製薬企業主催のメタバースを用いた講演会に参加したことのある医師が2023年２月時点で６％であることがわかった。参加医師の評価は「今後も参加したい」、「移動時間が不要で助かった」、「積極的に率直な意見がかわせる」などのポジティブ派と、「面倒」、「肉体的な実感がなく、慣れない」、「コンテンツが重くて話にならない。二度と参加したくない」などのネガティブ派が概ね半々だった。

2024年４月から順次施行される医師の働き方改革によって、より効率的な講演会が求められるとの声も聞かれる。移動時間の制約をほぼ受けずに参加医師とのコミュニケーションが図れるメタバース講演会の利用がどこまで伸びるか注目される。

文末の「関連ファイル」に、参加医師からのポジティブな意見、ネガティブな意見をまとめた資料を掲載しました（会員のみダウンロードできます。14日間の無料トライアルはこちら）。

◎メタバース講演会　認知度は30％

この調査は、製薬デジタルマーケティング支援会社のMCI DIGITALが実施した。調査対象は製薬企業のオウンドサイト（自社サイト）やその他医療関係企業サイトを閲覧している医師5072人（勤務医：3917人、開業医：1155人）。調査時期は23年１月25日～２月６日。分析結果は、同社の「医師版マルチメディア白書2023年春号」に掲載している。

「メタバース」はインターネット上に構築した３次元の「仮想空間」のこと。この空間に講演会場や各種ブースなどを設置する。参加者はパソコンなどでメタバース内の講演会にアクセスし、自身の分身となるアバターを操作して興味のある講演を視聴したり、ブースをまわったり、質疑応答ができる。他の参加者ともアバターを介して情報交換でき、設定によって１対１や不特定多数の参加者と情報交換できる。ビジネスシーンではチャットや音声でのやり取りが主流で、ＶＲゴーグルを用いたやり取りはまだ先になりそうだ。

調査結果を見ると、製薬企業主催のメタバース講演会が開催されていることを知っている医師は30.0％（1521人）だった。年代別では、30歳代以下の医師は32.5％、40歳代も33.3％で、若い医師ほど認知度は若干高い。メタバース講演会を認知している医師にこれまでの参加経験を聞いたところ、参加経験有は20.5％（312人）で、調査対象医師全体を母数とすると、６％の医師が経験有となる。経験有との医師は40歳代で26.0％と最も高く、これ以外の年代は20％を切っていた。

参加経験有との医師から寄せられた感想（自由コメント）を分類わけしたところ、メタバース講演会にポジティブな内容は111件、ネガティブな内容は122件となった。

◎メタバース講演会経験医師　今後の参加意向は75.9％　より良くなること期待

調査対象医師全体に対し、今後メタバース講演会に参加したいかを聞いた結果を見てみる。参加する講演会にメタバース講演会も用意・開催された場合、メタバース講演会に参加したいかを質問したところ、「参加したい」は9.9％、「特別な機材が必要なければ参加したい」は25.4％、「他の参加医師からの評判が良ければ参加したい」は20.7％―― となり、一定の条件付きながら医師の56.0％がメタバース講演会の参加に前向きな意向を示した。「参加したくない」は22.9％、「分からない」は21.0％だった。

年代別に見てみると、条件付きを含む「参加したい」との割合は、30歳代以下66.5％、40歳代60.5％、50歳代50.5％、60歳代46.1％、70歳代以上35.2％ ―― となり、若い医師ほどメタバース講演会に前向きなことがわかる。

ちなみに、メタバース講演会に参加経験のある医師312人にしぼって見てみると、「参加したい」は23.1％、「特別な機材が必要なければ参加したい」は34.9％、「他の参加医師からの評判が良ければ参加したい」は17.9％ ―― で、計75.9％が今後のメタバース講演会への参加意向を示した。「参加したくない」は16.3％、「分からない」は7.7％だった。現在の仕様ではネガティブな反応を見せた医師も、将来より良くなることを期待して前向きな姿勢をみせたと分析できそうだ。

◎メタバース講演会への要望　トップは「現地開催のような臨場感の体験」

メタバース講演会でどのようなことができれば参加したいかも聞いたところ、トップは「現地開催のような臨場感の体験」（46.2％）で、次いで「講演会後の懇親会等のような演者や参加者との自由な交流」（30.0％）、「講演会前後での他の参加者、ＭＲとの会話や個別相談」（23.0％）―― となった。

MCI DIGITALは調査結果を受けて、「バーチャル空間を利用した講演会は発展途上だが、医師の関心・興味は少なくない状況でニーズはありそう。ツール側の改善、頑張り次第という部分もある」と話している。

詳細はミクス23年５月号（５月１日発売予定）とミクスOnlineに掲載します。