エーザイは５月17日、早期アルツハイマー病治療薬候補・レカネマブについて日本における社会的価値が最大467万 5818円との推計を発表した。臨床第３相「Clarity AD」の試験データに加え、日本の疫学データ、介護実態調査などの政府統計などを用いたシミュレーションが、学術誌「Neurology and Therapy」に掲載された。

アルツハイマー病における個人レベルの認知機能低下の経過を予測し、早期介入の効果をシミュレーションする疾患モデル（AD ACE モデル）を活用。レカネマブによる健康アウトカムの改善効果と費用削減効果の双方を統合し、レカネマブの年間価値を推計した。「狭義の医療支払者の観点」、「医療支払者の観点」、「社会的観点」について、標準治療にレカネマブを追加投与することで得られる健康アウトカム（QALY）と総費用の差を算出した。１QALY 獲得あたりの支払意思額を1500 万円と仮定した場合、社会的観点に基づくレカネマブの年間価値は最大467万5818円となった。

同社の赤名正臣常務執行役（チーフガバメントリレーションズオフィサー兼グローバルバリュー&アクセス担当）は、アルツハイマー病が医療費だけでなく、介護財政に大きな影響を与えていると指摘。さらに、ステージの進行により、コストが大きく増加することが推定されているとした。そのうえで、「今回のシミュレーションによって、日本において、レカネマブによる治療は当事者様に病態進行の遅延をもたらし、介護者や社会全体に対して大きなインパクトを与えることが示された。本論文は、ステークホルダーズの皆様が日本におけるレカネマブの潜在的な臨床的・社会経済的価値について理解を深め、製薬企業によるイノベーションの評価について議論するための重要な情報となると考えている」とのコメントを寄せている。

なお、米国では同様のモデルを用いて、一人当たりの社会的価値は年間３万7600ドル（約520万円）と算出。年間卸業者購入価格（WAC）を年間２万6500ドル（約360万円）に決めている。