20年12月 インフルエンザの流行みられず 患者数、直近5年間平均の169分の1 JMIRI調べ
公開日時 2021/01/15 04:52
今冬は新型コロナウイルスとインフルエンザのダブルパンデミックが懸念されているが、2020年12月末時点でもインフルエンザの流行入りは見られなかった。調剤レセプトベースで実際の処方動向を把握・分析する医療情報総合研究所(通称JMIRI、読み:ジェイミリ)のデータによると、12月のインフルエンザ患者数は前年同月比で338分の1、15年~19年の直近5年間の12月平均と比較しても169分の1と低水準にとどまった。
ただ、JMIRIは、「現時点では流行入りしていないが、例年インフルエンザは1~2月に感染拡大のピークを迎えるため、もう数か月動向を見守っていく必要はある」と注意喚起している。
今回の分析に用いた「インフルエンザ患者数」は、院外調剤薬局で調剤可能なオセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、バロキサビルを処方された患者のこと。同社データによる15年以降の12月のインフルエンザ患者数は、15年1604人、16年2万1250人、17年3万36人、18年1万8512人、19年4万7625人、20年141人――で、20年のインフルエンザ患者の少なさがわかる。
■20年シーズン 特に10歳未満の患者少なく
20年8月31日~12月31日のインフルエンザ患者数を、15~19年の同時期の平均と比較すると、20年シーズンは特に10歳未満の患者が大幅に減っていることもわかった。15-19年の10歳未満のインフルエンザ患者は全体の28%を占めるが、20年シーズンは4%にとどまった。JMIRIは「保育所や幼稚園などでの感染拡大が抑えられていることが示唆される」と分析している。
■1回あたり処方日数は増加傾向
新型コロナの第3波による処方動向も気になるところだ。そこで12月までの全薬剤の処方状況の推移を見てみると、1回あたりの平均処方日数は8月以降、毎月、前年同月比で10%程度の増で推移していたが、12月は前年同月比13%増となり、増加傾向を示した。
処方を受けた患者数は10月に前年同月比4%減まで回復したものの、11月は再び同11%減となり、12月は同9%減だった。
JMIRIは、「新型コロナの第1波では患者数大幅減、処方日数大幅増となり、第2波は大きな変動は見られなかったが、第3波では1回あたりの処方日数を増やすことで受診間隔をあけようとする傾向がみられている」との見方を示した。また、「1回目の緊急事態宣言下では医療機関を受診する患者数が大幅に減少しており、(2回目の緊急事態宣言が出た)1月以降の動向も引き続き注視していく必要がある」としている。緊急事態宣言下にあった20年5月の患者数は前年同月比20%減まで落ち込んだ。