豪ヘルスケア・アナリティクス大手Prospection 日本の取組強化 独自アルゴリズムでRWEの創出支援
公開日時 2023/01/17 04:50
オーストラリアのヘルスケア・アナリティクス大手Prospection(以下、プロスペクション)は、独自の予測型AIアルゴリズムで構築した市場分析プラットフォームに、メディカル・データ・ビジョン(MDV)が保有する国内最大規模の診療データベース(DB)を搭載して、日本国内でのプロモーション活動と販売を開始した。例えばがん領域であれば、診療DB(社保あるいはDPCのレセプトデータ)に蓄積されたRWDをプロスペクションのプラットフォーム上で解析して、薬剤ごとの生存曲線や、治療ラインごとの薬剤やレジメンのシェア、検査値、当該薬剤以降の治療の変遷――などを都道府県別もしくはエリア別で一目で確認できる。プロスペクションは2023年6月期中(22年7月~23年6月)に製薬企業10社での採用を目指す。
◎過去3年間に論文29件発表 英国で診療ガイドラインの変更も
プロスペクションは2012年にオーストラリアで設立された。オーストラリアの医療制度は日本の国民皆保険に近い「ユニバーサルヘルスケア」が整備されている。さらに、日本のように多くの保険者を介さないため、オーストラリア政府が提供するデータセットは欠損が少なく完成度が高いとされる。
プロスペクションはまずオーストラリア政府が提供するデータセットに独自の予測分析と機械学習を適用して、アルゴリズムをブラッシュアップ。オーストラリアを皮切りに英国、米国、アジアに事業を拡大し、リアルワールドエビデンス(RWE)を創出・提供してきた。実際、過去3年間に同社のプラットフォームを使用した29件の論文が発表されているほか、英国では希少疾患の肺動脈性肺高血圧症に係るガイドライン変更に至った。
◎「日本全国の医療実態の分析が可能」
APAC(アジア大洋州)を統括するグレッグ・ヒューズ氏は本誌に、「私たちのミッションは高度な解析を駆使したより良い意思決定により、適切な患者さんに、適切な治療を、適切なタイミングで提供することだ」と、グローバルの事業目標を述べた。日本市場に関しては、22年秋からMDVとの協業を開始していることを紹介した上で、「MDVがカバーする4000万人超の診療データに当社独自のアルゴリズムを適用することで、日本全国の医療実態の分析が可能になった。協業から生み出されるRWEやインサイトを日本の皆さんに提供したい」と強調し、日本市場の取組みを強化する姿勢をみせた。
同社のプラットフォームのうち「Market Dynamics」は、毎月の患者動向(新規、継続、切替IN/OUT、治療中止)をトラッキングし、拡大推計した結果を都道府県別あるいはエリア別のグラフで示すもの。独自のアルゴリズムにより直近の月の予測値も示すことができる。
「Patient Insights」は、集団全体や特定集団のペイシェントジャーニーを可視化するもので、こちらも都道府県別あるいはエリア別に分析できる。例えば、▽薬剤別/レジメン別、▽ラインごとの薬剤やレジメンのシェア、▽見たい薬剤まで及び見たい薬剤以降の治療の変遷、▽次の治療に移行するまでの平均期間――などを可視化し、治療実態をより深く理解することを助ける。がん領域などでは新薬や既存薬との生存率の差をグラフ化する機能もある。
ヒューズ氏は、これらの結果はRWDをプラットフォーム上で解析して得られたインサイトであり、論文掲載やMRの販促資材に活用できるRWEに引き上げるためには更に高精度の統計解析が必要と指摘。同社では「サブポピュレーションアナリシス」と呼称するデータのバリデーションなどを行う高精度解析も提供しており、前述の論文掲載やガイドライン改訂はこの高精度解析を実施したものだと説明した。