卸連・一條副会長 8月末の出荷調整品1万3027アイテム 「突然きた」医療機器・診断薬の値上げ要請
公開日時 2022/09/13 04:50
日本医薬品卸売業連合会の一條武副会長は9月12日開催のクレコンリサーチ&コンサルティング主催セミナーで講演し、8月末時点の出荷調整品が556成分、6467品目、1万3027アイテムになると公表した。直近9月11日時点で1万3237アイテムに拡大しているという。一條副会長は出荷調整に要するMS等の業務負担だけで、「1年間で約15ポイント上昇した」と窮状を訴えた。一方、卸が今秋に直面する新たな課題にも言及。「(エネルギー価格等の高騰で)9月から医療機器や診断薬品の値上げ連絡がメーカーから突然きた。ビックリした」と明かし、直近2か月で約12%(1760アイテム)の値上げ交渉を医療機関等と行うことになると警戒感を露わにした。
◎2年前入社のMS「謝ることしかしていない」 MSの悲鳴を訴え
「2年前に入社した新人MSは(これまで)謝ることしかしていない。(何故)こんな会社に入っちゃったのという話しも聞いている」-。一條副会長は収まることなく長期化する後発品の出荷調整による「MSの悲鳴」をこう表現した。この日の講演で示した「現場からの主な声」でも、朝昼帰社後に2~3時間は商品の手配、確認に追われ、土曜日・休日も携帯電話が手放せないでいる。さらに、得意先との関係悪化など、出荷調整におけるMSの業務負担や心的負担が大きいと指摘する。一條副会長は、「後発品メーカーでも規模の多いところは来てくれるが、規模の小さい企業は人がいないので、得意先の訪問はしてくれず、その分(MSが)説明しないといけない。精神的に追い込まれている」と現場の厳しさを訴えた。
◎出荷調整比率 成分数21.9%⇒25.7%、品目数33.0%⇒44.5%、アイテム数25.1%⇒33.9%
出荷調整品の推移をみると、21年10月末の475成分、4791品目、9641アイテムが、22年8月末には556成分、6467品目、1万3027アイテムまで増加した。出荷調整比率をみると、成分数は21.9%⇒25.7%、品目数は33.0%⇒44.5%、アイテム数は25.1%⇒33.9%まで拡大した。一條副会長は、「21年の小林化工、日医工、長生堂、そして22年1月の大阪日立物流火災まで出荷調整は拡大したが、その後一時的に減り、3月から再び増加に転じた」と説明。この増加要因は、①GE各社が自主試験を厳しく実施し、規格値から外れた製品を自主回収、②小林化工の委託製品を自主回収、③原薬入手製品で回収が発生し、他社流通に波及した―ことをあげた。なお、8月末の出荷調製品1万3027アイテムは企業数みると96社に及ぶ。アイテム数の内訳では、上位6社で全体の50%、上位20社で83%を占めた。
◎医療機器・診断薬品の値上げ 1760アイテム・12%値上げ 11月には3100アイテムが値上げ
一條副会長は、昨今の経済情勢に伴うエネルギー価格の高騰で、医療機器・診断薬品の値上げに関するメーカーからの要請が「突然きた」と明かした。9月に654アイテムを112.9%、10月に1106アイテム112.0%それぞれ値上げするというもの。値上率が2.08倍の翼状針ホルダー付なども含まれるという。さらに11月には3100アイテムが105%値上げする話を受けていると述べ、「まさに経済安全保障上の大問題がいま起きている。モノ(後発品)が供給されないうえに全てのモノ(医療機器・診断薬品)の値段が上がっていく。データをもとに皆さんで議論して、次に何をしなければいけないのか。国民のためにもっとしっかり議論して、いろいろな策を練っていきたい」と強調した。