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流改懇 メーカーの仕切価率0.3ポイント上昇 流通当事者から仕切価の適正水準を求める声相次ぐ

公開日時 2021/12/23 04:53
厚労省の「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(流改懇)」が12月22日に開かれ、製薬企業の仕切価設定について、流通当事者から批判や苦言が相次いだ。2021年度から毎年薬価改定が導入されるなかで、企業の仕切価率が0.3ポイント上昇していることが明らかになった。こうした実態に「仕切価基準の価格交渉になってしまう」(原靖明委員・日本保険薬局協会流通問題検討委員会委員)との指摘もあがり、改めて“市場実勢価格を踏まえた仕切価”の適正水準を求める声が流通当事者の大半からあがった。土屋直和委員(日本製薬工業協会流通適正化委員会委員長)は、「市場実勢価格を踏まえて、仕切価を設定する必要がある」と認め、メーカーとしても流通改善に取り組む姿勢をみせた。

◎仕切価率、納入価率ともに上昇 一次売差マイナスは若干縮小

この日の流改懇で厚労省は、21年度上期の仕切価率が95.4%と20年度より0.3ポイント上昇したことを報告。納入価率は92.0%と20年度より0.6ポイント上昇し、一次売差マイナスは20年度より若干縮小したとのデータを示した。なお、妥結率は94.1%(21年9月時点)だった。厚労省医政局の浅見圭介主席流通指導官・流通指導室長は、「2019年度以降、メーカーが割戻しの運用基準や価格の見直しをいただいているが、結果としてどちらの水準も下がっていない」と指摘した。11月に施行された改訂流通改善ガイドラインでは、川下取引の市場実勢価水準を踏まえた、「適切な一次仕切価の提示に基づく適切な最終原価を設定する」とされているが、実現には至っていない。

◎卸連・折本委員「仕切価率は下がっていない」一次売差マイナス解消に向けて仕切価の変更を


折本健次委員(日本医薬品卸売業連合会理事)は、「これまでの推移を比較しても全体として仕切価率は下がっていない」と指摘。「医薬品の構成変化を踏まえ、卸機能の適正な評価を仕切価や割戻しに反映していただきたい」、「一次売差マイナスの解消に向け、市場実勢価格を踏まえた仕切価の変更をお願いしたい」と訴えた。

◎製薬協・土屋委員 特許品は長期収載品に比べて仕切価率が高くなる傾向に


これに対し、土屋委員(製薬協)は、長期収載品が減少し、特許品が増加しているという医薬品市場の構造変化が影響しているとの見方を表明。「特許品は後発品が存在しないため、同一成分薬剤がなく、長期収載品と比べ一般的に仕切価率が高い傾向にあると推察される」と述べた。また、9割の製品が薬価改定の率と同率で仕切価を引き下げているとしたうえで、「度重なる薬価制度改革で仕切価が製造・販売管理にかかわるコストを下回ることなどを回避するため、仕切価は引き下げているが、仕切価率が上昇するケースがある」と理解を求めた。なお、製薬協が提出した資料によると、21年4月時点で仕切価水準を引き上げたのは新薬創出等加算品で8.1%(20年4月は、3.5%)、特許品は12.2%(同・4.5%)で引き上げ品目は増加傾向にある。

前回の流改懇で、土屋委員は、仕切価率上昇の一因として、スペシャリティ医薬品の増加をあげており、定義や具体的な製品を示すことを流通当事者から求められていた(関連記事)。しかし、この日の会議で定義や具体的な品目については見解を示さず、「民間調査会社の定義を参考に団体内で検討を進めてきたが、業界団体としてスペシャリティ医薬品を線引きすることは市場における取引に影響を及ぼすことが想定され、なかなか難しいと判断した」と述べた。

◎日医・宮川委員「相変わらず具体性が乏しい」 卸連・眞鍋委員「ゼロ回答だということが分かった」

医薬品卸からは、「前提としては単品単価交渉だと承知しているが、製品特性がはっきりしたものから定義し、交渉していくことが必要だ」(長谷川卓郎委員・卸連)などの声があがった。宮川政昭委員(日本医師会常任理事)は、「川上がどれだけ、流通を改善する気があるのか、相変わらず具体性が乏しい。具体策をある程度踏み込んでいただかないと、川下はいつも翻弄される。自ら定義していくところから始めないと、議論は未来永劫できない」と述べた。土屋委員は、「川上の問題だけでなく、川下も含めて流通当事者と検討する必要があるのではないか。川上が川下に影響する部分もあるので、引き続き議論が必要だ」と説明。宮川委員は、「自らおっしゃったので、そこだけでもいいので、流れを見せてほしい」と釘を刺した。

医薬品卸からも厳しい指摘が相次いだ。眞鍋雅信委員(日本医薬品卸売業連合会理事)は、スペシャリティ医薬品について「きょう、ゼロ回答だということが分かった」とバッサリ切り捨てた。

◎土屋委員「特許品は長期収載品に比べて競争環境に陥っていない」 高仕切価は医薬品の価値?

