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財務省・財政審建議 毎年薬価改定「完全実施の早期実現」 調整幅は廃止を含めて見直しへ 2%は段階的縮小

公開日時 2022/05/26 04:52
財務省の財政制度等審議会(榊原定征会長)は5月25日、「歴史の転換点における財政運営」と題した建議を取りまとめ、鈴木俊一財務相宛てに提出した。毎年薬価改定については、「完全実施を早期に実現すべき」と主張した。毎年薬価改定は2021年度から導入されたが、平均乖離率(8%)の0.625倍に当たる乖離率5%超の品目が対象となった。財政審は、薬価制度抜本改革に向けた基本方針を踏まえた「価格乖離の大きな品目に限定」したため、対象品目が約7割にとどまったと指摘した。調整幅については、「可及的速やかに、廃止を含めて制度の在り方を見直し、少なくとも段階的縮小を実現すべき」と主張している。

◎毎年薬価改定 “薬剤費のワイズスペンディング”に不可欠

毎年薬価改定は2021年度から導入された。財政審は、「医薬品の取引価格(市場実勢価格)が下落しているにもかかわらず、保険からの償還価格が据え置かれれば、患者負担、保険料負担、公費負担がいたずらに高止まりする。市場実勢価格を適時に公定薬価に反映することが国民負担の抑制の観点から極めて重要」と説明。こうした取り組みは、「イノベーションの推進」に振り向けていく“薬剤費のワイズスペンディング”にも不可欠とした。

毎年薬価改定実施初年度に当たる、2021年度は、乖離率5%超、約7割の品目が改定の対象となった。財政審は、「結果として、改定対象品目数が約7割にとどまり、それまでの改定より狭くなった」と指摘した。算定ルールについては、既収載品目の算定ルールのうち、実勢価改定と連動しその影響を補正するもののみが適用されたことから、「長期収載品の薬価改定や新薬創出等加算の累積額の控除等が適用されなかった」と指摘。「毎年薬価改定が完全実施されたとは言えない」として、完全実施を求めた。21年度は、コロナ禍であり、特例的に対象範囲を決めた。23年度は中医協の場で、診療報酬改定のない年の薬価改定について、対象範囲をめぐる議論が焦点となりそうだ。

◎調整幅の一律2%水準が約 20年間固定 保険料負担・患者負担・公費負担をかさ上げ

「調整幅」については、昨年末の厚労相・財務相の大臣折衝で引き続き検討することが合意された。調整幅は1992年度から2000年度改定以前までは、実費保障の考え方で、「加重平均値一定価格幅方式」(R幅は15%から順次見直し、2000年度に5%まで削減)が取られ、2000年度改定では、「医療機関の平均的な購入価格の保障」という考え方に基づき、R幅に代わる一定幅として「薬剤流通の安定のため」の調整幅(2%)が設定され、現在までその考え方が維持されている。

財政審は、「医療機関の平均的な購入価格の保障という考え方や、流通安定のための調整比率という制度趣旨以上の説明がなされないまま、価格の高低を問わず全医薬品について一律に2%という水準が約 20 年間固定され ている。水準の合理的な根拠の説明もないままに、薬価改定の効果を目減りさせ、保険料負担・患者負担・公費負担をかさ上げしていることは、大きな問題と言わざるを得ない」として、“可及的速やかな”見直しを求めた。

◎マクロ経済スライド「関係者で建設的な議論を」 新薬収載による予見可能性低下を懸念

薬剤費については、既存の医薬品の薬価が下がっているにもかかわらず、薬剤費が伸びている理由として、新規医薬品の保険収載があると指摘。「新規医薬品の保険収載などが事前の予算統制の埒外となっていることは、財政の予見可能性が乏しいと言わざるを得ない」と問題意識を示した。

そのうえで、新時代戦略研究所(INES)の提案を引き合いに、薬剤費総額にマクロ経済スライドの導入を検討することも提案した。真にイノベーティブな新薬については一定期間薬価を維持することとしつつ、薬剤給付率の伸びが経済成長率超えた場合には、長期収載品や後発品などの薬価を引き下げることで経済成長率の範囲内に薬剤費の伸びをコントロールするというもの。財政審は、「こうした薬剤費総額に係る事前の財政規律の導入とその実効性を担保する具体的な仕組みづくりが実現しない場合には、市場拡大再算定をはじめとする現行の薬価改定ルールに基づく適正化の徹底を図っていくよりほかはない」として、「関係者において建設的な議論が進展することを期待したい」とした。

◎リフィル処方は「患者・国民目線から積極的活用を」 阻害する動きの把握を

2022年度診療報酬改定で導入されたリフィル処方箋については、「通院負担の軽減、利便性の向上といった患者のメリットが大きいのみならず、効率的で質の高い医療提供体制の整備にとっても画期的な前進」として、「患者・国民目線からその積極的活用が図られるべきことは明らか」と強調した。22年度診療報酬改定では、リフィル処方箋の導入・活用促進による効率化で0.10%の医療費抑制を見込むが、「医療費適正化効果を着実に達成すべきことは当然」とした。

医療現場では、医療機関としてリフィル処方を導入しない方針を掲げる医療機関や、患者の同意なく打ち消し線が入っている事例があることも指摘されるなかで、「患者の希望やニーズの充足を阻害する動きがないかといった運用面を含めたフォローアップ」の必要性を指摘した。また、制度の普及に向けて周知・広報をする必要性も強調した。あわせて、積極的な取組を行う保険者を各種インセンティブ措置により評価することも必要とした。

リフィル処方の導入で、薬局機能が発揮され、「患者本位の医薬分業が実現する転機となることが期待される」とした。薬剤師が服薬管理を担うことで、医師と薬剤師の連携・役割分化が深化するとともに、不必要な長期Do処方の見直しや多剤・重複投薬、残薬の解消につながる可能性がある。こうした薬剤師・薬局機能の発揮により、医療機関から近いという立地のみで薬局が選ばれることが減り、「必要に応じて受診勧奨を行ったりするなど、薬学的管理・指導を的確に行える薬剤師の専門性や様々な患者・住民のニーズに対応できる機能を発揮することを通じて患者に選択してもらう存在として飛躍を遂げる」ことに期待を寄せた。

◎医療費適正化計画の目標に地域フォーミュラリ、多剤・重複投薬の解消も

このほか、医療費適正化計画の目標として、後発医薬品の使用促進だけでなく、「地域フォーミュラリの策定、多剤・重複投薬の解消、長期Do処方かららリフィル処方への切替え、都道府県域における公立病院における費用構造の改善」などを盛り込むことも提案した。

◎かかりつけ医の法制化 要件の明確化を

かかりつけ医の制度化についても言及。コロナ禍で国民の医療への関心が高まるなかで、「今こそ、地域医療構想の実現を加速させ、かかりつけ医の制度化に取り組むことで、効率的な医療提供体制への改革と医療の質の両立を目指すべき」とした。具体的には、「地域の医師、医療機関等と協力している、休日や夜間も患者に対応できる体制を構築している、在宅医療を推進しているといったかかりつけ医機能の要件を法制上明確化すべき」とした。


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