分において、非常に明確に決まって運用していただいております。これは本当に中医協の先生方のおかげであると思いますが、そこが“美点”であるという点についてはおっしゃる通りでございます。
ただ一方で、それだけで実際に海外から日本も含めてベンチャー企業が日本に投資をするかと言いますと、ルールを説明をさせていただきましたけれども、それは実際の投資に対するリターンを考えたときに、我々の医薬品であれば売上のほぼ全てが皆保険制度の中での売上ですので、薬価がどうであるかというのは非常に重大な影響がございます。欧米等と遜色のない薬価をつけていただくということが必要であるということについては変わりございません。
それから、恐らく前回も議論させていただいたと思うのですけど、「予見可能性」のお話がございました。予見可能性については薬価の水準がどの程度であるかはもちろん大切である一方、企業が行動を決めていくに当たり、特に医薬品の場合は非常に長期投資の製品でありますので、長期間に薬価がどのように推移をするのかということについて見通せることというのがやはり必要であるというふうに認識をしております。これが特許期間であっても、薬価が変動する、ないしは導入のときの薬価がどの程度になるかというのが、必ずしも事前に明確にわからない状況であると、やはり予見可能性が低いということになって、投資に対して躊躇する企業も出てくるというふうに認識をしております。
いま申し上げた中でもう一つご質問いただきました。薬価基準もはっきり書いてあるし、薬価がどうしてそうなったかということについてもちゃんと議論の結果が報告される。それでも薬価の予見性が低いのかと、質問されました。事実を端的に申し上げますと、いろいろな要件について実際に薬を申請して、承認をいただいて、薬価を申請した際に、結果として頂いた薬価と我々が想定していた薬価の間に乖離があるということは非常によくございます。これは要件がないというか、ルールがないというよりは、やはり要件を実際に適用するにあたっての解釈の余地というのが認識として、申請者側と実際に薬価を算定される側の間に乖離があるのかなというふうに考えております。
それから、新薬を導入する際の薬価の有用性加算などの評価に関するご質問があったと思います。統計学的に直接比較できないような部分について、ある程度加算を適用できるようにしていただけないだろうかという我々の意見に対してのご質問だというふうに思います。現状の有用性加算の体系はここにも書きました通り、物(医薬品)によっては直接実薬を比較して臨床試験することが困難な領域での新薬、例えば全く新しいモダリティの新薬について十分評価していただけていないのではないかという点と、それから審査につきましては審査報告書にいわゆるそのサマリーというかですね、いわゆるそのプライマリーエンドポイントに対する審査当局としての見解というのが記載されますが、これは治験に対する評価でございまして、この評価の中で必ずしもその薬の革新性と画期性に対する評価というのは、されておりません。実際にそのデータが存在しないものについて認めてほしいというふうに申し上げているわけではなくて、プライマリーエンドポイント以外にも存在するデータから導き出される有用性というものがあるんですけれども、それが必ずしも有用性加算で評価をされてないという、そういう事例があるというふうに申し上げております。
したがいまして、そういった場合において科学的な範囲においてデータを使って頂いて有用性を認めていただけないかということを申し上げている、というのがこの点での意見でございます。以上でございます。
トムセンPhRMA在日執行委員会委員長:先ほど発言したスピーカーの方々と同じ意見です。日本におきましては薬事承認後に直ちに薬価で償還できる。非常に迅速にできるということは日本の強みだと思います。しかしアメリカやヨーロッパでも同様な迅速さがあります。
私自身はドイツ出身です。日本の制度はドイツと似ていると感じています。つまり公的な支払いの仕組みがあるからです。承認後に実際の薬価がどうなるか、そしてどのような形で薬価が維持されているか、ということが重要です。先ほどの2人のスピーカーがおっしゃった通りです。
薬価を諸外国の平均で見ると、一般的に日本は低いということになります。研究開発を促進してドラッグ・ラグ/ロスを解決するためには有用性加算を前向きに検討していただくことが大きな駆動力となってくると思います。そうしますと日本市場の競争力の強化につながり日本市場の魅力がさらに高まると思います。
日本で研究開発を中断した企業があるということについて資料45ページ「薬価が開発判断に影響を与えた事例」をご覧ください。これを見ると、収載時の薬価算定、新薬創出等加算の部分、それから市場拡大再算定などの価格の見直しなどにより日本の優先順位をどう置くかということに関わっていることが分かります。PhRMA加盟社の中で日本への投資を躊躇するといったような、その背景が説明されています。現在のシステムの予見不可能性といったことに危機感を抱いているわけです。
