倉敷中央病院 アバターを活用した薬剤師によるお薬相談を開始 重症化抑制、若年層の活用に期待
公開日時 2023/07/28 04:51
「薬を飲み忘れたのですが、どうしたらいいでしょうか?」-。患者さんの目線の先には、にこやかな女性のアバターが映る。倉敷中央病院は、アバターを活用 した薬剤師によるお薬相談を開始した。アバターの活用により相談のハードルを引下げ、早期介入により疾患の重症化抑制につなげていきたい考えだ。アバターと親和性の高い若年層などに活用が進むことにも期待を寄せる。同院の薬剤師、有澤礼子さんは、「お薬で困っているけれども相談できずに病状や副作用が悪化し、救急搬送される患者さんが少なからずいる。その前に食い止めたい」と話し、お薬相談の活用で、二次医療圏の砦である同院として、さらなる病院機能を発揮する姿を描く。
◎「お薬でお困りごとのある方、アバターに相談しませんか?」
「お薬でお困りごとのある方、アバターに相談しませんか?」-。同院薬剤部のホームページには、こうした文字が躍る。クリックすると、アバターを操作する倉敷中央病院の薬剤師につながり、相談ができる仕組みだ。平日の午前9時から17時まで、男性を含む7人体制で相談に応じている。
同院では、対面や電話による相談を受け付けており、電話での相談件数も月に120件ほどあった。こうした中で、アバターを活用したお薬相談を6月19日に開始した。アバターの活用で、患者が話しやすくなる点に着目した。
◎現在までに20件ほどの相談 動画、画像の活用で「来院せずに解決」に期待
開始当初、相談件数は1日に1件程度、開始から1か月ほど経過した現在までに20件ほどの相談が寄せられた。相談内容は、「薬を飲み忘れてしまったけれど、どうしたらいいか?」、「副作用が心配」、「赤ちゃんにお薬を飲ませたいけれど、方法がわからない」などで、「今のところ、アバターの相談内容も、電話での相談内容と同じようなものが多い」(有澤さん)という。
ただ、これまで電話相談では的確な回答が難しいケースもあった。「デバイスの調子が悪くてボタンが押せないと聞いても、どこの不具合かよくわからない。“白い薬が・・・”と言われることもあるが、何の薬かわからないこともある」と有澤さん。自己注射や吸入薬の操作方法など、実際の動作でしか伝えられないこともある。こうしたケースでは、患者が来院して対面で相談する必要があった。
アバターを活用した相談では、患者の同意があれば、画像や動画などの共有が可能になるというメリットがある。患者が直接薬やデバイスを撮影して薬剤師に見せて相談してもらうことも可能になる。有澤さんは、「これまでは、患者さんに来院してもらうしか方法がなかったが、わざわざ病院まで足を運ばなくても、何か解決できることがあるのではないか」と期待を寄せる。実際、赤ちゃんへの薬の飲ませ方に悩む母親に、説明書を画像共有したケースもあったといい、「文字を見て説明できるというのは、有用だったのではと思っている」と話す。
◎二次医療圏での病院機能発揮へ 「救急搬送される前に何とか食い止めたい」
同院を受診している患者だけでなく、他院を受診する患者の相談にも応じる。「当院を受診されている患者さんであれば、腎機能など患者さんの病態に応じた詳しい薬の飲み合わせも相談にのることができるが、他院と当院との薬の飲み合わせや、他院にかかられて気になることがあったケースでも問い合わせがあればお受けしようと思っている」と話す。処方薬だけでなく、市販薬やサプリメント、健康食品と相談の内容も幅広く受け付けるスタンスだ。
「お薬で困っているけれども相談できずに病状や副作用が悪化し、救急搬送される患者さんが少なからずいる。市販薬の痛み止めを我慢できずに飲み、消化管出血で救急搬送されるような方もいる」と有澤さん。同院は二次医療圏の砦であり、重症化した患者が同院に救急搬送されるケースも少なくない。「患者さん自身の健康を守るという考えでは、当院の受診は関係なしだと思っている。救急搬送される前に何とか食い止めたい」と語る。
さらに、電話相談への抵抗の大きい若年層など、「これまで病院とつながりにくかったような人もターゲットにして、安心安全な薬物療法を実現できれば」と意欲をみせる。今後は、アバターは、猫などのキャラクターに変更することも可能と言い、子どもへの服薬指導への活用などにも意欲をみせた。