薬食審 12月4日に第二部会 新薬8品目を審議 リムパーザの膵がん適応、HPVワクチンの男性適応など
公開日時 2020/11/24 04:50
厚生労働省は11月20日、新薬の承認可否の審議などを行う薬食審医薬品第二部会を12月4日にウェブ会議で開催すると発表した。審議予定品目は8品目。この中には経口PARP阻害薬・リムパーザ錠に膵がんの適応を追加することや、HPVワクチンのガーダシル水性懸濁筋注に男性適応を追加することが含まれる。
報告予定品目は4品目。がん免疫療法薬の抗PD-L1抗体・テセントリク点滴静注の非小細胞肺がんの適応に単剤による1次治療を追加することや、リムパーザ錠に去勢抵抗性前立腺がんの適応を追加すること、また、抗体製剤ヒュミラで2剤目のバイオ後続品も報告される。
同部会で承認することが了承された場合、適応や用法などの追加は12月中に正式承認され、新有効成分含有医薬品は年明けに正式承認される見込み。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ジョイクル関節注30mg(ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム、生化学工業):「変形性関節症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
生化学独自の薬剤結合技術を用いてヒアルロン酸とジクロフェナクを化学結合した薬剤。ヒアルロン酸による関節機能改善効果に加え、徐放されるように設計されたジクロフェナクの鎮痛・抗炎症作用を併せ持つ。注射剤として関節腔内及び腱・じん帯付着部近傍に直接投与する。承認取得後は小野薬品が販売及び情報提供・収集活動を行う。
▽オルミエント錠4mg、同錠2mg(バリシチニブ、日本イーライリリー):「アトピー性皮膚炎」を対象疾患とする新効能医薬品。
選択的JAK1及びJAK2阻害薬。JAK依存性サイトカインは多くの炎症性及び自己免疫疾患の病因と関連していることが示唆されており、JAK阻害の作用により効果を発揮すると考えられている。現在は、「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を適応としている。
▽ヌーイック静注用250、同静注用500、同静注用1000、同静注用2000、同静注用2500、同静注用3000、同静注用4000(シモクトコグ アルファ(遺伝子組換え)、藤本製薬):「血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
▽リンスパッド点滴静注用1000mg(乾燥濃縮人α1-プロテイナーゼインヒビター、Grifols Therapeutics LLC):「重症α1-アンチトリプシン欠乏症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
α1-アンチトリプシン(AAT)欠乏症は、AATの欠乏により、若年性に慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症する疾患。主な症状は労作時呼吸困難や慢性の咳嗽・喀痰で、進行すると労作時呼吸困難の程度が悪化し、酸素吸入、人工呼吸管理が必要になる。
▽ガーダシル水性懸濁筋注シリンジ(組換え沈降4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来)、MSD):「肛門がん及びその前駆病変」「尖圭コンジローマ」を対象疾患とする新効能医薬品。
HPVワクチン。現在はヒトパピローマウイルス(HPV)6、11、16、18型の感染に起因する子宮頸がんや尖圭コンジローマなどの予防を適応とし、既承認適応はいずれも9歳以上の女性に投与して用いる。今回、男性への適応拡大を審議する。
▽アルンブリグ錠30mg、同錠90mg(ブリグチニブ、武田薬品):「非小細胞肺がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
ALKを選択的に阻害する次世代チロシンキナーゼ阻害薬。武田は、ALKチロシンキナーゼ阻害薬治療後に進行したALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する治療薬として承認申請している。
▽リムパーザ錠100mg、同錠150mg(オラパリブ、アストラゼネカ):「膵がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
ファーストインクラスのPARP(ポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ)阻害薬。DNA損傷応答(DDR)経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導する。現在は卵巣がんや乳がんに係る適応を持つ。今回、膵がんの適応追加を審議する。
▽マブキャンパス点滴静注30mg(アレムツズマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「同種造血幹細胞移植」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
リンパ球やその他の免疫細胞の表面に結合して腫瘍増殖を抑制するヒト化抗CD52モノクローナル抗体。現在は「再発又は難治性の慢性リンパ性白血病」を適応とする。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽テセントリク点滴静注1200mg(アテゾリズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「非小細胞肺がん」を対象疾患とする新用量医薬品。
がん免疫療法に用いる改変型抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体。現在は扁平上皮がんを除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、カルボプラチン、パクリタキセル及びベバシズマブ(遺伝子組換え)と併用して1次治療に使える。今回、PD-L1陽性の場合、単剤による1次治療を可能とする。
▽リムパーザ錠100mg、同錠150mg(オラパリブ、アストラゼネカ):「去勢抵抗性前立腺がん」「卵巣がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
ファーストインクラスのPARP(ポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ)阻害薬。去勢抵抗性前立腺がんの効能を追加する。現在、卵巣がんに係る適応では、プラチナ製剤を使用した上でリムパーザを処方できるが、今回、プラチナ製剤の使用前でもリムパーザを処方できることを追加する。
▽アダリムマブBS皮下注20mgシリンジ0.4mL「第一三共」、同皮下注40mgシリンジ0.8mL、同皮下注40mgペン0.8mL(アダリムマブ(遺伝子組換え)[アダリムマブ後続2]、第一三共):「関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、特発性関節炎、腸管型ベーチェット病」を対象疾患とするバイオ後続品。
ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤ヒュミラで2剤目のバイオ後続品。
▽リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注150mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「非ホジキンリンパ腫」を対象疾患とする新用量医薬品。希少疾病用医薬品。厚労省によると、希釈の方法に関する用法・用量追加で、投与速度が変えられるようになる。