世界初の高血圧症治療アプリの承認了承 4月正式承認へ 「行動変容を促して治療効果を発揮」
公開日時 2022/03/10 04:52
CureAppの佐竹晃太社長は3月9日、厚労省内で記者会見し、世界初の高血圧症治療アプリ(一般的名称:高血圧症治療補助プログラム)がこの日の薬食審・プログラム医療機器調査会で承認が了承されたと報告した。同アプリは「成人の本態性高血圧症の治療補助」を使用目的とするもの。患者のスマートフォンにアプリをダウンロードし、医師の「処方」(処方コードの発行・入力)により使用する。アプリには日々測定する血圧値が自動入力されるほか、行動(運動)や食事などの情報は患者自身が入力。これにより個別化された指導メッセージや動画が毎日アプリに配信され、患者自身の行動変容を促し、生活習慣を改善することで降圧効果を発揮する。
正式承認は4月となる見通し。その後、同社は保険適用の手続きを進める。販売名は未定。
◎治療アプリでありながら「薬物療法とそん色ない有効性を示した」
呼吸器内科医でもある佐竹社長は、「薬は薬理作用で治療効果を発揮するのに対し、治療アプリは患者の行動変容を促して治療効果を発揮するもの」と説明。承認が了承された高血圧症治療アプリは降圧剤の服用の有無にかかわらず使用できることから、「スマホアプリを普段使っている高血圧症患者のすべてで治療アプリが使用できる。極めて広い適応で承認が了承された」と話した。
承認申請に用いた第3相臨床試験「HERB-DH1 pivotal study」では、本態性高血圧症で治療中の20歳以上65歳未満の男女399例を対象に、デジタル治療(介入)群と対照群にランダムに割付け、治療効果を比較した。主要評価項目に据えた、ABPMによる24時間収縮期血圧のベースラインから12週後の変化(主要評価項目)の群間差(調整平均)はマイナス2.4mmHg(デジタル治療群:マイナス4.9mmHg、対照群:マイナス2.5mmHg)で、有意な降圧効果を示した。
なお、厚労省の説明によると、この日の調査会では、ABPMでマイナス2.4mmHgの臨床的意義が論点のひとつになったことを明かしている。調査会の議論では、脳心血管イベントの発症リスクを約10%低下させることと関係するとの説明がなされ、委員の納得を得た。
佐竹社長は会見で、「治療アプリでありながら、薬物療法とそん色ない有効性を示した。薬物療法よりも安全性のリスクが少ないという面もあり、(治療アプリは)既存治療よりも優れた治療であると考える」とも語った。
◎減塩、減量、運動など6項目の情報を個別化 患者に行動変容を促す情報を毎日配信
高血圧症治療アプリは患者用と医師用で構成される。患者アプリは、▽知識の習得▽行動の実践▽行動の習慣化▽動機付け――の機能を有し、医師アプリは患者指導の補助に用いる。
患者の行動変容を促す指標として、▽減塩▽減量▽運動▽睡眠▽ストレス管理▽節酒――の6項目が用意されている。患者が日々入力するデータをアプリに埋め込んだ独自のアルゴリズムで解析し、降圧効果に関係する個別化された情報が患者アプリに毎日配信される。習慣化に必要な取り組みをアプリから提示することで、患者に行動変容を促し、適正な血圧を維持する仕掛けとなる。なお、血圧値は、市販のBluetooth対応の血圧計を用いることでアプリに自動転送される。
佐竹社長によると、例えば減塩が特に効果的と判定され、みそ汁を多く食べる患者に対しては、塩分と血圧に関するコンテンツとともに、みそ汁は具をメインに食べつつも、汁は一口飲んで終わりにする、といった内容が配信される。その実践結果も踏まえて、患者の習慣化により適した取り組みがアプリから提示される。
一方、医師アプリには、患者アプリで取得された情報が共有される。再診時の患者とのコミュニケーションが深まり、診療の質向上を期待する。
◎承認条件 1年ごとに市販後の有効性をPMDAに報告
高血圧症アプリの承認条件には、「承認後1年を経過するごとに、市販後の本品の有効性に関する情報を収集するとともに、本品の有効性が維持されていることを医薬品医療機器総合機構宛て報告すること」が付された。佐竹社長は、リアルワールドデータ(RWD)が日々収集される治療アプリならではの条件だと指摘。「RWDを重視したところが位置付けられた」と強調した。
厚労省は、患者へのメッセージ内容やユーザーインターフェースで年に数回の仕様変更が想定される一方で、「非常にリスクの低い変更」に対して毎回、治験を求めることは現実的ではないことから、「一定の範囲の軽微な仕様変更は、『軽微変更届』で認めることになった」とした。この日の調査会で、PMDAに1年ごとに有効性を報告するため、軽微変更届での運用が了承されたと説明した。