日医 インフル検査せず治療薬処方も 医療者側の新型コロナ感染で留意事項
公開日時 2020/03/12 04:52
日本医師会は3月11日、新型コロナウイルスの感染が広がるなか、ゴーグルなどの感染防護具を用意できない医療機関に対し、インフルエンザの迅速診断検査をせずに治療薬を処方するよう検討を求める考えを示した。同日、厚労省が「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点」を各都道府県などに事務連絡したことを受けた対応。日医は「基本的に誰もがこのウイルスを保有している可能性がある」とし、医療者の感染予防に努めながら診療にあたるよう都道府県・郡市区医師会に通知した。
通知では、全ての患者の診療において、標準予防策であるサージカルマスクの着用と手指衛生の励行を徹底することを改めて呼びかけた。そのうえで、新型コロナウイルス感染症の患者や、感染が疑われる人を診察する場合には、標準予防策に加えて、飛沫予防策や接触予防策を実施するよう求めている。
◎マスクなど医療者の感染防護具が足りていない
具体的には、▽患者の鼻腔や咽頭から検体を採取する際には、サージカルマスクや眼を守るためのゴーグル、それにガウンや手袋の装着が必要だとしたほか、▽気道吸引などエアロゾルが発生する可能性がある手技を実施する場合には、加えてN95マスク(またはDS2など準ずるマスク)の装着が必須だと呼び掛けている。
しかし多くの医療機関では、マスクなどの感染防護具が足りていないため、感染防護策を十分にとることができないのが現状だ。同日の会見で日医の釜萢敏常任理事は、感染防護具の供給を政府に要請しているものの、「すぐに大量に供給される状況ではない」と明らかにした。
このため、ウイルスを曝露する可能性があるインフルエンザや溶連菌、RSウイルスなどの検査については、「検査をせず、臨床診断にて治療薬を処方することを検討してほしい」と要請し、通知に盛り込んだ。釜萢常任理事は、「迅速検査なしに診断を行うのは不都合もあると思うが、感染防護具が十分供給されないなかで総合的に判断した」と理解を求めた。日医によると北海道では、感染が判明する前の患者に、インフルエンザを疑って迅速検査を行った医師が新型コロナウイルスに感染する事例が確認されている。
日医では、診察した患者が後に感染者だと判明した場合については、感染予防策を適切に講じていれば濃厚接触者に該当しないとする見解を示す一方、感染予防策をとることが困難な場合は、最寄りの帰国者・接触者外来を紹介することも合わせて呼びかけた。
◎日本環境感染学会 PCR検査が不要な患者に丁寧な説明を 保険適用踏まえ
日本環境感染学会は3月10日、「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第2版改訂版」を公表した。ガイドでは、3月6日に保険適用されたPCR検査について、検査が不要と思われる患者については、対象に該当しないことを丁寧に説明するよう求めた。保険適用による検査希望者の急増をふまえた対応。同学会では、「本来、検査を受けるべき患者を適切に選択する必要がある。不安であれば、経過観察後に改めて相談に応じるなどの対応を取ることが必要だ」とした。
また山梨県で、新型コロナウイルスによる髄膜炎と診断された症例が報告されたことについては、「まれな事例」だとする見解を示した。ただし、無菌性髄膜炎の症例に遭遇した場合には、「念のため新型コロナウイルス感染症の可能性も含めた鑑別が必要だ」と指摘した。