薬食審・安全対策調査会 ゾコーバの妊婦への投与 再発防止で注意喚起 追加の安全対策は行わず
公開日時 2023/01/25 04:50
厚労省の薬食審・医薬品等安全対策部会安全対策調査会は1月24日、新型コロナ治療薬・ゾコーバ錠の市販直後調査で禁忌となっている妊婦への投与が2例あったことについて報告を受けた。厚労省はこれを受け、20日付で注意喚起の事務連絡を発出。調査会ではこのため、再発防止策が講じられていると判断し、「現時点において、さらに追加の安全対策は行わない」ことを確認した。同剤は動物実験でウサギの胎児に催奇形性が認められ、臨床試験で妊娠中の女性への投与経験がない。このため、催奇形性が重要な潜在的リスクと設定されており、妊婦や妊娠の可能性のある女性への投与が禁忌となっている。
厚労省が20日付で発出した事務連絡によると、投与された妊婦2例のうち1例は、主治医は妊娠に関してのリスクについて患者に対して適切に説明されたが、患者自身に妊娠している可能性があることの自覚がなかったため同剤投与に至った。ただ、投与終了約1か月後に投与時点で妊娠週数4週目だったことが判明した。2例目は情報収集中。2例とも同意書は取得していた。
事務連絡では、同剤は妊婦又は妊娠する可能性のある女性への投与は禁忌であることを改めて注意喚起。それとともに、妊婦2例に投与されたことを踏まえ、「前回の月経後に性交渉を行った場合は妊娠している可能性がある。本剤の処方を行う医療機関におかれては、患者が『妊娠していない』又は『妊娠している可能性がない』ことを入念にご確認ください」とした。また、製造販売元の塩野義製薬が周知している「妊娠している女性、妊娠している可能性のある女性、又は妊娠する可能性のある女性への投与に関するお願い」にある事前チェックリストを、処方前に「必ず確認」することも求めた。
塩野義製薬は再発防止策の一環として、同意説明文書・同意書の女性の場合の確認事項に、「前回の月経後に性交渉を行った場合は妊娠している可能性があること。現在、妊娠又は妊娠している可能性がある場合には、申し出ること」との旨を追記する。この日の安全対策調査会で、この追記は24日中に行われる予定と報告された。
安全対策調査会では、宮﨑義継参考人(国立感染症研究所ハンセン病研究センター長・真菌部部長)が、「今朝、所属学会からも当該通知(事務連絡)を周知するメールがあった。既に対応がなされていると考える」と述べた。「今後は今回服用された妊婦のお子さんの状況等をフォローして、安全性の確認が求められる。今後もデータの蓄積と解析が求められるが、現時点では特段の追加の安全対策の必要性はないと考えている」と述べた。舟越亮寛委員(亀田総合病院薬剤管理部長)は、「医療安全上、ヒューマンエラーは全てゼロにはならない」と指摘するとともに、「安易な中絶等にならないよう、リスクコミュニケーションが医療現場で求められていると思う」とコメントした。