小野薬品と京大 「小野薬品・本庶 記念研究基金」設立発表 230億円は若手研究者の雇用・研究資金に
公開日時 2021/12/14 04:52
小野薬品の相良暁社長と京都大学の湊長博総長は12月13日、京大構内で記者会見し、「小野薬品・本庶 記念研究基金」を設立したと発表した。がん免疫治療薬・オプジーボの特許使用料などをめぐり、本庶佑氏と小野薬品が争っていた裁判で、11月12日の和解成立時に小野薬品から京大側に総額230億円の寄附を行うことが本庶氏との間で合意されていた。小野薬品の相良社長は、「(基金設立により)優秀な和解研究者の皆様が精いっぱい研究できる環境が整うことになった結果、我が国の医学・薬学研究がさらに発展するようにと期待している」と述べた。
◎小野薬品 助成対象の研究に関する選考などに関与しない
同寄附金は、京都大学特別教授でノーベル医学・生理学賞受賞者の本庶佑氏が小野薬品に対し、特許使用料収入の分配金約262億円の支払いを求めた訴訟の和解が成立し、同社が支払うことになった計280億円の一部を活用したもの。生命科学分野の若手研究者を対象に、雇用・研究資金を助成することで、優秀な研究者の育成を図る。寄附金の運用はすべて大学側が担うことになり、小野薬品は助成対象の研究に関する選考などにも関与しない。
◎湊総長 「長期的な視点から最大限有効活用させていただく」
湊総長は寄附金の運用について、日本の研究力低下の原因の1つに博士研究員のキャリアパスの問題があると指摘。「博士研究員がきちんと研究を続けられるように、生活面と研究面双方の支援をするような内容を考えている」と述べた。そのうえで、「我が国の国際的な存在感、競争力低下が叫ばれる中、世界に信頼される科学技術立国としての原動力は、新しい研究に果敢に挑戦する意欲的な若い人材である」と強調。基金について、「将来の学術研究の推進を担う優秀な若手研究者の育成と研究環境の実現をしていくために、長期的な視点から最大限有効活用させていただく」と述べた。具体的な仕組みなどの議論はこれから学内で行っていくという。
◎今後の産学連携で相良社長 「大きな成功した場合はアカデミアに還元もいいこと」
今回の裁判は産学連携のあり方を問う異例なものとなった。相良社長は会見で、「今回の事例をもって全体的な話はしにくい」と断りながらも、「予想より大きな成功をおさめることができた場合、アカデミアに還元をということがいいのではないか」と述べた。湊総長も、「大学は裁判の当事者ではない」と強調したうえで、「結果として大きな成果になった場合、企業側から一部を還元という形で利益の一部をいれていただくという一般則があってもいいのではないか」と指摘。「今回の(基金のような)かたちは初めてのケースだと思うが、このかたちが1つの産学連携の成功例として認知され、広まっていくとありがたい」と投げかけた。