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中医協 23年度薬価改定焦点の安定供給「薬価以外の支援策もセットで検討を」 財源一部拡充も

公開日時 2022/12/05 04:52
中医協薬価専門部会が12月2日開かれ、2023年度薬価改定に向けて議論を行った(関連記事)。「医薬品の安定供給確保」が焦点となるなかで、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「薬価上の対応だけで解決する問題ではないと考える。安定供給に責任を持てない企業が乱立するような産業構造や、ビジネスモデルを起因とする課題解決、薬価以外の支援策などもセットで検討しなければならない」と指摘した。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「実勢価改定の対象範囲を広げたうえで、安定供給が難しい品目に財源の一部を充当する方法も合うのではないか」との考えを示した。

◎診療側・長島委員「産業構造やビジネスモデルの課題解決、薬価以外の支援策をセットで検討を」

23年度改定は、毎年薬価改定の影響に加え、物価・エネルギー価格の高騰も相まって、医薬品の安定供給確保が焦点となっている。

診療側の長島委員は、相次ぐ出荷調整により日常診療に影響を来し、医療現場の負担も増大していると説明。「何らかの対応が必要であることは理解できるところだ。しかしそれは薬価上の対応だけで解決する問題ではないと考える」と指摘。厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」での議論を引き合いに、「安定供給に責任を持てない企業が乱立するような産業構造やビジネスモデルを起因とする課題解決、薬価以外の支援策などもセットで検討しなければならない」と強調。そのうえで、現状の安定供給確保についての「短期的な対応が仮に必要だとして、23年度薬価改定に限って対応を行うのであれば、その具体案について、この中医協で議論を進めていくべき」と述べた。なお、支払側も前回の中医協で税制や補助金を含めた検討の必要性を求めている(関連記事)

◎経済安全保障 重要特定物資に22年度第2次補正予算案で553億円を計上

厚労省はこの日の中医協に、経済安全保障推進法に基づく、サプライチェーン強靭化に向けた取り組みとして、22年度第2次補正予算案で553億円を計上したことを報告した。経済安全保障推進法では、国民の生存に必要不可欠な物資で要件を満たす品目を特定重要物資として政令指定し、国が民間企業に対し、支援を講ずることとなっている。医薬品では原材料の供給が1か国にのみ依存しており、過去に供給途絶などの蓋然性が認められることから抗菌剤を候補に、原薬の製造設備と、原材料・原薬の備蓄施設の構築を一体的に行うための体制整備支援を予定しているという。政令指定は年内を目途に行うことも報告された。

◎支払側・松本委員 不採算品再算定など「個別に対象品目の検討を」 改定にメリハリを

赤字品目を救済する薬価上のルールとしては、不採算品再算定があるが、市場実勢価改定と連動していないルールとされている。支払側の松本委員は、「実勢価改定と連動しない措置を安定供給のために実施するということであれば、少なくとも一律的な対応ではなく、個別に対象品目を精査することが不可欠だ。また、国民生活や患者負担への影響を考慮することも極めて重要な視点だ。安定供給の対応においても、当然薬価改定の中でメリハリを利かせるべきということも主張させていただく」と述べた。

このほか、診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会理事)は、21年度改定でコロナ特例が措置されたことを引き合いに、「現在の安定供給に大きな支障があり、さらに物価高騰などの状況下では、コロナ特例のような対応や不採算品目への対応といったような、安定供給の確保をするための措置を既収載品ルールの適用としてではなく、緊急的なものとして対応すべき」と述べた。

◎改定範囲 前回改定踏襲に「合理的な根拠はない」 診療側・長島委員

診療報酬の改定範囲については、診療側の長島委員は、「安定供給に支障が生じているなかで、6年連続して薬価を一律に引き下げると医薬品の供給に致命的な打撃となり、国民の生命と健康に重大な影響を与える懸念があることや、物価高騰による製造コストの上昇などを踏まえれば、前回の21年度の対象範囲をそのまま踏襲することに合理的な根拠はなく、現状に即した合理的な判断を行うべき」と述べた。診療側の有澤委員は、「今回の薬価調査の結果である平均乖離率7%を踏まえても、対象範囲は少なくとも平均乖離率を超えたもののみを対象とすべき。前回のように、平均乖離率より切り込んだ形での線引きは行うべきではないと改めて主張させていただく」と述べた。

◎“乖離額”視野で新薬や希少疾病が影響受けやすく 

支払側から「乖離率だけでなく、乖離額も考慮するか議論すべき」との声があがったことを受け、厚労省はこの日の中医協に、乖離額についての資料を提示。「単価が高額な薬剤では、新薬や希少疾病用の薬剤が多くを占めており、乖離額で考えるとこのような薬剤の方が影響を受けやすくなる可能性がある」とした。また、一日薬価合わせの考えが基本であることから、投与数量・回数が少ない薬剤の方が影響を受けやすいと説明した。診療側の有澤委員は、「イノベーションの評価などを促進し、国民が必要とされる医薬品にアクセスすることを確保していく観点からも逆行するもので、率で見ないと不公平なものとなってしまう。乖離額という考え方を適用していくことは適切でない」と主張した。


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