有識者検討会 物価高で不採算品目への配慮求める声相次ぐ 日薬連、GE薬協に次いで卸連も
公開日時 2022/09/30 05:55
日本医薬品卸売業連合会の鈴木賢会長は9月29日、厚労省の医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会(座長:遠藤久夫・学習院大経済学部教授)で、「安定確保医薬品、不再算定品目などについては、自由競争では限界があるので、何らかの配慮が必要」との考えを示した。物価・エネルギー価格が高騰するなかで、「急激な物価上昇においても、適切なコスト転嫁が可能となる柔軟な価格形成の仕組み」の必要性も訴えた。22日の有識者検討会で、日本製薬団体連合会(日薬連)、日本ジェネリック製薬協会も同様の主張を行っており、2023年度改定の焦点の一つとなることが想定される。一方で、ジェネリックの産業構造をめぐっては共同開発などの課題を指摘する声もあがった。
◎卸連・鈴木会長 需給調整に卸全体で548億円相当のコスト 医療機関・薬局にも影響
後発品の供給不安が続くなかで、医薬品卸は依然として需給調整に追われている。鈴木会長は、「現場担当者が、毎朝1時間から1時間半かけて取り先からの問い合わせ対応や、代替となる医薬品の情報確認に追われているような状況だ。また、民間調査会社の調査では、医薬品卸全体でこの需給調整に548億円相当のコストが費やせると試算されている。現場では対応する担当者の精神的な負担も大変大きく、単純に金額で測ることができない状況になっている」と説明した。
◎卸連・折本理事「後発品は仕切価を度外視して価格調整する題材に」
需給調整の前後での仕切価、納入価の変化を問われ、卸連の折本健次理事は、「後発品の需給調整後は、仕切価、最終原価はかなり引き上がった。それに伴って、納入価交渉も実態的にはしている」と説明。一方で、大規模チェーンを中心に単品総価が多いなかで、「どうしても過去の薬価差率がガイドラインとなって交渉が始まる」と話した。「我々もできるだけ除外したり、新薬についてもこれを何とかという価格交渉をしてはいるが、後発品は残念ながら、仕切価を度外視して、価格調整する題材になってしまっているのが実態だ。仕切価が上がったとしても、それに伴って納入価格を上げていると言う実態は少ないと思う。本来は需給調整であれば、その段階で価格を上げて交渉すべきところだが、それが残念ながらできていないというのが実態だ」と強調。そのうえで、「先般22日の有識者検討会でも日薬連、ジェネリック製薬協会の発表もあったが、不採算がいま問題になっていると思う。これについては卸連としても、制度の見直しを本当にお願いできればと思っている」と述べた。木村仁参考人(クレコンリサーチ&コンサルティング代表取締役社長)も、「最低薬価を引き上げる」ことなどを提案した。
また、医薬品の供給不足が起きた際の対応として、日薬連は国への報告の義務化と国による情報開⽰の法制化を求めていたが、卸連の眞鍋雅信理事も、「やはり欠品が生じた場合、出荷調整の度合いに応じてでもそうだが、国、政府に報告をするという法的な義務については検討していただきたいと現場を預かる者としては持っている」と語った。また、「安定供給を阻害するような商慣習については、医薬品流通改善のなかで厳しく戒められてはいるが、しかし若干残念なところ努力目標に過ぎない。経済安全保障の観点からも、流通改善ガイドラインの一部項目については、いまより少し拘束力を少し持たせるような方向で検討を賜ればと思う」とも述べた。
◎共同開発の指摘に卸連・眞鍋理事「後発品10社発売だと棚面積、管理コストも10倍」
このほか、共同開発についても指摘が飛んだ。眞鍋理事は、「特に共同開発が始まって以降、先発品1品が、特許が切れて後発品が10社から発売になると、極端な話、倉庫の棚の面積10倍必要になる。その管理コストも10倍にかかる。取引の中では完全に成分名だけではなく、メーカー名だけでなく、包装単位まで管理するので非常に手間となっている」と説明した。井上光太郎構成員(東京工業大工学院長)は、後発品の品目数の多さなどの集約化が進んでいないことで、「安定供給を阻害するということはないか」と質問。眞鍋理事は、「同じ工場から製造された医薬品であっても銘柄が異なることがあって、そのどちらかに出荷調整が入った場合には、全体に玉突きで影響が波及していくことがある。1 ラインからは1銘柄で出ていくような方向性が進んでいけば我々にとっては望ましいと思っている」と述べた。
◎卸連 中間年改定は「慎重に」 調整幅「引き下げるべきでない」
卸連は、「中間年の薬価改定については慎重に対応すべきであり、調整幅についても引き下げるべきではない」と主張している。