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厚労省・紀平薬剤管理官 薬剤師は「国民の健康な生活支える」存在として価値発揮を アウトカム評価にも言及

公開日時 2021/09/27 04:53
厚生労働省保険局医療課の紀平哲也薬剤管理官は9月26日、薬局団体連絡協議会主催のシンポジウムで講演し、薬剤師が「国民の健康な生活を支える」存在として地域で価値を認められることが重要だと強調した。調剤報酬については、「アウトカムとして患者さんがどうだったかを皆が知りたがっている。薬剤師の価値を見せていくための一つ大事なことだ」との考えを表明。「(対人業務の評価である)薬学管理料が算定された結果、薬物療法の質をあげていくこと自体ができていますか、ということが薬剤師に問われていることだ」と語った。

◎地域包括ケアシステムのなかで「求められる薬剤師の役割を考え直す」 求められる質


超高齢社会に突入し、患者の大半が高齢者になるなかで、「現役世代の病気を治していくのがメーンだった時代から、高齢者を支える医療が医療の中心になっていく」と述べた。こうしたなかで、地域包括ケアシステムの構築を急ぐなかで、薬剤師の担う役割も、「ここ十数年医薬分業の推進で薬剤師が担ってきた役割とはおそらく違うところにある。いま求められている薬剤師の役割を考え直す時期にある」と述べ、現状の延長線にない、薬剤師の“再定義”の必要性を指摘した。

医薬分業の流れのなかで、処方箋枚数獲得に重きが置かれ、薬局の店舗数も増加をたどってきたが、一薬局当たりの処方箋枚数が頭打ちになっているとのデータも示しながら、「薬局の数を増やすという時代ではなく、質が求められている状況になっているということが数字から見て取れる」と強調した。

◎地域連携薬局など認定制度スタートで「薬局の差別化を考える時期に来た」

薬局機能については調剤報酬上で、「薬局経営の効率性」と「一定の機能を有する薬局」の2軸により調剤基本料で評価されていると説明した。効率性については、処方箋集中率と処方箋回数、一定の機能を有する薬局の評価として地域支援体制加算をあげた。

そのうえで、改正薬機法の施行を受け、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局など、特定の機能を有する薬局の認定制度がスタートしたことを説明。「こういったものを調剤報酬でどう受け止めていくかがこれからの課題。薬局として考えれば、調剤報酬に加え認定薬局という役割が明示されたことをもあり、今後目指す方向性としては薬局の差別化、それぞれの薬局がどういう薬局であるべきか考える時期に来た」との考えを示した。さらに、「具体的には個々の薬局がそれぞれの立地やターゲットとした住民、患者をメーンターゲットとし、その方たちにどのような価値を提供していくのかを改めて考える時期に来た」と続けた。

◎変えなければいけないのは「薬剤師の意識」

一方、薬剤師については、薬剤師法第1条を引き合いに、「国民の健康な生活を確保」することが目的だと説明。調剤は目的ではなく手段との考えを示し、「調剤は手段で、調剤をした結果としてどういうメリットを提供できるのか。ここを一番考えないといけない」と強調した。

厚労省は、患者のための薬局ビジョンや調剤報酬改定で“対物業務”から“対人業務へ”の流れを強く推し進めているが、「ここで変えないといけないのは薬剤師の仕事の中身ではなく薬剤師の意識ではないか」と述べた。服薬指導についても添付文書の情報をただ機械的に伝えるのでは、「対人業務とは決して言えない。対物業務の延長ではないか」と指摘した。一方で、調剤業務について、「お薬を調整する段階でも単に袋詰めするのではなく、患者さんの状態を確認し、それぞれの患者さんに応じた調整の仕方が求められているとしたときに、調剤という業務自体は対物業務ではなく、個々の患者さんに応じた対人業務という見方もできるのではないか」と述べた。

改正薬機法では、患者の服用後のフォローアップが義務化された。紀平薬剤管理官は後発品の供給不安について触れ、「結局大事なのは渡したあと。いままでの薬と変えてどうなりましたか、というのをフォローされているのか、と素朴に思う。これまでと違うものを渡されて患者さん不安に思うかもしれないというときに、そこで一声かけられるかどうかで、薬局に対する信頼度、大事さが患者さんに伝わるかどうかというところも一つあるのでは」と述べた。さらに、「薬を渡すという行為は決して処方箋に従って渡すということが仕事だというモノではなく、患者さんが口にするものを渡すということはその責任を薬剤師が持つということ。渡した後、きちんと薬物治療がされてどうなっているかということを支えていくというのが薬剤師の責任として行うべきものではないか」と続けた。

オンライン資格確認や電子処方箋の導入で、患者情報を把握する環境が整うなかで、服薬情報の一元的に把握するだけでなく、「情報をもとに薬学的管理や指導を行う集められた情報を読み解くのが薬剤師の価値だ」とも述べた。

◎調剤報酬 「皆が求めるのは、アウトカム評価だ」


そのうえで、調剤報酬については、「患者さんが抱えている問題に対して、薬剤師が行動して患者さんに価値を提供する。与えられるのが報酬だ。これが報酬の基本的な考え方だ」と説明した。評価軸としては、ストラクチャー指標、プロセス指標、アウトプット指標、アウトカム指標があるが、「最終的に皆が求めたいのは、アウトカム。その結果、患者さんがどうなりました?という話がなかなか聞けない。薬剤師の評価としてこれから求められるところだ」と述べた。「薬剤師の行動がプロセス指標やアウトプット指標で評価される時に、アウトカムとして患者さんがどうだったかを皆が知りたがっている。薬剤師の価値を見せていくための一つ大事なことだ」と強調した。

さらに、「使命に基づいて行動し、その結果が報酬につながる。いまの現場の実態として報酬を得るために何かの行動をする、それは使命につながっているかということが外から問われている」とも指摘した。こうした評価は調剤医療費を負担する保険者や国から理解を得る必要があるとの考えも示した。

紀平薬剤管理官は、薬局が価値を発揮するためには、薬剤師をいかに活用できるか、が重要だと指摘。「国から言われているからといって現場に押し付けているだけでは現場はまわらない。必要な人員や設備を整備する必要がある。薬局だけで完結するのではなく、地域との関係の中で価値を認めてもらうことが大事だ」と述べた。

機械化やOTC・セルフメディケーション、オンライン服薬指導や電子処方箋など、取り巻く環境が変化をしている。紀平薬剤管理官は、「こういったものは薬剤師や薬局の本質的な部分に影響するものだろうか。手段というかツールでしかない」と指摘。「薬剤師・薬局の仕事は、国民の健康な生活を確保することだ。住民の生活を支えるのが薬剤師の役割だ。そのためには、こういったツールをどう使っていくのか、考えるべきだ」と強調した。
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