新型コロナ 上気道のウイルス増殖がヒトヒト感染の原因か
公開日時 2020/02/03 04:51
新型コロナウイルスは上気道で増殖しやすい傾向があることが1月31日、明らかになった。ヒトからヒトへの感染が広まる要因となっている可能性がある。国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターの長谷川秀樹センター長は記者会見で、「臨床所見は肺炎のため、ウイルスが増殖する場所は肺のはず。しかし、肺で増殖した場合は、人から人に感染することはあまりない」と説明した。拡大防止に向けて、ウイルスの特徴に合わせた対策の確立に注力する考えだ。国立感染研は同日、新型コロナウイルスの分離に国内で初めて成功したことも発表した。簡易検査法やワクチン、治療薬の早期開発を目指す。
◎血清による検査体制確立で不顕性感染リスク把握を視野
長谷川センター長は新型コロナウイルスの特徴として、2003年に流行したSARSに比べ、「上気道で増えやすいウイルスだと推測される」と説明。一方で、インフルエンザと比べると、上気道のウイルス量は圧倒的に少ないとも指摘した。長谷川センター長は、感染のコアとなる感染者数などについての明言は避けたが、血清による検査体制の確立で、不顕性感染のリスクを把握できる可能性に言及した。
◎無症候性感染者で肺炎患者と同程度のウイルス量検出も
2月1日時点では、中国武漢市からチャーター便で帰国したなかに、5人の無症候性感染者が含まれていたことがわかっている。長谷川センター長は、無症候の感染者のなかに、肺炎を発症した患者と同程度のウイルス量が検出された人がいたと指摘。「(肺炎を)発症するまでの間なのか、不顕性感染を起こしている状態なのか、軽い症状で治る経過で見つかったのかはわからない」とし、今後の経過を注視する考えを示した。一方で、中国当局の重症者数などの発表を踏まえれば、現時点では新型コロナウイルス感染者のうち、重篤化する割合は低いとの考えも示した。
◎水際対策から地域対策へ WHO・尾身元事務局長
会見に同席した元・世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長の尾身茂氏(独立行政法人地域医療機能推進機構理事長)は、「症状を表さない、したたかなウイルスと戦っているということ。対策面では、水際から地域の感染対策に移すべき」との考えを示した。
現在、検討が進められている疑似症サーベイランスの対象範囲の拡大については、現行では、「武漢市から帰国し、肺炎症状がある人、もしくは肺炎患者と濃厚接触があった人」とされている対象を、「最終的には(医療現場の)負担感とセットで考える必要がある」としたうえで、「発熱もしくは肺炎の症状」へと拡大する必要があるとの見解を示した。
◎国内感染者は20例に 3次感染の疑いや陰性から一転した陽性者も
国内では2月1日時点で、無症状5例を含む計20例の感染が確認されている。1月31日に感染が確認された20代のバスガイドは、28日に感染が確認された奈良県のバス運転手と一時同じツアーに同乗していたことがわかっており、厚労省は、運転手から感染が広がる3次感染が起きた可能性があるとしている。また29日にチャーター便で帰国した40代の男性は、1回目の検査が陰性だったが、2月1日に喀痰を用いて行われた追加検査で陽性となった。
◎新型コロナを指定感染症に 2月1日施行
国は2月1日、新型コロナウイルスに関連した感染症について、指定感染症とした。当初予定していた7日から前倒しした。これにより、強制入院などの措置が可能になる。また、14日以内に中国湖北省での滞在歴がある外国人や湖北省発行の中国旅券を所持する外国人について、特段の事情がない限り、症状の有無にかかわらず、その入国を拒否する運用を開始した。