ファイザーの新型コロナワクチン「コミナティ筋注」を乗せた航空機の第３便が３月１日午前、成田空港に到着した。医療従事者を対象とした先行接種に向けて、８万7750バイアルを運んだ。１バイアルで６回接種すれば、52万6500回分に相当する。本誌は到着の模様を現地で取材した。




積み荷の新型コロナワクチンはファイザーのベルギー工場で生産されたものだ。ベルギー・ブリュッセルから飛び立った全日本空輸（ANA）のNH9648便は、約11時間のフライトを経て、定刻より若干早く成田空港の滑走路に着陸した。新型コロナウイルスワクチンを搭載しての飛来は、第1便の２月12日、第2便の21日に次ぐものとなる。滑走路から誘導路に入ったボーイング787の機体は、我々がよく目にする旅客ターミナルとは別の、貨物専用ターミナルへと進み、メディアのカメラが居並ぶ到着スポットにゆっくりと停止した。


機体の貨物室から慎重に取り出されたコンテナは、専用の運搬車両で貨物ターミナルへ運ばれる。荷解きをしたソフトボックスには、新型コロナワクチンがドライアイスなどとともに、専用の箱に入れられていた。成田空港への着陸からわずか２時間あまり、税関手続きを終えた新型コロナウイルスワクチンは、お昼前には専用のDHLのトラックに積み込まれ、空港を後にした。


 
２月17日から全国の約100医療機関、約４万人の医療従事者を対象とした新型コロナワクチンの先行接種がスタートした。今月からは約470万人を対象とした医療従事者への優先接種もスタートする。今回のワクチン接種はまさに国家的プロジェクトに相当するものだ。政府は65歳以上の高齢者への優先接種を４月12日から始めると説明している。高齢者をはじめ、地域住民へのワクチン接種は全国の自治体が行うことになる。すでに地域の医師会や薬剤師会はワクチン接種への対応を見据え、自治体と連携して接種場所の確保や段取りの打ち合わせ、様々な事態を想定した訓練などを進めている。

河野太郎行政改革担当大臣は２月26日の会見で、ＥＵの承認を前提としたうえで、「ファイザー社との交渉の結果、6月末までに65歳以上の高齢者全員が2回接種する分のワクチンを、自治体に配送完了できるスケジュールで供給を受けると大枠で合意した」と述べていた。

◎首相官邸　ワクチンの自治体向け出荷予定をTwitter通じて公表

首相官邸は3月1日、65歳以上の高齢者への接種に用いる新型コロナワクチンについて、4月5日の週から19日の週は数量を限定して各都道府県に出荷することをTwitterで公表した。具体的には、全国で、①4月5日の週は100箱、②4月12日の週は500箱、③4月19日の週は500箱を予定するというもの。4月26日の週には全市町村に1箱ずつ出荷する。加えて、各市町村に対し、接種時期に先立って高齢者への接種券の送付を要請しており、標準的には4月23日頃までの接種開始に近い時期を想定していることを明らかにした。

◎コミナティ筋注の添付文書を改訂　「－25℃から－15℃」で最長 14日間の保存が可能

一方、ファイザーとBioNTech SEは3月1日、コミナティ筋注の添付文書を改訂したと発表した。保存方法として、「薬剤調製時の注意」の「保存方法」の項目として、「－25℃から－15℃」で最長14日間の保存が可能である旨を追記した。なお、添付文書には、「本剤は「－90℃から－60℃」から「－25℃から－15℃」に移し、「－25℃から－15℃」で最長14日間保存することができる。なお1回に限り、再度「－90℃から－60℃」に戻し保存することができる。いずれの場合も有効期間内に使用すること」と記載した。同社は、ワクチンを輸送および保管する際の柔軟性が増すことが期待されるとしている。

◎医療機関の保管温度逸脱で172バイアルが使用不可に

この日は、新型コロナワクチンを先行接種する医療機関から保管温度を逸脱し、ワクチン172バイアルが使用不可になったと報告があったことを厚労省が発表した。2月26日の深夜にディープフリーザーが故障したという。きょう２日にも、納入企業が当該医療機関を訪問し、故障したディープフリーザーの代替製品を持参するとともに、当該ディープフリーザーを回収し、その原因の調査を行う予定。厚生労働省は、「調査結果を踏まえて、速やかに再発防止策を検討する」としている。