上野製薬協会長:追加で先ほどのご質問十分に答えられなかった点を簡単にご説明します。毎年改定以後、薬価がドラッグ・ラグ/ロスにどう影響したかという点ですけども、今回調査した176品目は2016年から2020年に起こった品目で、一部影響がありましたけど、基本的にはこれから益々その影響が出てくるんではないかというふうに考えています。
もう一点、資料10ページ目の「有用性加算などの評価を拡充」の中で、臨床上のエビデンスが統計学的に有意なものというイメージですが、例えば直接薬事承認に関わらない副次的評価項目であっても、重要な成績が示されているデータ、例えば、実薬に対する優越性、QOLの改善等、薬事審査に参考資料として提出された資料・データ、適切な統計学的処理がなされた間接比較データ、査読的な学術論文に使われたデータ、などが使えるのではないかというふうに考えております。以上でございます。
岡田日薬連会長:後発品について長島委員から質問いただいております。川俣日本ジェネリック製薬協会(JGA)副会長お願いします。
川俣JGA副会長:資料15ページ目「後発医薬品・安定確保医薬品等の製造原価」でございます。令和5年薬価改定において特例的に引き上げ対応を頂いた訳ですが、物価高騰というのは、現在もさらに伸長しております。また、このときの不採算品再算定の計算の仕方において要件を満たさない品目というのもございましたので、こういったものが十分な価格改定ができていなかったということで、これだけの品目が残っているというようなことだと思います。
私どもとしては引き続き、これらのデータを注目して、まとまり次第ご報告を差し上げたいというふうに思っております。
資料19ページ「後発品への置換えが進まない長期収載品について」でございますが、やはり我々の努力不足ということは確かにあろうかと思います。置き換えが進まない医薬品に対して私どもが先生方にご説明をするということの取り組み方が十分でないという事例もあったかと思います。こういった部分に関しては私どもとしてさらに使用促進ができるような取り組みを行ってまいりますが、まず現在は供給不足に対して十分に対応するところから進めてまいりたいというふうに思っております。
岡田日薬連会長:最後に長島委員から全体を通してということでコメントをいただきました。岡田からコメントさせていただきたいと思います。
まず大前提としてこれまで社会保障関係費の伸びの抑制として、国民の命と健康を守る医薬品の薬価から多く(財源)を捻出してきた実態があるというふうに認識をしていて、それが今日の問題につながっているという認識を基本的に持っております。本日の陳述におきまして、上野製薬協会長からドラッグ・ラグ/ロスの要因分析を紹介させていただきました。また、イノベーションに更に切り込むことは、その状況を一層深刻化させるというお話をさせていただきました。また、基礎的医薬品の価格低下というのは、安定供給不安というのをさらに悪化させる可能性があるというふうに思っております。
国民皆保険を持続性のあるものにしていくという趣旨については十分、我々も認識をしておりますけれども、このままでは国民皆保険に必要な医薬品について非常に大きな課題を抱えたままになるというふうに思っております。
一方、特に財源的に申し上げるべきことは、新薬、あるいは基礎的医薬品の全てを薬価以上に(引き上げを)願いしたいというふうに申し上げているわけではないと思っております。新薬は革新性や有用性の変化に応じて価格を見直していくべきというふうに考えております。また、基礎的医薬品も、医療上なくては困るものを峻別していく必要があるというふうに思っております。まずは現行の仕組みの中でその安定確保医薬品という(ABCの)カテゴリーがありますけれども、この精査をしっかりやっていただくことがメリハリにつながっていくというふうに思っております。
例えば古くから収載されていて、診療ガイドラインにはもう記載がなく、医療上の必要性が低下しているものについては薬価収載し続けるかどうかも含めて、その“出口”を考える時期にきているというふうに考えております。そういった観点も含めてぜひ我々としては、そのメリハリというものについて、特にサイエンティフィックな観点を含めて、議論いただきたいというふうに思います。以上でございます。
笠木部会長代理:どうもありがとうございました。海外の制度について事務局の方に問いかがあったと思うのですけれども、もし事務局から補足いただけるようでしたら、お願いいたします。
薬剤管理官:海外の状況も含めまして以前、ご質問いただいた点に関して準備できる範囲で調査中でございます。新薬の議論の際にできるものを提示していきたいと考えております。
笠木部会長代理:どうもありがとうございます。長島委員、いかがでしょうか?
