日医・中川会長 22年度診療報酬改定「躊躇なくプラス改定だ」 医療関連41団体が改定財源確保を決議
公開日時 2021/11/10 04:52
日本医師会など医療関連41団体で構成する国民医療推進協議会は11月9日、新型コロナ対策における有事とそれ以外の平時の医療提供体制を車の両輪として維持し、適切な財源の確保を求める決議文を採択した。政府の2022年度予算案編成に向け、医療団体が最も重視する次期診療報酬本体のプラス改定財源の確保を視野に入れる。国民医療推進協議会終了後の記者会見で、中川俊男会長(日本医師会会長)は、「躊躇なくプラス改定だ」と語気を強めた。
2022年度診療報酬改定に向け、医療関係団体の戦いの火ぶたが切られた。日本医師会など医療関係団体は、先の衆院総選挙で、与党議員の絶対安定多数の議席確保を全国の小選挙区で支援した。結果は与党が安定多数の議席を確保する。この結果を追い風に、2022年度政府予算編成に向けて、最大の焦点である次期診療報酬改定の本体プラス改定を目指し、年末に向けて政府・与党との調整に臨む。
これに先んじて11月8日の財政制度等審議会に財務省主計局は、次期診療報酬改定について、「診療報酬(本体)のマイナス改定を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない」、「躊躇なくマイナス改定」と先手を打つ。まさに改定財源をめぐる議論の号砲が鳴り響いた格好だ。これに医療関係41団体が早々に立ち上がった。国民医療推進協議会はこの日採択した決議文で、新型コロナ対策における有事と、それ以外の平時の医療提供体制の維持の必要性を強調。中川会長も協議会後の記者会見で、「躊躇なくプラス改定だ」と対峙する姿勢を露わにした。次期診療報酬に向けた議論は厚労省の中医協を舞台に、年末に向けて議論が加速する。
◎中川会長 岸田首相のコロナ対策に「医療界も一致団結して協力して参りたい」
国民医療推進協議会の冒頭で中川会長は、先の衆院総選挙で与党の議席数が絶対安定多数を確保できたことに触れ、「今後も安定的な政権運営を行っていくと期待している」と表明。岸田首相が打ち出したコロナ対策“岸田4本柱”として掲げる、①医療難民ゼロ、②ステイホーム可能な経済対策、③電子ワクチン接種証明(ワクチンパスポート)活用・検査の無料化拡充、④感染症有事対応の抜本的強化-に、「医療界も一致団結して協力して参りたい」と述べた。患者数減を踏まえ、「新規感染者数は減少しているものの、徹底的な感染症対策が必要だ」と訴えた。
◎コロナ禍の有事・平時は車の両輪「何としても維持しなくてはならない」
決議文では、コロナ禍において今後も緊張感を持った徹底的な感染防止対策の必要性を指摘。「国民の生命と健康を守るため、新型コロナウイルス感染症対策における有事の医療提供体制と、新型コロナウイルス感染症対策以外の平時の医療提供体制は、車の両輪として何としても維持しなくてはならない」として、「適切な財源を確保するよう、本協議会の総意として強く要望する」としている。
◎次期診療報酬改定で中川会長「マイナス改定とすることは到底あり得えず」
総会後の会見で、中川会長はコロナ禍で、「地域の医療提供体制は依然として厳しい状況にさらされている。マイナス改定とすることは到底あり得えず、我々としては当然プラス改定にすべきと考えている」と強調した。
財務省が9日の財政審に補助金を含む医療機関の収入動向を試算した結果を提示。2021年度については、前年度繰り越し分も含め予算されている補助金収入を足した計数は47腸炎程度として、「医療機関の経営実態は近年になく好調」としている。中川会長は、「逆に言えば、補助金がなければ赤字ということだ」と指摘。「平時の余力がすなわち有事の対応力に直結する。有事になってから慌てて補助金を投入しても即応できるものではない」との考えを示した。そのうえで、「補助金頼みの経営は非常に不安定だ。本来、診療報酬のみで経営が成り立つようにしなくてはならない。こうした観点からもプラス改定が必要だ」と強調した。