厚労省 7製品で効能追加など承認 ジャカビに造血幹細胞移植後のGVHDが追加
公開日時 2023/08/24 04:49
厚生労働省は8月23日、7製品の効能追加などを承認した。ノバルティス ファーマのジャカビ錠は造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)の効能が追加され、造血幹細胞移植後のGVHDにおいて承認された初のJAK阻害薬となった。協和キリンのルミセフ皮下注は既存治療で効果不十分な掌蹠膿疱症(PPP)の追加効能を取得し、PPPにおいて承認された初のIL-17経路阻害薬となった。
効能追加などが承認された製品は次の通り(カッコ内は一般名、製造販売元。薬効分類順に記載)
▽ルミセフ皮下注210mgシリンジ(ブロダルマブ(遺伝子組換え)、協和キリン):「既存治療で効果不十分な掌蹠膿疱症」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余期間(2024年7月3日)。薬効分類399。
ヒト型抗ヒトIL-17受容体Aモノクローナル抗体。掌蹠膿疱症は、掌蹠(手のひらや足の裏)に無菌性の水疱や膿疱(膿をもった水ぶくれ)が繰り返し生じる難治性の皮膚疾患。ルミセフは既存治療で効果十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎――の6つ適応を持ち、掌蹠膿疱症は7つ目となる。
▽エンハーツ点滴静注用100mg(トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)、第一三共):「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
抗HER2抗体薬物複合体(ADC)。国内の肺がんの総患者数32万8000人のうち、非小細胞肺がん(NSCLC)患者の割合は約85%と報告されていること、及びHER2遺伝子変異を有する患者はNSCLC患者の約3%と報告されていることから、HER2遺伝子変異陽性のNSCLC患者数は約8400人(32万8000人×0.85×0.03)と推測される。
▽リムパーザ錠100mg、同錠150mg(オラパリブ、アストラゼネカ):「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2026年1月18日まで)。薬効分類429。
PARP阻害薬。既承認の「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん」について今回、併用時の用量が追加された。具体的には、「通常、成人にはオラパリブとして1回300mgを1日2回、経口投与する。他の薬剤と併用する場合は、アビラテロン酢酸エステル及びプレドニゾロンと併用すること。なお、患者の状態により適宜減量する」。
▽ジャカビ錠5mg、同10mg(ルキソリチニブリン酸塩、ノバルティスファーマ):「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
JAK阻害薬として初めて造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)の適応を持つ薬剤となった。
造血幹細胞移植におけるGVHDは、同種移植後に特有の合併症で、ドナー由来のリンパ球が患者の正常臓器を異物とみなして攻撃することによって起こる。移植関連死の主要な一因として知られる。GVHDの一次治療にはステロイドが使われている。
▽リツキサン点滴静注100mg、同500mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「既存治療で効果不十分なループス腎炎」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。事前評価済み公知申請。再審査期間なし。薬効分類429。
日本リウマチ学会が厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に同剤のループス腎炎に対する開発要望を提出。同会議からの要請をうけて日本リウマチ学会は、日本腎臓学会、日本小児リウマチ学会、日本小児腎臓病学会との連携のもと、ループス腎炎に対するリツキシマブの使用方法、有効性、安全性を確認する目的で国内使用実態調査を実施し、さらにこれら4学会合同ステートメントを作成のうえ、公知申請による早期承認を訴えた。
そして23年2月15日開催の検討会議で公知申請が妥当と判断され、同年3月3日の薬食審・医薬品第一部会で公知申請に係わる事前評価が完了していた。
▽FDGスキャン注(フルデオキシグルコース(18 F)、日本メジフィジックス):「〇悪性腫瘍の診断〈▽膵がん(他の検査、画像診断により病期診断、転移・再発の診断が確定できない場合)の診断、▽胸膜中皮腫、食道がん、胃がん、消化管間質腫瘍、肝がん、胆道がん、膵がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、子宮がん、卵巣がん、骨軟部腫瘍、皮膚がん(他の検査、画像診断により病期診断、転移・再発の診断が確定できない場合)の診断、▽胸腺腫瘍、腎がん、精巣腫瘍、甲状腺がん(他の検査、画像診断により転移・再発の診断が確定できない場合)の診断、▽多発性骨髄腫が疑われる又は多発性骨髄腫患者における骨病変又は髄外病変の可視化(他の検査、画像診断により骨病変又は髄外病変の存在が疑われる場合)〉、〇心サルコイドーシスが疑われる又は心サルコイドーシス患者における炎症部位の可視化」を効能・効果とする新効能医薬品。公知申請。薬効分類430。
▽ソリリス点滴静注300mg(エクリズマブ(遺伝子組換え)、アレクシオンファーマ):「全身型重症筋無力症(免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は6年1日。薬効分類639。
抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤。今回追加された全身型重症筋無力症(gMG)に対する小児の用法・用量は、既承認の「非典型溶血性尿毒症症候群における血栓性微小血管障害の抑制」と同様の体重当たりの用法・用量で投与する。
重症筋無力症(MG)は国の指定難病で、神経筋接合部のシナプス後膜上にあるアセチルコリン受容体(AChR)等に対する自己抗体により神経から筋へのシグナル伝達が障害されることで筋力低下が生じると考えられている。筋力低下が全身に及ぶ全身型MG(gMG)は、運動、発語、嚥下、呼吸障害等が認められる。
抗AChR抗体を介したMGの発症には終末補体活性化の関与が示唆されており、ソリリスはC5に結合してその開裂を阻害し、終末補体活性化を抑制することで、抗AChR抗体陽性のgMGに対して効力を発揮することが期待されている。