長島委員:はい。営利企業の経営論理として、欧米と比べて遜色ない薬価とか、薬価引き下げのリスクが少ないこと求めるのは企業としてはそうでしょう。ただし、欧米と日本では制度がそもそも違います。特に日本の国民皆保険をしっかりと継続させるというところでは、そもそも欧米とは仕組みが違うので、欧米の論理をそのまま持ち込むというのは考えていただく必要があるかと思います。以上です。
笠木部会長代理:ありがとうございます。もし追加で発言等ありましたらお願いいたします。
岩屋EFIPA会長:はい、いまのお話を受け止めますが、ただ実際に薬価導入するときにも欧米の価格というのは参考にされているわけでありまして、世界のマーケットの中で流通している製品を日本でも使用するという中で、欧米の制度とまったく同じものということではないにしても、比較すべきところは比較するということはもう既にされているというふうに思っておりますし、そういう観点で言えば薬価の水準についてもきちんと欧米の制度を参照していただくということで、論理的には破綻していないかなというふうに思っています。
笠木部会長代理:ありがとうございました。森委員よろしくお願いいたします。
森委員:ありがとうございます。各団体におかれましてご説明いただきありがとうございました。お願いしたドラッグ・ロスの品目分析、革新的新薬の迅速導入や有用性加算などへの具体的なご意見、原価の開示が難しい事情などについて整理してお示しいただきありがとうございました。今後、具体的な議論の際に活用すべき資料と考えます。
資料「薬-1」の日薬連、PhRMA、EFPIAへの質問となります。資料9ページ目の「革新的新薬を迅速に導入するための薬価算定」のドラッグ・ラグ/ロスの問題点の二つ目で、「先駆加算は適用要件が厳しくインセンティブとして十分に機能していない」という意見がございました。先ほど画期性であったり、重篤性、それから極めて高い有用性が要件となっているということですけども、その中で具体的にネックとなっている適用要件は何か教えていただけますでしょうか?
また、資料11ページの新薬創出等加算における企業指標、企業区分の撤廃についての意見ですが、他の団体からもありましたけれども、制度の趣旨や薬価制度の抜本改革における見直しの経緯も踏まえた上で、慎重な議論が必要だというふうに考えております。
今回の新薬創出等加算に関する提案は7月の意見陳述の内容と異なっていますが、次期薬価制度改革では、今回の要望をもとに議論を進めることを希望するという理解でよろしいでしょうか?
その上で、仮にご要望のように見直す場合、企業規模によって高い区分になりにくいことが問題なのか、それ以外に問題があるのかなど、特にどこを見直すと日本でのドラッグ・ラグ/ロスの解消が進むと考えるか教えていただければと思います。
また、資料14ページ目の原価の開示について、外国の委託企業のところ以外は、基本的に開示できるという理解でよろしいでしょうか?
