帝人ファーマ うつ病患者の認知行動療法でVR用いた特定臨床研究を開始 25年以降の薬事承認目指す
公開日時 2022/12/08 04:50
帝人ファーマは12月7日、うつ病患者向けに開発中の治療用VRを用いた特定臨床研究を開始すると明らかにした。治療用VRは、認知行動療法の一連の流れをVRで体感しながら技法を学ぶことで、患者の感情喚起や認知の偏りの修正をサポートするというもの。医療用VRを手掛けるベンチャー企業のジョリーグッド社と共同開発している。研究実施期間は24年9月末までとし、25年以降に有効性や安全性を確認する治験を行い、薬事承認を目指す。VRを活用した認知行動療法での特定臨床研究としては同研究が初めてとなる。(写真提供:ジョリーグッド社)
今回の特定臨床研究は、帝人ファーマとジョリーグッド社、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の3者が共同で実施。大うつ病性障害と診断され、薬物療法で改善しない、あるいは薬物療法が適さない患者を対象とする。通常は対面で実施される認知行動療法の一部をVRで代替することで、治療効果を有しながら医療従事者の介在時間を短縮することが可能かどうかを検証するほか、安全性についても評価する。
研究の基本概要は、単施設で実施する治療介入の単群、前後比較試験として行う。原則週1回の外来で、VRを16セッション実施する。評価は、ベースラインとなる8セッション終了時、16セッション終了時、または治療中止時の検査と、各セッション時の検査や診療にかかる時間の計測、患者質問票によって行う。16セッション終了後または介入中止から3か月後、6か月後の追跡評価もそれぞれ実施する。
認知行動療法は、1回1時間を毎週、3、4か月ほどを続けるのが通常だが、精神科を訪れる患者数の増加により、医師が1人の患者にかけられる時間は限られている。加えて医療従事者の時間的負荷が大きいことや技量のばらつき、提供体制に地域格差があるなどの課題がある。このため認知行動療法を希望する患者への供給は十分ではなく、認知行動療法の普及に向け、情報通信技術を活用した提供体制の整備することが課題となっていた。
特定臨床研究では、医療従事者の時間的負荷を VR で軽減することで、認知行動療法によるうつ病治療の機会が拡充され、患者利益が向上するのではないかと期待されている。帝人ファーマは、「今回の研究がうつ病治療における未充足ニーズの解決につながるといい」とコメントしている。