大臣折衝 20年度診療報酬改定 本体0.55%引上げ正式決定 病床ダウンサイジング支援で84億円確保
公開日時 2019/12/18 04:52
加藤厚労相と麻生財務相は12月17日、大臣折衝を行い、2020年度診療報酬本体は0.55%引き上げることを正式に決めた。薬価については0.99%、材料価格については0.02%引き下げる。診療報酬本体には、消費税財源を活用した救急病院における勤務医の働き方改革への「特例的な対応」として0.08%上積みされた。このほか、病院のダウンサイジング(病床減少)支援として、公費84億円程度を投入する。「稼働病床数を10%以上減少」させることで補助金が交付される。病院経営者に対し、病床のダウンサイジングを決断させ、地域医療構想の実現に向けて病床再編・統合を加速させる狙いがある。超高齢社会の到来が迫るなかで、医療提供体制の改革が加速する。
◎働き方改革0.08%分は「救急病院における勤務医」に充てる
20年度診療報酬改定は、「医師の働き方改革の推進」を一つの旗印として議論が進められてきた。20年度診療報酬改定は本体を0.55%(国費600億円程度、
関連記事)引上げるが、このうち、0.08%(公費126億円程度)を“特例的”に「救急病院における勤務医の働き方改革」に充てる。あわせて、勤務医の働き方改革として、地域医療介護総合確保基金で公費143億円程度を確保した。厚労省と財務省の調整過程では、診療報酬本体への充てんと基金の活用をめぐって、最終調整が進んだ。日本医師会は、地域格差や大病院・中小病院格差などを懸念し、働き方改革は診療報酬本体に充てんするよう強く求め、政府に働きかけていた。一方、財政健全化の手綱を緩めたくない財務省は、診療報酬本体改定率を18年度改定の0.55%から大きく引き下げる方針で調整に臨んだ。今回の改定率は病院の働き方改革に手厚い配分を行った一方で、それを除けば財務省にとっては、16年度(0.49%)、18年度(0.55%)を下回る水準である0.47%が改定率だと説明でき、譲れない一線を守ることができる。予算編成の過程でのこうした駆け引きが、”特例的な対応”を産んだ。
加藤厚労相は大臣折衝後の会見で、「厳しい財政事情のなか、医療機関の経営状況、賃金物価動向を踏まえ、議論してきた」と説明。「医師の働き方改革への対応を含め、質の高い効率的・効果的な医療提供体制を整備し、国民一人ひとりに必要な医療サービスが届けられるよう、改定を活用していきたい」と語った。診療報酬上の働き方改革をめぐる評価は、今後中医協の場で、入院基本料の引き上げや救急病院への加算などが焦点となる。一方、地域医療介護総合確保基金で新設される、働き方改革推進の支援としては、勤務時間インターバルの際の補助などへの活用を見込む。
◎病院のダウンサイジング支援 病院単独、2病院以上の統合、重点支援地域で評価
もう一つ注目されるのが、今回の大臣折衝で、病院のダウンサイジング(病床減少)支援として、公費84億円程度を投入することが決定されたことだ。全額国庫負担の補助金で、使途も問わない。地域医療構想の実現に向けた改革スピードが遅いとの指摘もあるなかで、地域によらず、改革を進めたい考え。
具体的には、①単独病院、②2病院以上の統合、③地域医療構想上の重点支援区域-の3区分にわけ、ダウンサイジングを評価するというもの。1病院か複数病院の統合かによらず、“稼働病床数”を10%以上カットすることが条件で、削減病床数に応じて交付金を増額させる考えだ。病床区分は問わないが、休眠ベッドの削減や病床転換などは対象としない。「ダウンサイジングによる期待収益の損失に対する補助ということに尽きる」(厚労省医政局)との考えだ。年明けにも地方自治体の担当者に公布要領を説明し、20年度から制度の活用を進めてもらう方針。21年度以降については、安定的な財源を活用する視点から、消費税財源による「医療・介護の充実」実現に向けて法改正を行い、病床のダウンサイジングをサポートする。
このほか、マイナンバーカードの健康保険証利用を進めるため、医療機関での読み取り端末やシステムなどの早期整備支援のため、医療情報化支援基金として公費768億円を確保した。
◎薬価改定 市場実勢価等▲0.43%、市場拡大再算定の範囲拡大▲0.01%
診療報酬本体では、働き方改革分の0.08%を除く0.47%を各科に配分。改定率は医科0.53%、歯科0.59%、調剤0.16%で、「1:1.1:0.3」の配分を堅持した。社会保障費の伸びは、5300億円から4100億円程度に抑制する。
薬価の引き下げは市場実勢価改定等の▲0.43%(国費▲500億円程度)や、20年度薬価制度改革で市場拡大再算定の範囲拡大による影響▲0.01%程度がある。このほか、2019年10月の消費増税改定により薬価を前倒しで引き下げた制度改正の影響7か月分などを積み増ししたほか、介護の総報酬割などで財源を確保した。
診療報酬 +0.55%(国費600億円程度)
※1 うち、※2を除く改定分 +0.47%
各科改定率 医科 +0.53%
歯科 +0.59%
調剤 +0.16%
※2 うち、消費税財源を活用した救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応 +0.08%
薬価等
①薬価 ▲0.98%(国費▲1100億円程度)
※うち、実勢価等改定 ▲0.43%(国費▲500億円程度)
※市場拡大再算定の見直し等の効果を含めた影響は▲0.99%
②材料価格 ▲0.02%(国費▲30億円程度)
※うち、実勢価等改定 ▲0.01%(国費▲10億円程度)