病棟の患者用ネット環境 DPC病院の9割近くが整備に前向き 「整備済み」は46%
公開日時 2021/09/09 04:51
DPC病院の9割近くが、病棟の患者用インターネット環境の整備に前向きなことがわかった。病棟の患者用ネット環境が「整備済み」は46%、「検討中」は40%だった。コロナ禍で入院患者の外部との接触が制限されるなか、オンラインで外部とのコミュニケーションをとれるようにする。実際、「整備済み」の病院では、オンライン面会や妊婦の母親学級などに活用され、患者満足度の向上や不安軽減につながったとの声が聞かれた。
この調査は医療情報のネットワーク化を推進するメディカル・データ・ビジョン(以下、MDV)がウェブで実施した。調査時期は8月23日~30日。全国162のDPC病院から回答を得た。調査の背景には、悪性リンパ腫治療で長期入院を経験し、現在復帰した元フジテレビアナウンサーの笠井信輔さんら有志が立ち上げた「#病室WiFi協議会」の活動に共感したことがある。
病棟に患者用ネット環境が整備されているかを聞いたところ、「整備済み」は75病院(46%)、「検討中」は65病院(40%)、「整備する予定はない」は22病院(14%)――だった。
整備済みの病院からは、「オンライン面会でき、患者さんが涙を流して喜ばれた」(東北医科薬科大学病院(仙台市))、「ターミナル(終末期)の患者さんから、やりたい仕事ができたと喜ばれた」(西陣病院(京都市))、「集団指導ができない中、母親学級で資料動画を提供することができ、妊婦さんの不安軽減につながった(青森県立中央病院(青森市))――といった声が寄せられた。
病棟に限らず院内のネット環境を整備したことで、「外来患者の待ち時間の過ごし方の幅が広がった」(つるぎ町立半田病院(徳島県美馬郡))や、「療養中や待合中の患者満足度はもちろん、職員個人も使えるよう大規模な装置を整備したので、職員満足度の向上にもつながっている」(ハートライフ病院(沖縄県中頭郡))との事例も紹介された。
◎環境整備に課題も
一方で、「速度が遅い」といった苦情があったことや、高齢者のオンライン面会時に職員が立ち会うことになり「人員のやりくりが大変」との意見もあった。
9月末に申請期限を迎える厚労省の21年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金は、入院患者などが利用できるWi-Fi環境の整備費用も対象になっている。しかし、「他の費用で補助金の上限額に達してしまった」、「前年度の同補助金を受領したため申請できない」といった指摘があった。MDVは、「ネット環境の整備を検討している病院がより導入しやすい体制の整備が期待される」としている。