中外製薬 患者ニーズ理解で「PHARMONY」構築 患者が求める真のエンドポイントなどをデータで検証
公開日時 2022/11/11 04:50
中外製薬は、研究開発の早期の段階から患者のニーズを理解しておくための新たなスキーム「PHARMONY(ファーモニー)」を構築した。11月8日に開催したESG説明会で公表したもの。トライアルとして患者団体と協働し、患者視点の知見の取得に努めている。同社は、「中外製薬の創薬力を最大限に生かし、患者の真のエンドポイントを満たす研究につなげていく」と強調している。
「PHARMONY(ファーモニー)」は、「Patients」、「Pharma」、「Harmony」を掛け合わせた造語。患者の考えを尊重し、理解を図りながら、患者のための創薬研究をともに目指すという思いを込めた。これまでの創薬研究では、医療者視点の情報は入手できたものの、患者視点の情報は十分ではなく、互いにニーズに対する認識に乖離があったという。また、モダリティや剤形が決まってからでは患者の声は反映されづらいという課題もあった。
◎生活環境も含めた有害事象の実態研究
患者中心の取り組みでは抗PD-L1抗体医薬品・テセントリク(アテゾリズマブ)を投与された進行再発トリプルネガティブ乳がん患者に対し、生活環境下も含めた有害事象の観察研究を行った。在宅に戻った患者の心的ストレスなどをe-PRO を使ってフォローしていくというもの。大内香執行役員(メディカルアフェアーズ本部長)は、「まだどのような副作用がどのような時期に起こるかを検討している段階だが、最終的には、それが適切な患者に適切な副作用対応をするようなかたちに結びつけていけたら良いなと考えている」と述べた。
◎「どれだけ健康な生活を送れるのか」、「体育の授業に出たい」を検証する
ヘムライブラ(エミシズマブ)を使用する血友病A患者における前向き観察研究(TSUBASA 研究)では、「実際の患者・家族の立場になれば、私たちはどれだけ健康な生活を送れるのか、体育の授業出られるのか、そういうことが真のエンドポイントなわけだ」と大内執行役員は強調する。その上で、「患者にFitbitのようなアクチグラフや、さまざまなデジタル機器を付けて頂き、体育の授業に参加したかどうか、そしてそのときに出血状態がどうだったかをフォローする研究を行った」と説明。23年にも最終の報告が学会でされる予定だと明かした。
大内香執行役員は、「革新的な新薬は、“患者に役に立つ薬なんだ”という価値観のなかで、患者視点の情報を踏まえて創薬を進めることこそが、イノベイティブな創薬である」と説明し、コア・バリューとしての「患者中心」をメディカル本部として実践する考えを強調した。