日本の薬価制度は市場実勢価格主義が貫かれており、市場実勢価格が医薬品の価値を反映しているとされている。眞鍋委員は、特許品の仕切価率が長期収載品に比べて高い理由を土屋委員に質した。土屋委員は、「一般論として、特許品は長期収載品に比べて競争環境に陥っていないので、比較的仕切価率が高いのだろうと推察した。単品に価値があるので、個々のメーカーが設定している部分だと思う」との見解を表明。これに対し、眞鍋委員は、「競合品が出てくれば、仕切価率が下がるということと理解した。これが価値に見合った価格とどう整合するのか」と指摘した。土屋委員は、「一般論として申し上げた」と断ったうえで、「薬価基準制度という観点から、最終的なゴールは全品の単品単価交渉を進めていただきたいが、途中の段階では色々な切り口はあるのだろう」と述べるにとどめた。

◎NPhA・原委員「市場実勢価格は、市場の声」 日医・宮川委員「患者が医薬品の価値を決める」

川下からも同様の指摘が相次いだ。原委員(NPhA)は、市場実勢価が引き下がり乖離率が拡大するなかで、仕切価を引き上げるというデータが示されるなかで、「いまの乖離があるということを蔑ろにしてしまっている」と指摘。医薬品の価値は現場の医師が有効性、薬剤師が副作用の観点などから判断しているとして、「市場実勢価格は、市場の声だ。医師や薬剤師がこういう価値を認めているんだということを念頭に、仕切価の設定していただきたい」と注文を付けた。宮川委員(日医)は、患者が医薬品の価値を決めると強調し、川上から考えを是正することを求めた。

◎仕切価率0.3%上昇 卸連・眞鍋委員「営業利益率が1%に満たない卸にとって死活問題」

土屋委員が仕切価率の0.3%上昇を“若干”と発言したことにも、その姿勢を問う厳しい声が流通当事者から相次いだ。卸連の眞鍋委員は、「営業利益率が1%に満たない医薬品卸にとっては死活問題だ。ぜひ特許品、長期収載品、後発品の対薬価の仕切化率の推移を分類別にお示しいただきたい」と求めた。これに対し、土屋委員は検討する姿勢を示しながらも、「団体として調査するのは難しい面もあるかもしれない」と述べるにとどめた。

卸連の折本委員も、医薬品卸の利益率を引き合いに、「0.3を若干と言われると大変ツライ」と指摘。品目が多いなかで毎年薬価改定が導入されるなかで、「薬創出等加算のなかのスペシャリティをわけてみて、仕切価はどういう変動をしているのか。長期収載品は、後発品は、という議論の叩き台がそもそもないと、忙しい中で事務方の交渉の中で総価交渉というものも一気にできるものではない」と述べた。

小山信彌委員(日本私立医科大学協会参与)は医療経済実態調査の結果から医療機関経営が補助金を加えても、損益差額が0.4%であることを引き合いに、「0.3%くらいと言われたのはすごく違和感を覚える」と指摘。医療機関経営が厳しさを増すなかで、「単品単価をすると値引き率が悪くなってしまうのは見えている」として、総価取引を選択する医療機関の姿勢を述べた。眞鍋委員も小山委員に同意し、「きょう判明したのは、スペシャリティ医薬品の定義などない。あいまいな分類に踊らされて、スペシャリティ医薬品だから仕切価率が高いという、これまた不思議な理屈に我々も踊らされていた。一緒にこの状況については改善していきたい」と述べた。

◎単品総価 大病院は半数以上、チェーン薬局で8割占める

日本の薬価制度が市場実勢価格主義とされるなかで、改訂流通改善ガイドラインにも、「価格交渉の段階から個々の医薬品を踏まえた単品単価交渉を行うことが基本」と明記されている。この日の流改懇では、医薬品卸35社を対象とした実態調査が提示された。200床以上の病院では、「単品単価取引」が44.7%。「単品総価取引・総価交渉(28.7%)」、「単品総価取引・除外ありの総価交渉(24.3%)」で単品総価が半数を占めた。一方、20店舗以上のチェーン薬局では、「単品単価取引」が20.9%。「単品総価取引・総価交渉(36.2%)」、「単品総価取引・除外ありの総価交渉(42.0%)」で単品総価が8割だった。単品単価交渉が困難な理由としては、「購入側が総価での交渉にしか応じないため」がトップ。「1品目ずつの単価を設定するのに労力がかかるため」などがあがった。

このほか、複数の卸が価格交渉の代行業者との交渉を理由にあげており、「取引先ごとに返品率・配送回数・規模・配送距離等取引条件に違いがあるにもかかわらず、同一価格での取引にさせられる。価格の交渉も取引先ごとの取引条件やコストを加味しない代行業者独自のベンチマークで交渉される」などの声があがった。

◎厚労省・安藤課長 流通改善ガイドラインの実効性あげる取り組みでWG立ち上げへ

厚労省医政局経済課の安藤公一課長は、「現行の薬価基準を踏まえれば、単品単価の中で交渉が行われて契約が行われるのは目指すべき方向性として崩せない。ただ、それに向かってどう進めるかという途中経過の中では、今のように単にガイドラインに記載すればそれでいいということではなく、流通改善ガイドラインの実効性をあげるための様々な検討を進めていかないといけない」との見解を表明。早ければ年明けにも、流通の課題を整理し、実務者レベルで具体策を検討するワーキンググループを新たに立ち上げる考えを示した。



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