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日本セルヴィエ オニバイドの発売ですい臓がん2次治療の有効性確立と幅広い患者層での使用に期待

公開日時 2020/07/01 04:50
日本セルヴィエは6月25日、「すい臓がん治療の最前線〜高いアンメットニーズと今後の展望〜」と題したプレスセミナーを開催した。6月1日に「がん化学療法後に増悪した治療切除不能の膵癌」を効能・効果とする抗悪性腫瘍剤「「オニバイド点滴静注43㎎」(一般名:イリノテカン塩酸塩水和物)を発売したのに伴い、すい臓がんに関する理解および最新の治療動向や知見などを啓発していくのが狙いだ。登壇者には同社代表取締役のエリック・デラージュ氏が挨拶に立ったほか、杏林大学腫瘍内科学教授の古瀬純司氏がすい臓がんの疫学や最新の治療状況、特定非営利活動法人パンキャンジャパン理事長の眞島喜幸氏が患者視点からの治療への期待などをそれぞれ講演した。

◎1次治療のほぼ全員が中断 課題は2次治療の有効性

がん研究振興財団の「がんの統計」によると、全体のがん罹患数は2008年の約85万人から2016年には100万人弱と8年間で15万人近く増加しており、すい臓がんに限ってみると、同じ期間で3万人弱から約4万人と1万人以上増えている。

一方、がん死亡数は全体では2013〜18年の年平均で約2500人増にとどまっているものの、すい臓がんだけで約1000人を占める。全がん種平均の5年生存率が6割を超えるなか、すい臓がんはいまだ二桁にも達していない。膵癌診療ガイドライン作成委員などを務める古瀬氏は、「決定的なリスクファクターがないため早期診断が困難で、切除可能な比較的早期に発見される症例は2割にすぎません。すい臓がんは依然、極めて予後の悪い疾患の代表格です」と述べ、同疾患の早期発見・診断が進んでいないなか、患者の長期生存を図るためには抗腫瘍効果の高い薬物治療が不可欠であるとの認識を示した。

実際、切除不能膵癌に対して2001年にゲムシタビンが保険適応されたのに伴い、すい臓がん患者の生存曲線が切除手術例、非切除治療例ともに大きく改善するなど、ガイドラインではどのステージにおいても化学療法がアルゴリズムに組み込まれている。2006年にS-1、2011年にはエルロチニブが承認され、現在は、FOLFIRINOX療法(5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、レボホリナート、2103年)と、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法(2014年)の2つが第一選択となる薬物療法だ。ただし、ここ数年はこれといった新薬が登場していない。

「切除不能例では1次治療を行ってもほぼ全員が増悪か副作用で中断せざるを得ない。50〜60%の患者さんが2次治療を受けるが、有効性が証明された2次治療はなく2本柱を回していくしかないのが現状」と古瀬氏。これまでの課題として2次治療における有効性の確立を挙げた。

◎「患者らが待ち望んでいた治療」 有効性引き出すには適切な副作用管理が前提

ゲムシタビン治療後の患者を想定して開発されたオニバイドは、有効成分であるイリノテカンをリポソームのナノ粒子に封入して腫瘍微小環境への薬物伝達性を向上させた抗悪性腫瘍剤。通常のイリノテカンの約5分の1の投与量で、同程度の血漿中、腫瘍内の活性代謝物(SN-38)濃度を達成できる。

ゲムシタビンを含む化学療法後の膵癌患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験では、オニバイドと5-FUおよびホリナートの併用投与(nal-IRI+5-FU/LV)群と5-FU/LV群を比較。主要評価項目である全生存期間(OS)の中央値は5-FU/LV群が4.2カ月であるのに対し、nal-IRI+5-FU/LV群は6.2カ月と有意に延長し、すい臓がん2次治療における有効性が証明された。

「患者さんのみならず、ご家族や医師など医療者が待ち望んでいた治療であり、今後、幅広い層に使用されること期待しています」(古瀬氏)。とはいえ、国内で承認を得るために行った国内第2相臨床試験では、nal-IRI+5-FU/LV群(n=46)において全例で副作用が生じた。多いのは、悪心、好中球数減少、食欲減退、白血球数減少、下痢で、特に悪心は患者の8割近くに上っている。古瀬氏は「期待される有効性を引き出すには、適切な適応と実施に加え、副作用マネジメントが必要」と指摘したうえで、「支持療法も充実しているので多くの場合、マネジメントできる」と述べた。

「膵臓がん患者の希望につながる新薬」と題して講演したパンキャンジャパンの眞島氏は、ゲムシタビンは国内承認まで6年、エルロチニブで5.7年などのデータを示し、日本のすい臓がん治療は“ドラッグラグとの闘い”と位置付けた。そのうえで「日本人の罹患率は米国の約2倍であるにもかかわらず、臨床試験が少なく、また適応外薬が使えない」と国際標準治療薬へのアクセスが容易ではない点を指摘。「パンキャンジャパンの膵臓がんナショナルアドボカシーデー活動を進めて、国内の研究費増額に貢献するとともに、将来的にはドラックラグをゼロしていきたい」と訴えた。
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