厚生労働省は1月27日、薬食審医薬品第一部会を開き、新薬3製品の承認の可否を審議し、いずれも承認することを了承した。維持期の投与が通常12週に1回となる加齢黄斑変性治療薬ベオビュ硝子体内注射薬(一般名:ブロルシズマブ(遺伝子組換え)、ノバルティス)や、低血糖時に救急処置として点鼻で投与するバクスミー点鼻粉末剤(同グルカゴン、日本イーライリリー)がある。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
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モディオダール錠100mg(モダフィニル、アルフレッサファーマ):「特発性過眠症に伴う日中の過度の眠気」を効能・効果に追加する新効能医薬品。再審査期間は10年。希少疾病用医薬品。
承認条件として、睡眠障害の診断、治療に精通した医師・医療機関のもとでのみ処方され、薬局では調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤がなされるよう必要な措置を講じること――がついた。
精神神経用剤。脳内に作用し、日中の過度の眠気を改善する。特発性過眠症は日中に過度の眠気がみられる状態で、長時間の睡眠を伴う場合と伴わない場合があり、情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺がみられない点でナルコレプシー(日中に耐えがたい睡魔に襲われ、時間や場所を問わず突然入眠してしまう疾患)と鑑別される。同剤は現在、過眠症のひとつのナルコレプシーや、持続陽圧呼吸(CPAP)療法等による気道閉塞に対する治療を実施中の閉塞性睡眠時無呼吸症候群を適応症とする。
海外では18年10月現在、特発性過眠症に関連する効能・効果ではメキシコでのみ承認されている。
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ベオビュ硝子体内注射用キット120mg/mL(ブロルシズマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
眼球に注射して用いる眼科用抗VEGF抗体薬。VEGF-Aに対するヒト化抗ヒトVEGF-Aモノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を、リンカーを介して結合させた遺伝子組換え一本鎖抗体。既承認のVEGF阻害薬と比べて分子量が少なく、より高いモル濃度での投与が可能であることなどから、高濃度投与による作用時間の延長が期待される。
用法・用量は、4週ごとに1回、連続3回硝子体内投与した後、維持期においては通常、12週ごとに1回、硝子体内投与する。既承認のアイリーア硝子体内注射液(一般名:アフリベルセプト(遺伝子組換え)))は、維持期は2か月に1回投与で使用される。
海外では19年10月現在、米国で承認済み。
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バクスミー点鼻粉末剤3mg(グルカゴン、日本イーライリリー):「低血糖時の救急処置」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間は6年。
低血糖時に点鼻で処置するタイプは国内初となる。低血糖の際、ブドウ糖を含む飲料水をとるが、ブドウ糖を口からとれないなど患者本人が対応できない場合は、家族など周りの人がグルカゴンを注射して対処する。バクスミーは低血糖の際、患者本人や周りの人が点鼻で使うイメージとなる。用法・用量は「通常、グルカゴンとして1回3mgを鼻腔内に投与する」とされた。
海外では19年12月現在、欧州、米国、カナダで承認済み。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
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ネオーラル内用液10%(シクロスポリン、ノバルティスファーマ):「川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間なし。
免疫抑制作用を有するカルシニューリン阻害薬。現在の効能・効果は、臓器移植や骨髄移植における拒絶反応の抑制や、ベーチェット病、尋常性乾癬など。海外では19年10月現在、川崎病の急性期を効能・効果として承認されている国・地域はない。
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インスリン リスプロBS注
カートHU「サノフィ」、同BS注ソロスターHU「サノフィ」、同BS注100単位/mL HU「サノフィ」(インスリン リスプロ(遺伝子組換え)〔インスリン リスプロ後続1〕、サノフィ):「インスリン療法が適応となる糖尿病」を効能・効果とするバイオ後続品。再審査期間なし。
先発品は日本イーライリリーが製造販売するヒューマログで、「インスリン療法が適応となる糖尿病」を効能・効果として使われている。ヒューマログのバイオ後続品は初。海外では19年11月現在、EU、米国を含む30以上の国・地域で承認済み。
▽リツキサン点滴静注100mg、同500mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「後天性血栓性血小板減少性紫斑病」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。再審査期間なし。
抗CD20モノクローナル抗体。現在はCD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発血管炎性肉芽腫症のほか、慢性特発性血小板減少性紫斑病などを効能・効果としている。
日本血液学会から、厚労省の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に対して開発要望が提出されていた。公知申請の該当性に係る報告書を元に19年8月、薬食審第一部会で事前評価が行われた結果、申請が妥当と判断されていた。
海外では19年10月時点で、同疾患に関する効能・効果で承認されている国または地域はない。