次に、JGAについてです。まず意見になりますが、長く続く医薬品供給問題で医療現場はその手配や患者さんへのお詫びと説明などで疲弊しきっています。先日8月の供給状況が交付をされましたが、改善の兆しが見えません。この問題は、行政側では中医協を含め、様々な場で後発医薬品に係る議論が進められていますが、JGAがしっかりと音頭をとって全ての関係者が連携し、おおよそ何年以内に問題解決するのかを示しいただきたいと考えています。
その上で質問ですが、このビジョンが見えないと、現場の不安は増すばかりです。このあたりどのように考えているのか教えていただければと思います。また、資料18ページ目で、企業要件に関する提案が示されていますが、流通を含めた在庫状況の見える化、供給量やバックアップ体制の確保、これまで供給問題に取り組んできた実績のある企業を評価するような要件も必要と思いますが、いかがでしょう。
次に資料「薬―3」の日本バイオテク協議会からの意見についてです。重要な取り組みを行っている創薬ベンチャーが、日本の上市に不利にならないよう、企業区分やウルトラオーファン、医師主導治験などに関する見直しの重要性に関しては理解できました。
最後に資料「薬-4」の卸連についてです。医薬品卸は、たとえ最低薬価の医薬品1箱でも毛細血管型流通網を活用し、必要な医療現場に品質を確保し、迅速正確に配送を行っていることが、日本の医薬品卸の特徴だと思います。医薬品卸なしに医薬品の安定供給や医療提供体制の確保はできません。
質問ですが、薬価20円未満の医薬品の薬価引き上げを要望されていますが、薬価を引き上げることで、現状がどのように解決していくと想定されていますでしょうか、お考えを教えていただけいただければと思います。
また、「調整幅」については、それだけを議論することが適当ではないことは理解できますが、薬価専門部会の議論で、流通に関する検討課題は流改懇で議論している旨の説明がありました。卸連としては流通上の課題を含め、これらの議論をどうすべきか、今後の中医協での議論に資するデータの収集のあり方も含め、お考えを教えていただければと思います。これらのデータに基づく議論は卸連の協力がないと進まないと考えますのでお聞きした次第です。私からは以上です。
岡田日薬連会長:まず上野製薬協会長から。
上野製薬協会長:ご質問どうもありがとうございました。それでは新薬パートについてお答えしますが、その前に先駆加算についてEFPIAの岩屋会長からお答えします。
岩屋EFPIA会長:先駆加算につきましてご説明させていただきます。先駆加算は先駆的医薬品に指定されたものを対象としておりますが、指定には治療薬の画期性、対象疾患の重篤性、対象疾患にかかる極めて高い有効性、世界に先駆けて日本で早期開発申請する意思。この4つを満たす必要があるというふうに言われております。
これら全てを満たすというのは非常に難しい。特に対象疾患の重篤性という点につきましては、海外の類似の仕組みとして米国のブレークスルー制度や欧州のプライム制度にもない要件でございまして、他国に比べてひときわハードルが高いと考えております。
実際に先駆加算が適用された品目は2016年から現時点までの7年間でたった13品目しかございません。直近で申し上げるともっと少ないと認意識しております。この厳しい要件に対し、頂ける加算がそれほど大きくないというところが、企業の意欲を削ぐ一因になっていると考えております。以上でございます。
上野製薬協会長:続きまして2番目、3番目にいただいた新薬創出等加算についての提案に関するご質問に対する回答でございます。先ほどのご質問では今回の提案内容が7月の陳述内容と異なっているのではないかというご質問もあったかと思います。私どもとしては基本的な考え方として、最終的に目指すのは特許期間中の薬価維持ということには変わりません。ただ、やはり段階的にどう実現していくかっていうことの考えの中で、喫緊の課題であるドラッグ・ラグ/ロスを解消するために、まずは新薬創出等加算における品目要件の追加であったり、あるいは企業指標等の撤廃というものを提案させていただいているものでございます。
それで今回提案させていただいている企業指標、企業区分の撤廃の内容でございますけども、基本的に新薬創出等加算は、真に有効な医薬品を適切に見極めてイノベーションを評価するものというふうに私ども理解しており、品目要件では真に画期性や有用性の高い薬品に限定されております。
今後、新しいモダリティに代わり創薬スタイルが変わる中で、新しいイノベーションを評価するには、過去の実績よりも生み出された製品そのものを評価すべきであるというのが基本的な考えで、こういった企業要件そのものが、現在のドラッグ・ラグ/ロスの一因になっているということが指摘されていることから、今回、企業指標、企業区分の撤廃をご検討いただきたいとご提案している状況でございます。
4点目です。製薬企業のサプライチェーンにおける状況を説明させていただきます。ご覧のように自社だけで製造している例は極めて少なく、様々な委託先を使っております。その際に、私どもは海外の委託先や国内の委託先を使っています。委託先はそれぞれどういう価格で出しているかについて高い秘匿性を持っており、ほとんど開示していただくことはございません。したがいまして、お答えとしては海外にとどまらず国内においても状況は変わらないということをお話します。
