中医協総会 調剤基本料引下げで範囲拡大 対物から対人への財源振替に暗雲
公開日時 2019/12/05 04:51
厚生労働省は12月4日の中医協総会に、調剤基本料の引下げ範囲を拡大する方針を示した。診療所敷地内薬局についても、病院の敷地内薬局と同様、点数を大きく引き下げることを提案。診療・支払各側が同意した。2020年度改定も、チェーン薬局や大型門前などにとっては厳しいものとなりそうだ。厚労省は、喘息治療薬での吸入指導など、いわゆる“対人業務”についての評価拡充も提案した。しかし、「服薬指導の一環として行われていると理解している」(診療側・松本吉郎委員・日本医師会常任理事)など、診療・支払各側が反発した。「対物業務」から「対人業務」へと構造転換が一つの焦点となる。調剤料に続き、調剤基本料の引下げが事実上決定的となるなかで、調剤報酬の構造転換にも暗雲が立ち込める状況となった。
調剤基本料は、医薬品の備蓄(廃棄、摩耗を含む)等の体制整備に関する経費を評価した点数。現行制度では、調剤基本料1(42点)のほか、集中率と処方箋回数に応じて点数を引き下げた調剤基本料2(26点)、チェーン薬局などへの調剤基本料3(イ:21点、ロ:16点)、さらには敷地内薬局に対する点数として2018年度改定で新設された特別調剤基本料(11点)がある。
厚労省はこの日の中医協に、医療経済実態調査・特別集計などの結果を示した。2018年度改定ではチェーン減算とも呼ばれるような、チェーン薬局で大幅な調剤基本料の引下げが断行されるなかで、店舗数によらず、損益率などは減少していた。一方で、同一グループで20店舗以上の場合は損益差額が最も大きいと指摘。さらに、医療モール内、中小病院前、大病院前の薬局で損益率の減少幅が大きかったとした。回答数は5軒ながら、診療所敷地内薬局の損益率が高かったことも指摘した。一方で、処方箋集中率が高くなるほど、医薬品の備蓄品目数は減り、特に集中率が95%以上と特定の医療機関の処方箋のみを応需する保険薬局では、備蓄品目数が少なかった。
厚労省側は、これらの薬局について、医薬品の備蓄数が少なく、スケールメリットがあることなどから、薬局経営の効率性を踏まえ、点数を引き下げることを提案した。具体的には、現行制度の調剤基本料2は、①処方箋受付回数が就き4000回超+処方箋集中率70%超、②処方箋受付回数が月2000回超+処方箋集中率85%超、③いわゆる医療モール内の医療機関からの処方箋受付回数の合計が月4000回超などーの範囲を拡大する。また、診療所敷地内薬局についても、病院敷地内薬局と同様に、最も低い点数設計とすることを提案した。
この日の中医協では、診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)が、「論点については、おおむねその方向性で検討することには反対しない。方法について医療経済実態調査を踏まえた基本料の見直し、集中率の見直しが考えられるのではないか」と述べるなど、診療・支払各側が同意した。
調剤基本料1以外では、地域包括ケアシステムのなかで地域医療に貢献する薬局を評価する点数として18年度改定で新設された「地域支援体制加算」の取得に際しても、麻薬指導管理加算などの8つの実績要件が課されることになる。18年度改定では、調剤基本料の引下げだけでなく、地域支援体制加算の取得がチェーン薬局などに直撃しており、20年度改定でも、こうした動きが想定される。
◎対人業務を拡大する点数
厚労省はこの日、対人業務を拡充する点数として、①初めて吸入薬を使用、もしくは処方薬が変更になった喘息やCOPD患者に対する吸入指導(デモ機活用も)、②在宅患者などで簡易懸濁法を開始する際の薬剤選択の提案、患者家族などへの説明・指導、③低血糖防止などの観点から、糖尿病患者などへの調剤後の電話などによる指導、④患者の血液・生化学的検査の結果を活用した医師への疑義紹介による用法用量の適正化―を俎上にあげた。
しかし、厚労省はデモ機を活用し、吸入指導を実施する薬局が9割超とのデータを提示。「当然薬剤師の業務として行うことを行っている」(診療側・今村聡委員・ 日本医師会副会長)、「ただ実技指導を評価するというのは間違いなく過剰評価につながる。このままでは反対せざるを得ない」(支払側・吉森俊和委員・全国健康保険協会理事)などと反発した。効果が不十分なケースや小児・高齢者など手間がかかるケースなど、要件を明確化することを求める声があがった。