日本製薬工業協会（製薬協）、米国研究製薬工業協会（PhRMA）、欧州製薬団体連合会(EFPIA)の日米欧製薬３団体は５月16日、革新的新薬を日本の患者に届ける「創薬イノベーションエコシステム」の構築を国家戦略に位置付けることなどを盛り込んだ共同提案を公表した。今夏の策定に向けて議論が佳境を迎えている政府の骨太方針や成長戦略を見据えたもの。

３団体の提案は、①革新的新薬を届けるための「創薬イノベーションエコシステム」構築を国家戦略に位置付けた上で推進、②官民の戦略的な対話の活性化と「医薬品産業ビジョン2021」の実現に向けたKPIの設定とその評価の推進、③日本市場への継続的な投資を促すための、研究開発や規制に関する環境の整備・見直し、④透明性・予見性がありイノベーションを促進する薬価制度と特許期間中の新薬の薬価水準を維持－が柱となっている。

業界団体は、国民が革新的な新薬・ワクチンにアクセスできる環境が必要として、日本市場の魅力と競合優位性を確保し、イノベーションを呼び込む研究開発投資を継続し発展させていくための施策を求めた。

◎革新的新薬創出の原動力　日本のライフサイエンスクラスターの形成を

創薬イノベーションエコシステムをめぐっては、製薬協の岡田安史会長（エーザイ代表執行役COO）が会長就任時から、①ライフサイエンスクラスター、②ビッグデータ基盤、③イノベーションを適切に評価する薬価制度構築―を核とする「ヘルスケア産業エコシステムを構築することが重要」と述べていた。オープンイノベーションの集積地とも言える、ライフサイエンスクラスターについては、製薬企業のほか、アカデミアやベンチャー、医療機関など様々なプレイヤーが参画する、いわばオープンイノベーションの集積地を指す。米国ではボストンやシリコンバレーなどがあり、革新的新薬創出の原動力となっている。岡田会長は、「国家安全保障の問題や、日本経済の成長を牽引することを考えたうえで、日本のなかにライフサイエンスクラスターを形成していくことは非常に重要だ」と述べていた。

なお、今夏の骨太方針策定に向けて議論が佳境を迎えており、諮問会議では民間議員が「創薬力の強化に向け、コロナ禍で遅れが明らかになった開発薬の実用化に要する治験・審査などの期間の短縮を目指し、税制・予算の支援や規制改革の推進を強化すべき」と提案している。

◎フェリシアーノPhRMA在日執行委員会委員長　官民連携のゴールに数値目標（KPI）求める

同日会見したPhRMAのジェームス・フェリシアーノPhRMA在日執行委員会委員長（アッヴィ合同会社社長）は同日会見し、「今後日本政府には、割合として、官民連携による共通のゴール、KPI、工程表を一刻も早く策定、包括的な健康医療戦略を維持し、定期的に進捗を評価することを期待する。経済安全保障の観点から医薬品産業の役割について、政府産業界の継続的な対話が極めて重要だ」と述べた。

目標やKPIについてはPhRMAの考えとして、①世界で販売される新薬の日本の利用割合を45％以上へ、②特許期間中の新薬を国際水準である一桁台の成長へ、②制度創設当初と同様に、特許期間中の新薬の80％を新薬創出等加算の対象に、③強靭な医療提供体制の確立のための医療資源の配分のメリハリ及び既存の枠組みを超えた国民的議論の展開－をあげた。