アルツハイマー病治療薬・レケンビなど6製品を審議へ 8月21日の薬食審・第一部会で
公開日時 2023/08/08 04:51
厚生労働省は8月21日に薬食審・医薬品第一部会を開き、エーザイのアルツハイマー病治療薬・レケンビ点滴静注(一般名:レカネマブ(遺伝子組換え))など6製品を審議する。レケンビは承認されれば初のアルツハイマー病に対する疾患修飾薬となる。米国では7月6日に正式承認された。
この日の部会の報告品目は6製品。この中の▽日本メジフィジックスのビザミル静注(フルテメタモル(18F))、▽PDRファーマのアミヴィッド静注(フロルペタピル(18F))――は、いずれもアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化を対象疾患とする効能追加で、レケンビの診断補助を念頭においた効能追加とみられる。
審議品目、報告品目とも承認が了承されれば、9月に正式承認されるとみられる。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽フォゼベル錠5mg、同10mg、同20mg、同30mg(テナパノル塩酸塩、協和キリン):「透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
NHE3阻害薬。腸管で局所的にナトリウムイオン/プロトン交換輸送体3(NHE3)を阻害し、リン吸収の主要経路である傍細胞経路(細胞間隙経路)からのリン吸収を抑制するファーストインクラス薬。
高リン血症は、血液中のリン濃度が異常に上昇する重篤な疾患。腎臓はリン濃度を調節する臓器だが、腎臓の機能が著しく低下すると、リンが十分に体外に排出されなくなる。その結果、高リン血症は、透析を受けている慢性腎臓病(CKD)患者の罹患率が高い疾患となっている。
▽コルスバ静注透析用シリンジ17.5μg、同25.0μg、同35.0μg(ジフェリケファリン酢酸塩、丸石製薬):「血液透析患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
κオピオイド受容体作動薬。血液透析患者におけるそう痒症の改善を適応症とした世界初の静脈注射用製剤。血液透析患者の中等度から重度のそう痒症治療薬として、米国で2021年8月に、欧州で22年4月に承認された。丸石製薬は13年4月に米国カラセラピューティクス社から導入し、17年3月からキッセイ薬品と国内で共同開発した。
▽ジルビスク皮下注16.6mgシリンジ、同23.0mgシリンジ、同32.4mgシリンジ(ジルコプランナトリウム、ユーシービージャパン):「全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
補体第5成分(C5)阻害薬。15個のアミノ酸から構成される大環状ペプチドで、補体C5の不適切な活性化が関与する疾患の治療を意図した治療薬。1日1回自己投与を想定した皮下注製剤で、ユーシービージャパンは「初の在宅自己投与製剤としての使用を目指す」としている。
▽リスティーゴ皮下注280mg(ロザノリキシズマブ(遺伝子組換え)、ユーシービージャパン):「全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
皮下投与のヒト化モノクローナル抗体。ヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に高い親和性で特異的に結合し、FcRnと免疫グロブリンG(IgG)の相互作用を阻害することにより、抗体の異化を促進し、病原性IgG自己抗体の血中濃度を低下させると考えられている。
重症筋無力症(MG)は国の指定難病で、神経筋接合部のシナプス後膜上にあるアセチルコリン受容体(AChR)等に対する自己抗体により神経から筋へのシグナル伝達が障害されることで筋力低下が生じると考えられている。
筋力低下が全身に及ぶ全身型重症筋無力症(gMG)は、希少性の慢性的かつ症状の変動を予測することが難しい自己免疫疾患。患者は眼瞼下垂、複視、嚥下困難、咀嚼困難、発語困難などのさまざまな症状を有し、生命を脅かすような呼吸筋の筋力低下に至る可能性のある重度の筋力低下を引き起こすことがある。患者の多くで神経筋接合部での神経信号の筋肉への伝達を妨げる病原性IgG抗体の発現があり、補体カスケードの活性化が起きているケースもある。
▽レクビオ皮下注300mgシリンジ(インクリシランナトリウム、ノバルティスファーマ):「家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症。ただし、以下のいずれも満たす場合に限る。・心血管イベントの発現リスクが高い、・HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又はHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
LDL-C(悪玉コレステロール)を低下させる低分子干渉RNA(siRNA)医薬品。循環血液中のコレステロールレベルを維持させる役割を果たすタンパク質の産生を抑えることで、血中のLDL-Cを減少させると考えれている。米国では、皮下注射として医師が初回投与後、3カ月目に投与し、その後は6カ月ごとに投与する。
▽レケンビ点滴静注200mg、同500mg(レカネマブ(遺伝子組換え)、エーザイ):「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体。アルツハイマー病(AD)の原因物質とされる神経毒性を持つ可溶性のAβ凝集体に選択的に結合し、脳内から除去することで、ADの症状進行を抑制する疾患修飾作用を持つとされる。
日本では今年1月に、「脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)及び軽度認知症(早期AD)」を予定適応に申請した。申請は、レカネマブ投与による早期ADの臨床症状の悪化抑制などを検証した臨床第3相「Clarity AD」などに基づくもので、早期AD患者の症状進行を27%抑制した。
ADは症状が進行すると患者QOLの低下だけでなく、家族の介護負担、医療費や福祉関連費用の増加、労働生産性の低下といった社会的コストの増大につながることが知られている。エーザイの内藤晴夫CEOは、レカネマブは臨床的ベネフィットに加え、「極めて高い介護面での貢献を通じた社会的価値」もあると強調しており、薬事承認とともに、社会的価値をどのように評価し、薬価に反映させるのかも注目ポイントとなる。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽ロミプレート皮下注250μg調製用(ロミプロスチム(遺伝子組換え)、協和キリン):「再生不良性貧血」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
トロンボポエチン受容体作動薬。既承認適応に「既存治療で効果不十分な再生不良性貧血」があるが、今回は免疫抑制剤未治療の再生不良性貧血を適応に加えるものとなる。
▽ジアグノグリーン注射用25mg(インドシアニングリーン、第一三共):「肝外胆管の描出」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。事前評価済み公知申請。肝・循環機能検査用薬。
▽ソル・メドロール静注用40mg、同125mg、同500mg、同1000mg(メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、ファイザー):「川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。事前評価済み公知申請。副腎皮質ホルモン剤。
▽ビザミル静注(フルテメタモル(18F)、日本メジフィジックス):「アルツハイマー病による軽度認知障害又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化」を対象疾患とする新効能医薬品。
▽アミヴィッド静注(フロルベタピル(18F)、PDRファーマ):「アルツハイマー病による軽度認知障害又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化」を対象疾患とする新効能医薬品。
いずれも体内診断薬。いずれも現在の効能・効果は、「アルツハイマー型認知症が疑われる認知機能障害を有する患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化」で、今回アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化を追加するもの。同日の部会で審議されるレケンビ点滴静注の診断補助にも使えるようにする。
▽エンタイビオ皮下注108mgペン、同108mgシリンジ(ベドリズマブ(遺伝子組換え)、武田薬品):「中等症から重症の活動期クローン病の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を対象疾患とする新効能医薬品。
ヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体製剤。皮下注製剤の効能・効果は「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」となっており、今回、クローン病の維持療法を追加する。