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武田薬品 デング熱ワクチン ピーク時売上を20億ドルに引上げ 年間1億回接種分生産へ

公開日時 2023/03/17 04:51
武田薬品のラモナ・セケイラ・グローバルポートフォリオディビジョンプレジデント(写真右上)は3月16日、デング熱ワクチン「QDENGA」(キューデンガ)の投資家向け説明会で、ピーク時売上予想を16~20億米ドルに引き上げたことを明らかにした。これまでは7~16億米ドルと予想していた。製造能力も拡大し、これまでの計画の倍となる年間1億回接種分を生産する方針も示した。

2025年までに20カ国以上での上市を目指し、政府による予防接種プログラム(NIP)の開始に向けた取り組みも加速させる。流行国でのNIPでは他の革新的なワクチンの平均価格より低い価格に設定する考えで、世界で急増するデング熱対策に貢献する。

◎インドネシアの最高小売価格は1回接種40米ドル ドイツの小売価格は115米ドル

「承認された国々においては、全てのワクチン接種対象者がキューデンガを接種できる環境を目指す」――セケイラ氏は説明会で、こう強調した。キューデンガは2022年8月のインドネシアでの承認取得を皮切りに欧州、ブラジルでも承認され、複数の流行国や旅行市場で当局による審査が進行している。

セケイラ氏は「国や市場セグメントごとのニーズに合致させる柔軟な価格設定アプローチを行う」と述べ、流行国の民間市場、流行国の公的市場(NIP)、旅行市場のそれぞれの価格イメージなどを説明した。例えば流行国のインドネシアの民間市場では、革新的なワクチンの平均価格が1回接種あたり73米ドルのところ、キューデンガの最高小売価格は1回接種あたり40米ドルだと紹介。ブラジルでは大企業の従業員に対し接種を促進するためのパートナーシップにも取り組んでいるとした。

流行国でのNIPの開始にも積極的に取り組み、単一の価格帯設定およびディスカウントマトリックスを用意する。NIPによる接種数の増加に伴い、スケールメリットを生かした原価率の低減も期待できるため、低価格であってもキューデンガビジネスにプラスに働くとみている。

旅行市場においては、「他の革新的な旅行ワクチンの各国における価格帯と同様に設定する」とした。例えばドイツでは、革新的なワクチンの平均価格が1回接種あたり119米ドルのところ、キューデンガの小売価格は115米ドルだという。

セケイラ氏は、「治療コスト、感染により仕事ができない状態、観光産業における機会損失などの経済的要因を考慮すると、キューデンガの上市は個人及び各国政府に対して著しいコスト節減機会を提供できる可能性がある」と話した。

◎デング熱の発生率 過去50年で30倍増加 集団免疫低下も一因

デング熱は、最も急速に感染拡大している蚊媒介感染症で、WHOはグローバルヘルスに対する10の脅威の1つにデング熱を認定している。南米やアジア地域など125カ国以上の40億人以上が感染リスクにさらされ、年間感染者数は3.9億人、入院は50万人、死亡は2万~2.5万人と推定され、主に小児が占める。デング熱のパンデミックは数年に一度発生し、感染拡大による医療体制のひっ迫も課題となっている。

デング熱の世界の発生率は過去50年間で30倍増加した。増加要因として都市化、旅行、気候変動のほか、これまで蚊を駆除して感染率を減少させることに重点が置かれたため、結果として集団免疫が低下したことも要因のひとつとされている。このためワクチン接種による免疫レベルの向上が重要になっている。

◎キューデンガ 症候性デング熱症例を80.2%予防 4.5年時点で入院率を84%抑制

キューデンガは、デング熱または重症型デング出血熱を引き起こす可能性がある4種全ての血清型を含む4価デング熱ワクチンで、3カ月間隔で2回接種して用いる。

世界8カ国で実施したグローバル臨床第3相試験(TIDES試験)では、2万例以上の小児及び青年が参加。デングウイルス感染歴を問わず、ワクチン接種から12カ月後の症候性デング熱症例の80.2%が予防され、主要評価項目を達成した。また、18カ月後の入院の90.4%を予防し、主要な副次評価項目も達成。さらに接種から4.5年時点における入院率を84%抑制したこともこのほど確認され、キューデンガのデングウイルスに対する持続的な防御効果を示した。

忍容性は「概ね良好」で、最も多く報告された副反応は注射部位疼痛や頭痛、筋肉痛など一般的なワクチンで発現するものと共通だった。

◎「ピーク時売上到達後も持続的な売上収益が期待できる」

今回、4.5年効果が持続する新たなエビデンスが得られ、製造能力拡大に向けたCMOとの提携を積極的に模索することも決めたことでピーク時売上予想を上方修正した。セケイラ氏は、「ピーク時売上到達後も持続的な売上収益が期待できる」と述べ、その理由として参入障壁が高いためワクチンにおける後発品参入リスクが限定的なことを挙げた。
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