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厚労省・医薬品安定供給確保検討会 医薬品の欠品時の製薬企業の情報提供の在り方が論点に

公開日時 2020/06/29 04:54
厚生労働省の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」(清田浩座長・日本化学療法学会理事長)は6月26日、ウエブで議論を行った。新型コロナウイルス感染症の影響で、供給不安のリスクが高まるなか、薬価だけではなく、幅広い視点からの“国家的な支援”の必要性を指摘する声があがった。また、欠品時に供給不安が煽られ、結果として医療機関や薬局が買い占めに走るリスクがあるなかで、情報共有の在り方が論点となった。検討会では、製薬企業やMRにより情報提供にバラツキがあることを指摘する意見もあがった。現在は、欠品時などで定められた情報提供のフォーマットなどはなく、今後は製薬企業から医療現場の情報提供のあり方も論点となりそうだ。

◎日医・長島委員・国をあげた支援求める 「薬価上だけのような狭い視野の対応では限界」


新型コロナウイルス感染の拡大を受け、医薬品の安定供給への影響が出るリスクが高まっている。特に、原薬は中国やインドなど海外に依存していることも多い。海外で製造、輸出等が止まっており7月末までに供給不安に陥る可能性のある品目は10品目、現状製造が止まっていないが、仮に2か月間止まった場合に影響が出る可能性のある品目は58品目という。こうしたなかで、供給不安を避けるためには、薬価の対応だけでなく、他産業との連携や外交上の措置も含めた幅広い対策が必要となる。

長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「国の安全保障にかかわる問題だ。薬価上の措置だけのような狭い視野の対応では限界がある。国家的に国の支援のもと、国内生産への移行、または国内生産が難しい場合は在庫の積み増し等、国家戦略的対応が必要だ」と述べた。また、医薬品だけでなく医療資材や医療機器をあわせ、経産省や外務省など他省庁とも連携した“国家的な支援”の必要性を求めた。国内生産については、「単純に国内に生産に移行するだけではなく、連続生産など技術革新とセットであるべきだ。国内の産業の育成も含めた視点で行うべき」と強調した。製薬業界からは、国産の原薬を長期的に安定供給するために政府の買い上げや、薬事規制の国際調和などを要望する声もあった。

◎川上委員 欠品時の情報提供「現実的には個人の力量や配慮に依存」


論点となったのが、欠品時などの情報共有の在り方だ。現実的に全品目を行うことは難しく、長年汎用されており安定確保が求められる「安定確保医薬品」(仮称)に絞り、供給リスクを監視することが提案された。ただ、供給不安を恐れ、過剰な発注や在庫の抱え込みなど、買い占めに走る可能性もある。長島委員は、「国と企業との情報共有は常にされるべきだが、医療現場に対しての情報開示については、その対象、誰に開示するか、内容の範囲やタイミングなど、デメリットが生じないような慎重な対応が必要だ。どのような情報をどのようなタイミングで開示するか、企業からの情報をどう把握するかという仕組みづくりについてしっかり検討すべき」と述べた。

製薬企業から医療現場への情報提供が重要になるが、川上純一委員(浜松医科大学医学部附属病院薬剤部教授・薬剤部長)は、現状として採用・購入している医薬品以外の情報を入手することが難しいことを説明。「情報源は医薬品卸の担当者や製薬企業のMRになるが、現実的には個人の力量や配慮に依存している」と指摘した。そのうえで、医療機関に提供する情報の項目や方法を標準化することや、行政による流通の一元管理、ウエブによる公表などを要望した。

また、現状では、医薬品の欠品時に関する情報を体系的に収集、評価、提供するシステムがなく、エリア全体の在庫状況をリアルタイムで捉えることも難しい。また、緊急時は、取引実績のない医療機関には当該医薬品が納入されないなど、医薬品流通の偏在も起きている。このため、正確な情報を迅速に提供するための体制を構築する必要性が高まっている。

長島委員はシステムについて、「理想的にはあるべき」としたうえで、システム上の難しさも指摘。「医療に関する情報共有のシステムの中に組み込まれるとより有効。オンライン資格確認を活用するような方法なども考えるべき」と述べた。流通との整合性を取ることも重要になるなかで、医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(流改懇)の座長も務める三村優美子委員(青山学院大学経営学部教授)は、欠品時に在庫の確保に医薬品卸も医療機関も奔走するとしたうえで、「医療機関と薬局、卸の契約内容を一旦停止する方策が必要だ」との考えを表明。独占禁止法との兼ね合いを指摘したほか、「薬価や価格交渉と関連するが、新カテゴリーとして作る」必要性なども指摘した。

◎安定確保医薬品医薬品リスト 1000品目超の可能性も


厚労省はこの日、「安定確保医薬品」(仮称))について各学会が提出した現時点でのリストを提示した。リストは36学会、48品目。最終的には1000品目を超える可能性もあるという。長島委員は、「各学会の安定確保のリストは極めて重要だ。これがすべての検討の源となるべき」と指摘。対策が多岐にわたることから、「ワーキンググループを作って対策の優先順位を考えることが必要」との考えを示した。検討会では次回会議で取りまとめの骨子案を提示する方針。並行してワーキンググループなどで議論を深めることも視野に入れる。
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