岡田日薬連会長:次の質問については川俣JGA副会長にお願いします。
川俣JGA副会長:後発医薬品の供給問題に対して、これほど長く皆様にご迷惑をおかけしていることは本当に残念に思っております。私どもジェネリック製薬協会として協会を上げて生産調整したり、特定の企業がこの製品を作り、他の企業がこの製品を作り、というような形で協会としての取り組みができれば、もう少し状況は変わっていたと思うのですが、やはり公正取引委員会関係の問題がございまして、各社が情報のない中で、必死に取り組んでいるということに対して、協会としてどのような支援ができるかというのを悩んでいるところでございます。
それぞれの企業においては品目数の削減ですとか、効率化ですとか、生産供給量の増大ということに取り組んでおりますが、状況はどんどん変化しておりまして、元々の不祥事において供給が停止したものの、バックアップやカバーだけではなく、そうした企業のものがどんどん使われなくなってしまっているという傾向もございますので、我々既存企業がどの量を製造していけば、安定供給の問題が解消できるのかが把握できていないというところが最大の問題だと思っております。
こちらについても産業構造のあり方検討会を通して、より効率よく取り組んでまいりたいと思いますし、この取り組みについても見える化を努めていきたいというふうに考えております。
二つ目の企業要件の件ですが、この企業要件というのは本来、医薬品企業があるべき要件でございまして、このあるべき要件を満たした企業をそもそも誰が評価するのかということに関しては、私は医療関係者の方であるというふうに思っております。医療関係者の方々がその企業要件を満たす企業の製品を優先的に使用するということになれば、それでもう十分だと思っておりますが、こういう企業要件を満たした企業に対してどのようなインセンティブを与えていくのかという部分についても、今後の検討会においての進捗を見守ってまいりたいというふうに考えております。
岡田日薬連会長:日本バイオテク協議会の山田会長お願いします。
山田日本バイオテク協議会会長:山田でございます。先ほどのご指摘いただきましたベンチャー支援策の件につきまして、ご理解いただいたという言葉を頂戴しました。今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。以上でございます。
宮田卸連会長:森委員から2問ご質問があったかと思います。1つ目の20円未満の薬剤についての引き上げということで、今後どうなるのかということでございますが、先ほどお示ししたようにこの中間年改定が始まって以来、6年連続で薬価改定があり、薬価の下落スピードが加速している状況で、見ていただいたように品目数の5割近く、49%が20円未満まで下がってきている。
いま、3年以上に渡って出荷調整ということが起こっている。こういったことを考え合わせると、やはりこの薬価20円未満の薬剤の中で、本当に必要な薬が患者さんに届かなくなってしまう、こんなリスクが大きくなっているのではないかということを前提に、この20円未満の薬剤について薬価の引き上げを検討していただきたいというご提言をさせていただきました。薬価を上げることによって製造メーカーも生産性を改善し、限定出荷の製品についても早期に終息が期待できるものもあるのではないかと考えている。
私どもとしては20円未満の薬剤の中に必要な薬が出荷限定になっているっていうことを、どうすれば改善できるかという点が非常にリスクの増大としてあるのだということを皆さまにご承知願いたいということでございます。
それから「調整幅」のお話がございました。先ほど委員からお話があったように、いま時点では薬剤の流通安定のための調整幅でありますので、医薬品卸のみでなく、川上の製薬企業、あるいは川下の医療機関、保険薬局など流通担当者全員が重要な役割を果たしているということは多分認識されていると思います。ですので、医薬品の継続的な安定供給によって、調整幅を欠くことはなく、この重要性はさらに増していることをぜひご理解していただいて、データについては川中の卸だけのデータを抜いて調整幅はどうしましょうというような議論ではなく、いま申し上げたように、川上、川中、川下、全体的なエビデンスを持って調整幅の議論をしていただければなというのが、いま考えているところでございます。以上でございます。
森委員:ありがとうございました。まず後発品のところですけども、いくら後発品メーカーが頑張って増産しても、ミスマッチって言うのですかね。必要な品目を増産しなければ何もない。ここに関してはJGAだけではどうにもならない、公取委の関係もあるのであれば国に入っていただいて、しっかりと必要な医薬品が効率的に生産できるようにするというのが重要だというふうに思っています。
もう一つはJGAが早期解決に向けて具体的にどういう取り組みをしているかが見えない。そこの見える化と進捗状況の見える化に関してはぜひお願いをしたいというふうに思っております。
卸連の方ですけど20円未満の医薬品の薬価の引き上げっていうのも、私も流通コストを考えれば理解はさせていただきます。ただ、この問題に関しては総価交渉など流通上の課題もあると思います。医薬品卸の重要な機能の一つとして価格形成機能があります。総価交渉などの流通の課題もあり、卸としてしっかりと取り組んでいただきたいと思っています。以上です。
議事要旨(その2)に続く