薬食審 2月22日に第二部会 新薬8製品を審議 レンビマの胸腺がん適応追加など
公開日時 2021/02/09 19:30
厚生労働省は2月9日、新薬の承認可否の審議などを行う薬食審医薬品第二部会を22日にウェブ会議で開催すると発表した。審議品目は8製品。この中には、エーザイの抗がん剤レンビマ(一般名:レンバチニブメシル酸塩)に胸腺がんの適応を追加することや、中外製薬が再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)治療薬として承認申請した抗CD79b抗体薬物複合体ポライビー点滴静注用(同ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え))、非オピオイド貼付剤として初のがん性疼痛薬となる可能性がある久光製薬のジクトルテープ(同ジクロフェナクナトリウム)が含まれる。
同部会で承認が了承されれば、3月中に正式承認される見込み。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽アリケイス吸入液590mg(アミカシン硫酸塩、インスメッド):「肺非結核性抗酸菌症」を対象疾患とする新投与経路医薬品。
アミノグリコシド系抗生物質製剤。有効成分のアミカシンは注射薬として承認されている。今回は初の吸入薬となる。なお、適応範囲が既承認の注射薬と同じかどうかは部会審議を経て明らかになる。
▽ジクトルテープ75mg(ジクロフェナクナトリウム、久光製薬):「各種がんにおける鎮痛」を対象疾患とする新効能・新剤形医薬品。
久光のTDDS(経皮薬物送達システム)技術を用いて開発した経皮吸収型非ステロイド性疼痛治療薬。承認されれば、非オピオイドの貼付剤で初のがん性疼痛薬となる。
▽アキュミン静注(フルシクロビン(18F)、日本メジフィジックス):「悪性神経膠腫を疑う患者における腫瘍の可視化」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
放射性医薬品。MRIやPETと組み合わせて使用する。
▽ダラキューロ配合皮下注(ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「多発性骨髄腫」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。
ダラツムマブはCD38を標的とするモノクローナル抗体で、多発性骨髄腫に用いる点滴静注製剤「ダラザレックス」として承認されている。今回は、ダラツムマブに新有効成分のボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)を配合した皮下注製剤で、投与時間の短縮、固定用量による薬剤調整手順の簡略化などによる患者及び医療従事者の負担軽減が期待されている。
ボルヒアルロニダーゼアルファは、真皮の主要な結合基質であるヒアルロン酸をN-アセチルグルコサミンの四糖類、または六糖類のサブユニット及びグルクロン酸に脱重合することにより、皮下組織に薬剤を注入する際の抵抗を減少させ、薬剤の体内への浸透と分散を促進する。
▽ベネクレクスタ錠10mg、同錠50mg、同錠100mg(ベネトクラクス、アッヴィ):「急性骨髄性白血病」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
BCL-2と呼ばれる体内の特定タンパク質を標的とする経口BCL-2阻害薬。いくつかの血液がんでは、BCL-2がアポトーシスと呼ばれるがん細胞の自然死や自己破壊の過程を阻止する。同剤はBCL-2タンパク質を標的とし、がん細胞により失われたアポトーシスの過程を回復させる作用がある。現在は再発・難治性の慢性リンパ性白血病と小リンパ球性リンパ腫を適応としている。
▽ポライビー点滴静注用140mg、同点滴静注用30mg(ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)、中外製薬):「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
抗CD79b抗体薬物複合体。ヒト化抗CD79bモノクローナル抗体とチューブリン重合阻害薬をリンカーで結合させた薬剤。CD79bタンパクは、多くのB細胞で特異的に発現しており、新たな治療法を開発する上で有望なターゲットとされる。同剤は正常細胞への影響を抑えつつCD79bに結合し、送達された化学療法剤によりB細胞を破壊すると考えられている。
同剤はシンバイオ製薬の抗がん剤トレアキシン(一般名:ベンダムスチン塩酸塩)と併用して用いる。22日の部会では、トレアキシンのポライビーとの併用に係る新効能・新用量が報告される。
▽レンビマカプセル4mg、同カプセル(レンバチニブメシル酸塩、エーザイ):「胸腺がん」を対象疾患とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。
マルチキナーゼ阻害薬。胸腺がんは、国内患者数が140人~200人程度と推定される極めて希少な疾患。切除不能な胸腺がんに対しては、プラチナ製剤を含む1次療法が推奨されているが、2次療法以降は標準的な治療法が確立していない。依然として予後不良な疾患で、新たな治療薬の開発が望まれている。
エーザイと、MSDの親会社の米メルクはレンビマのグローバルな共同開発と共同販促を行う戦略的提携を結んでいる。両社はレンビマの単剤療法と、メルクの抗PD-1抗体キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法について共同開発・共同販促を行っている。
▽ペマジール錠4.5mg(ペミガチニブ、インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン):「胆道がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
選択的線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害薬。日本では、「FGFR2融合遺伝子陽性の局所進行または転移性胆管がん」の治療薬として承認申請された。同錠による高リン血症に対処するため、ニプロの炭酸ランタン顆粒分包「ニプロ」を併用する。このため、ニプロの炭酸ランタンにペマジール錠との併用に係る新効能を追加することを、この日の部会で報告する。
インサイト日本法人はペマジールを自社販売する方針。同社は20年9月のミクスの取材に対し、MRの採用活動を進める意向を示していた。なお、インサイト製品のうち既に国内導入されているのは、経口JAK阻害薬ジャカビ、経口MET阻害薬タブレクタ、経口JAK阻害薬オルミエント――の3剤。ジャカビとタブレクタの製造販売元はノバルティスファーマ、オルミエントは日本イーライリリーとなる。
■ヒュミラで3剤目のバイオシミラー登場へ
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽アダリムマブBS皮下注20mgシリンジ0.2mL「MA」、同皮下注40mgシリンジ0.4mL「MA」、同皮下注80mgシリンジ0.8mL「MA」、同皮下注40mgペン0.4mL「MA」(アダリムマブ(遺伝子組換え)[アダリムマブ後続3]、持田製薬):「関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、強直性脊椎炎、腸管型ベーチェット病、クローン病、潰瘍性大腸炎」を対象疾患とするバイオ後続品。
ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体ヒュミラで3剤目となるバイオ後続品。先発品にある化膿性汗腺炎などの一部効能は含まれない。
▽トレアキシン点滴静注用25mg、同点滴静注用100mg(ベンダムスチン塩酸塩、シンバイオ製薬):「B細胞リンパ腫」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。この日に審議される抗CD79b抗体薬物複合体ポライビー点滴静注用と併用して使えるようにするため効能などを追加する。
▽ビダーザ注射用100mg(アザシチジン、日本新薬):「白血病」を対象疾患とする新効能医薬品。
DNAメチル化阻害作用および殺細胞作用を有し、現在は骨髄異形成症候群(MDS)を効能・効果とする。核酸類縁体のアザシチジンを主成分とする注射用凍結乾燥製剤。日本新薬の資料によると、急性骨髄性白血病治療薬として承認申請された。
▽炭酸ランタン顆粒分包250mg「ニプロ」、同顆粒分包500mg「ニプロ」(炭酸ランタン水和物、ニプロ):「高リン血症」を対象疾患とする新効能医薬品。この日に審議されるFGFR阻害薬ペマジールと併用して使えるようにするための効能追加を行う。ニプロの炭酸ランタンは後発医薬品だが、臨床試験でニプロ製品を用いたため、ニプロの炭酸ランタンに新効能を追加する。