ＫＭバイオロジクスの永里敏秋社長は10月25日の記者会見で、同社の新型コロナウイルス感染症の不活化ワクチン「KD-414」の「追加接種」（ブースター接種）ついて、条件付き早期承認を視野に2022年春から夏の申請を目指して関係当局と協議に臨む考えを表明した。当初計画を1年前倒しするもの。18歳以上の健康成人2000人を対象とした第2/３相臨床試験が先週22日からスタートしたほか、年内にワクチン接種の3回目を想定した「追加接種試験」を開始する。すでにKD-414は、第1/２相臨床試験で安全性と高い中和抗体陽転率および中和抗体価の増加が認められた。永里社長は、「これらの試験で安全性が担保できれば、追加接種だけでも申請ができないかというのが我々の考えだ」と述べた。

同社が開発する不活化ワクチン「KD-414」は、３用量群（H群、M群、L群）で行った第1/２相臨床試験で、死亡・重篤な副反応、接種を中止せざるを得ない副反応の発現はなく、健康成人および高齢者での忍容性が確認されている。特に、m-RNAワクチンでみられるような日常生活に支障のある重度（Grede３）以上の副反応はH群での回復性の発熱1例のみだった。一方で有効性に関しては、用量依存で中和抗体陽転率および中和抗体価の増加が認められている。特に、若い年代（20歳以上40歳未満）での中和抗体陽転率は100％だった。

◎22日から国内成人2000例対象の第2/３相臨床試験スタート

こうした試験結果を踏まえ、同社は実用化に向けた開発を進めている。国内成人2000例を対象とした第2/３相臨床試験が先週から始まっているほか、22年春には実薬対照の第3相試験を海外で実施する。さらに「国内小児試験」も準備に入っており、「先行する第2/３相臨床試験の結果を見ながらスタートを切りたい」（永里社長）との考えだ。また、3回目の接種を想定した「追加接種試験」についても、すでに2回のワクチン接種を終えた成人を対象に近くスタートさせる方針を示している。

申請時期に関しては、海外で実施する実薬対照試験は「少なくとも1年はかかる」として通常承認時の目標を2023年に設定していた。ただ、この日の記者会見で永里社長は「追加接種」について、「試験は日本国民が対象となるので、試験自体はあっという間に終わる」と指摘。「並行して実施している第2/３相臨床試験で中和抗体価も見えてくる。これらの試験で安全性が担保できれば、追加接種だけでも申請ができないか」と期待感を表明した。

◎国内小児試験は22年の早い時期にスタートしたい

一方で小児への接種については、「いくら安全性が高いとは言え、第2/３相臨床試験での安全性の結果を見ながら22年の早い時期に試験をスタートしたい。これも国内で臨床試験ができるので、順次申請できれば早く承認が取りたいと考えている」と述べた。このほか生産体制にも触れ、21年度内に原薬生産体制が整い、実生産検証から供給段階へ移行できると述べた。

◎永里社長　国民の声に耳を傾け「なんとか安全性の高いワクチンを早く世に出したい」

永里社長は会見で、「子供に打つワクチンが無いとか、成人の方でも強度のアレルギーがあったり、身体がどうしても弱くm-RNAワクチンを接種するのが怖いなどの声を耳にすることがある。それを聞くたびに、なんとか安全性の高いワクチンを早く世に出すことはできないのかと考えている」と強調。あくまで関係当局との話し合いで、スケジュールについては希望的観測もある」と述べながらも、同社が培ったこれまでの技術やノウハウを活かしながら、「国産」で安全で有効なワクチンの早期供給を実現する意義は大きいと訴えた。

◎Meiji Seikaファルマ・小林社長「一つ一つの課題をクリアしていくのが我々の使命」

Meiji Seikaファルマの小林大吉郎社長は会見で、先週スタートした第2/３相臨床試験において「いかに症例を集めるかが第一関門だ」と強調した。また、「アレルギーでワクチンが接種できないとか、２回目の接種を躊躇するなどの意見がかなり多いと理解している。国産ワクチンが始まれば治験に参加したいとの声も少なからずある。是非、この声を受け止めて、一つ一つの課題をクリアしていくのが我々の使命だと思う」と早期の実用化に意欲を示した。