米メルク 経口新型コロナ治療薬候補molnupiravir 第3相臨床試験の中間解析で入院・死亡リスク低減 米FDAにEUA申請へ
公開日時 2021/10/04 04:52
米メルク(MSD)は10月1日、経口新型コロナ治療薬候補molnupiravir第3相臨床試験の中間解析の結果、外来で軽症から中等症の新型コロナ患者に対して、プラセボに比べ、入院や死亡のリスクを約50%低下させたと発表した。この結果を踏まえ、独立データモニタリング委員会は試験の早期中止を勧告した。同社は、米FDAに対し、緊急使用許可(EUA)の提出を急ぐ考え。試験はグローバルで実施されており、日本も含まれている。
Molnupiravirは、米メルクがバイオベンチャーRidgeback Biotherapeuticsと共同で開発を進めるポリメラーゼ阻害薬。第3相臨床試験「MOVe-OUT」は、国際共同プラセボ対照ランダム化二重盲検多施設共同試験。日本の3施設を含む、世界約170施設で実施した。発症から5日以内で、入院していない、軽症から中等症の新型コロナ患者で、転帰不良のリスク因子(肥満、高齢、糖尿病や心臓病の合併)を1つ以上有している人を対象に、molnupiravirの有効性などを検証した。主要評価項目は、投与開始29日後の入院+死亡の発生率、7か月後までの有害事象の発生率、6日目までの有害事象による投与中止率。
◎29日後の入院+死亡率は約50%抑制 有害事象に大きな差認められず
1550例を対象とする計画で、事前に計画されていた中間解析は、8月5日以前に登録された775例を対象に実施された。その結果、主要評価項目の29日後の入院+死亡の発生率は、プラセボ群で14.1%(53例/377例)だったのに対し、molnupiravir群では7.3%(28例/385例)とmolnupiravir群で有意に低率だった(p = 0.0012)。死亡例はプラセボ群で8例報告されたが、molnupiravir群では報告されなかった。発症のタイミングやリスク因子など、サブグループ解析でも一貫した結果を示したとしている。このほか、デルタ株など変異株でも一貫した有効性を示したとしている。有害事象は、プラセボ群40%、molnupiravir群で35%。副作用はプラセボ群11%、molnupiravir群12%だった。有害事象による投与中止はプラセボ群3.4%、molnupiravir群1.3%だった。
同社は年末までに1000万クールを製造する計画。今年初めに、米国政府と1クール当たり700ドル(約7万8000円)で、170万クールを供給する契約を結んでいる。同社は供給や購入契約を世界中の政府と締結しており、現在他の政府と協議中としている。また、ジェネリックメーカーと非独占的ライセンス契約を締結しており、低中所得国での治療アクセス確保にも力を入れる考え。
メルクのロバート・M・デイビスCEOは、「molnupiravirはパンデミックと戦うための世界的な取り組みの一環として重要な医薬品となり、最も必要なときに感染症の突破口を開くというメルク独自の遺産に加わる」と自信をみせた。そのうえで、引き続き規制当局と協力し、「molnupiravirをできるだけ早く患者に届けるためにできる限りのことを行う」と意欲を示した。Ridgeback BiotherapeuticsのWendy Holman,CEOは、「新型コロナ患者の入院を避けるためには、自宅で投与できる経口抗ウイルス薬が非常に重要だ」としたうえで、同剤がパンデミックの抑制に果たす意義を強調した。