エーザイのアルツハイマー病治療薬・レカネマブが承認へ 厚労省・薬食審第一部会が了承
公開日時 2023/08/21 23:15
厚生労働省の薬食審医薬品第一部会は8月21日、エーザイのアルツハイマー病治療薬・レケンビ(一般名:レカネマブ)の承認を了承した。同省によると、「必要な手続き完了後」に正式承認される見通し。効能・効果は、「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」。あくまで進行を抑制するもので、アルツハイマー病を治癒するものではない。患者条件や施設要件などが明記される「最適使用推進ガイドライン」の対象となっており、中医協での議論も踏まえて決定される見通し。
◎投与にはPET診断などで病理確認の必要性も
承認が了承されたのは、「レケンビ点滴静注200 mg、同点滴静注500 mg」。用法・用量は、「通常、レカネマブ(遺伝子組換え)として10mg/kgを、2 週間に1 回、約1時間かけて点滴静注する」とされた。承認条件としては、RMP、市販直後調査、全例調査が求められた。
同剤は、アミロイドβ(Aβ)の凝集体であるAβPF に選択的に結合し、ミクログリアによる食作用を介して除去することで、疾患の進行抑制が期待される。同様の作用機序の薬剤は承認されておらず、新規作用機序の薬剤となる。対象疾患である、「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」は、アルツハイマー病の病理を有し、かつ軽度の認知機能障害が生じているものの、日常生活に大きな影響を及ぼすまでには至っていない認知症発症前の段階とされており、疾患が進行した患者は対象とはならない。投与に際しては、PET診断や脳脊髄液で病理を確認することが必要になる。
◎副作用のARIA管理求める 遺伝子多型の影響や医師のトレーニングの必要性指摘する声も
同剤の有効性・安全性は、大規模グローバル臨床第3相検証試験「Clarity AD」 試験の結果に基づく。主要評価項目に据えた全般臨床症状の評価指標である CDR-SBにおいて、18か月時点での臨床症状の悪化をプラセボと比較したところ、27%抑制している(P=0.00005)。一方で、副作用として「アミロイド関連画像異常(ARIA)」が報告されており、米FDAの承認に際しては、枠組み警告(Boxed Warning)として明記されている。
厚労省によると、この日の部会でも、ARIAをめぐるマネジメントの必要性を指摘する声が出た。ARIAの発現率がアポリポタンパク質 Eε4(ApoEε4)ホモ接合体保有者で高いことが報告されていることから、遺伝子多型の影響を調査する声があがったほか、ARIAの早期発見に向けて医師へのトレーニングの必要性も指摘された。なお、同省によると国内のPET-CTは400施設、500台。また、臨床試験の期間が18か月であることから、それ以降の長期の有効性・安全性を検証する必要性を指摘する声もあったという。同省は、最適使用推進ガイドラインの策定などを通じ、適正使用を推進する考え。
同剤はエーザイとバイオジェンが共同開発。エーザイが今年1月製造販売承認申請を行っていた。米国では1月に迅速承認され、7月に「アルツハイマー病の治療であり、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の患者において開始すること」を適応症として正式承認されている。
◎エーザイとバイオジェンが共同ステートメント「我が国のアルツハイマー病治療の大きな前進」
エーザイとバイオジェンは同日、医薬品第一部会での承認了承を受け、「我が国のアルツハイマー病治療における大きな前進であると受け止めている」とする共同ステートメントを発表した。共同ステートメントでは、「承認を待ち、アルツハイマー病の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを世界で初めて示したレカネマブを、早期アルツハイマー病に対する新たな治療手段として当事者様に適確にお届けするよう全力を尽くす」としている。