塩野義製薬・千葉大 「経鼻ワクチン」で共同研究部門設置 新型コロナや肺炎球菌に応用 22年臨床入り
公開日時 2022/02/14 04:49
塩野義製薬と千葉大学は2月10日、粘膜ワクチン共同研究部門設置に関する契約を締結したと発表した。4月に千葉大学に開発チームを立ち上げ、新型コロナウイルス、インフルエンザ、肺炎球菌を対象とした経鼻ワクチン開発に着手する。未来医療教育研究機構の清野宏特任教授が部門長を務め、千葉大から22人、塩野義製薬から複数名の研究者が参加。設置期間は5年間で、22年度内の臨床入りを目指す。塩野義製薬の手代木功社長は同日の記者会見で、「免疫研究に強みを持つ千葉大学との共同研究により、感染症予防に有効な粘膜免疫誘導ワクチンの創出を目指す」と強調した。
◎全身免疫に加えて粘膜免疫システムに直接作用 病原体の侵入をブロック
新型コロナウイルスなど呼吸器感染症を引き起こす病原体は鼻咽頭の粘膜から侵入し、肺炎など重篤な症状を発症する。感染予防に用いる注射型ワクチンは、全身免疫システムを想定したもので、重症化を防ぐことに優れるが、病原体の侵入を防ぐことは難しい。一方で、今回開発する「粘液ワクチン」は、全身免疫に作用するのに加えて、呼吸器の粘膜免疫システムに直接作用することから、病原体の侵入を防ぐことができる。すでにこれまでの研究会ら粘膜ワクチンの投与で、全身免疫に作用する抗原特異的血清 IgGに加えて、抗原特異的分泌型IgAを産生することが分かっており、呼吸器の粘膜免疫システムと全身免疫の両方に効果を発現することが分かってきた。
◎清野宏特任教授「投与が簡便。精神的不安と疼痛を軽減できる」
記者会見に臨んだ千葉大学未来医療教育研究機構の清野宏特任教授は、「注射ワクチンと異なり、直接鼻腔にワクチンを噴霧することで、投与が簡便になる。精神的不安と疼痛を軽減できる」とのメリットを訴求。噴霧器を使って自分で接種できるため、医療従事者の確保が不要になると強調した。また、開発に際しては効果的で安全な経鼻ワクチンデリバリーシステムの開発を進める必要性を示した。デリバリーシステムについては、「カチオン化ナノゲル」を用いる考え。カチオン化ナノゲル内にワクチン抗原を封入して投与する動物実験の結果を示し、抗原特異的血清IgG抗体と呼吸器IgA抗体を誘導することができるとした。
◎塩野義製薬・手代木社長 「ワクチンモノづくりで選ばれる企業」を目指す
塩野義製薬の手代木社長は、COVID-19ワクチンで培ったノウハウや外部連携を活かした経鼻ワクチンへの展開に期待感を表明。感染予防能やウイルスに対する広域性の獲得、利便性向上につとめ、「ワクチンモノづくりで選ばれる企業」を目指す考えを明らかにした。