岸田首相 総合経済対策策定へ「予算、税制、規制・制度改革で総合的、効果的な対策」を指示 諮問会議
公開日時 2022/10/06 04:51
岸田文雄首相は10月5日の経済財政諮問会議で、総合経済対策の策定に向けて、予算、税制、規制・制度改革を総合的に進める効果的な対策を取りまとめるよう、山際大志郎経済再生担当相に指示した。特に、物価上昇への対応、更なる賃上げに向けたマクロ環境整備については、今年度から来年度にかけて「実質2%~2%台半ばの経済成長率を目指したマクロ経済運営を行うべき」との指摘を受け、科学技術・イノベーション、スタートアップなどの重点分野で呼び水となる「官の投資を加速し、さらなる民間投資の拡大を図る」との方針を明示した。一方、加藤勝信厚労相と西村康稔経産相に対し、構造的な賃上げのための効果的施策を経済対策に盛り込むよう求めた。
◎民間議員「今年から来年、我が国経済には大きな下押し圧力がかかることが想定される」
この日の諮問会議で民間議員は、「物価上昇による実質所得減、原料コスト高騰による収益圧迫、欧米の金融引き締めによる世界経済の減速など、今年から来年にかけて、我が国経済には大きな下押し圧力がかかることが想定される」と指摘した。その上で政府の総合経済対策については、「こうした下押し圧力を乗り越え、日本経済を持続可能で一段高い成長経路に乗せるための予算、税制、規制・制度改革を大胆に進める総合的な政策パッケージとすべきである」と強調している。
◎賃上げ可能なマクロ経済運営「経済対策をブースターに実質2%~2%台半ばの成長」
こうした社会経済情勢を打開するには、物価上昇の負けない継続的な賃金上昇と、成長分野での大胆な投資で収益性を高め、賃上げ原資を拡大するより道はない。この日の諮問会議に提示された「更なる賃上げを可能とするマクロ経済運営」と題する資料では、「経済対策をブースターに実質2%~2%台半ばの一段高い成長」が求められると指摘している。こうした課題に対して岸田政権が繰り出す施策は、「人への投資、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX・DXを中心に官の投資を呼び水にした民間需要の更なる誘発など、予算だけでなく税制や規制・制度改革を総合的に行う官民連携の成長促進対策とすべき」というものだ。また、インバウンド消費の回復や農林水産物の輸出促進を通じた円安メリットによる地域活性化に期待を寄せる。
◎賃金の継続的上昇「医療・介護、ヘルスケアなど公的部門の規制・制度改革」の徹底を
一方で賃金の継続的な上昇では、看護、介護、保育など現場の処遇改善に向けた取り組みや、同一労働同一賃金制度の徹底等を通じ、正規・非正規、男女間の賃金格差の是正による賃金底上げを進めるべきと提案。さらに、医療・介護、ヘルスケア(HX)など公的部門の規制・制度改革を徹底することで、民間の投資、人材、スタートアップを呼び込み、賃金・所得の増加につなげる方策なども提案している。
岸田首相は政権発足時から「新しい資本主義」の実現を掲げてきた。重点分野には医療やバイオを含む科学技術やイノベーション、スタートアップ、さらにはDX(デジタルトランスフォーメーション)などの言葉が並ぶ。早期実現に向けた「工夫」では、「民間の予見可能性を高めつつ、その実行にあたっては官民連携のプラットフォームなど実行を担保する仕掛けを設け、活用すべき」などの方針が示される。しかし、今回の社会経済情勢の急激な変化の前に、ようやく新しい資本主義のグランドデザインと実行計画の重点事項が取りまとめられた段階だ。臨時国会が10月3日に開会した。会期は12月10日までの69日間。2023年度予算編成を控える秋の国会だけに、政府の総合経済対策を早期に示し、社会経済情勢をめぐる与野党間の論戦を期待したいところだ。