Meiji Seika・小林社長 コスタイベ2価ワクチンで主要評価項目達成 変異株によらず「再現できる」
公開日時 2024/03/21 04:51
Meiji Seika ファルマの小林大吉郎代表取締役社長は3月19日、新型コロナに対する次世代mRNAワクチン「コスタイベ筋注用」の2価ワクチン(起源株/オミクロン株BA.4-5、開発コード:ARCT-2301)の国内第3相臨床試験で主要評価項目を達成したことを受けて記者会見を開いた。小林社長は、「今回の試験結果により、コスタイベの高い有効性と安全性をどのような変異株でも工業的に再現できる、同じ性能のワクチンが作れるということがほぼ証明された」と強調。今後はその時々の流行株に対応したコスタイベを、臨床試験を行うことなく開発・一変申請でき、迅速なワクチン供給が実現できるとの認識を示した。
コスタイベは起源株を用いた1価ワクチンとして2023年11月に承認された。ただ、当時はオミクロン株XBB系統が流行していたためコスタイベは供給しなかった。一方で、将来の流行株に対応するコスタイベを臨床試験を行うことなく開発し、製造可能とする一変承認を取得できるようにするため、当局と相談の上、コスタイベの2価ワクチンにて1価ワクチン(起源株)で示された免疫原性や安全性を再現できるかの国内第3相試験を実施した。今回その中間解析結果を公表した。
小林社長は中間解析結果を受けて、「コスタイベ筋注用はCOVID-19の新たな変異株が出現し、ウイルス株が変更されても、起源株の試験で示された高い免疫原性及び安全性が再現できることが確認された」と説明。その上で、「これをもって当社は、コスタイベ筋注用のプラットフォームが確立できたと考え、今後速やかに厚労省やPMDA等と協議・相談しながら、必要な薬事手続きを経て、2024年度の秋冬接種に向け、新規変異株に対応するワクチンの実用化を目指す」と述べた。
Meiji Seika ファルマはこれまでに、政府の補助金などを得て、国内にコスタイベの原薬・製剤の一気通貫生産体制をmRNA医薬品・ワクチンの受託開発製造事業(CDMO事業)を行うアルカリス社と構築済み。小林社長は、今回の再現に係る試験に成功したことで、コスタイベを迅速に国内供給できるプラットフォームが確立できたとの認識を示した格好だ。同社は今後、今回の中間解析結果を厚労省やPMDAに提出する。
◎株選定から2カ月程度で一変申請可能
Meiji Seika ファルマは、変異株の流行状況を見ながら株を複数選定し、製造準備も進めている。この準備もあって、今後WHOから24年秋冬の推奨ワクチン(株選定)が公表された場合、コスタイベの“2024推奨株ワクチン”を「株選定から2カ月程度で一変申請できる」(同社広報部)という。24年秋冬接種用のコスタイベは400万人分を国内製造・供給する計画で、10月出荷に向け対応中だとしている。
新型コロナのワクチン接種は4月以降、定期接種で行われ、自己負担額は最大約7000円になる予定。定期接種の対象者は65歳以上と、60~64歳の重症化リスクがある人となる。新型コロナワクチンの必要性を指摘する声もあることについて小林社長は、新型コロナのワクチン接種に慎重な意見がある人からも、高齢者や重症化リスクがある人へのワクチン接種は有益との見方が示されていると指摘。その上で、「(コスタイベは)感染防止と重症化防止に非常に意味がある。ワクチン接種の基盤をしっかり我が国に作ることに汗をかきたい」と話した。
◎コスタイベ2価ワクチン 中和抗体価のGMT及びSRRでコミナティに対する非劣勢を検証
Meiji Seika ファルマの黒沢亨研究開発本部長はこの日、コスタイベの2価ワクチン(以下、ARCT-2301)を用いた国内第3相試験の中間解析結果を説明した。本試験は、既承認mRNAワクチンが3~5回接種され、最終接種から3カ月以上経過した18歳以上の被験者に、ARCT-2301を1回筋肉内接種した際のコミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)に対する免疫原性の非劣性を検証し、1回追加接種した際の安全性を評価したもの。被験者数は927人で、ARCT-2301群463人、コミナティ群464人。
主要評価項目である接種28日後のオミクロン株BA.4-5に対する中和抗体価の幾何平均値(GMT)は、ARCT-2301が6489.4、コミナティが4357.5で、中和抗体価はARCT-2301がコミナティに対し1.49倍、有意に高かった。同じく主要評価項目の中和抗体応答率(SRR)はARCT-2301が62.8%、コミナティが55.6%で、SRRの差は7.2%となり、ARCT-2301のコミナティに対する非劣勢が検証された。副次評価としてオミクロン株BA.4-5及び起源株に対する優越性も検証された。
安全性に関しては、全ての有害事象の発現割合はARCT-2301とコミナティで同程度だった。発熱などの特定有害事象の発現までの日数及び継続日数もコミナティと大きな違いはなかった。29日までに死亡、死亡を除く重篤な有害事象、注目すべき有害事象(心筋炎・心膜炎)は認められなかった。
◎黒沢研究開発本部長 「ARCTプラットフォーム確立に必須な臨床データの取得を完了」
黒沢研究開発本部長は、この試験結果を受けて、「コスタイベ筋注用は抗原成分を変更しても、コミナティより高い免疫原性を示し、また製剤間の安全性プロファイルは極めて類似していたことが再現された」と説明。「ARCTプラットフォーム確立に必須な臨床データの取得を完了した」と述べた。