諮問会議 製薬産業の構造改革は社会変革の延長線上に 「時間軸を見据え、スピード感をもって」
公開日時 2019/10/29 03:52
政府の経済財政諮問会議の民間議員は10月28日、全世代型社会保障に見合う製薬産業のあり方として「長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造への転換を大胆に推進すべき」と提言した。社会保障の持続可能性を高める観点からも、経済成長を後押しする「良循環」を目指す必要性を強調。人生100年時代を迎えるなかで、働き盛りの40~50歳代の生活習慣病等への予防に対する重点的な取り組みなどを通じ、支え手を増やす必要性を強調した。社会構造の変革に合致した医薬品産業への構造転換を求めた。
団塊世代が後期高齢者となる2022年以降、40年頃まで、高齢者の増加が続く。こうしたなかで、社会保障制度改革はまさに“待ったなし”の状況を迎えている。この日の諮問会議で民間議員は、「時間軸を見据えて、2~3年のうちにスピード感を持って」社会保障制度改革を実現する必要性を指摘した。支え手の減少が見込まれるなかで、限られた財源を、意識と行動変容を促すより“賢い使い方”に振り向けることを促した。
医薬品業界に向けられた“より高い創薬力を持つ産業へ”というメッセージも、こうした社会構造の変革の延長線上にある。民間議員は、薬価・診療報酬改定でもこうした後押しをすることを求めた。具体的には、“G1・G2ルール”が適用される後発品上市後10年間の短縮を検討することを求めた。なお、この期間の短縮についてはすでに中医協薬価専門部会で議論の俎上にのぼっており、診療・支払各側が短縮する方向で一致している。
後発品のさらな使用促進の必要性にも言及した。後発品80%目標達成時期が20年9月に迫るなかで、数量ベースでは72.6%(2018年9月時点)まで伸長した。ただ、金額ベースでは45%にとどまっていることを指摘。“質の高い新たな目標”の設定で、使用促進を後押しする必要性を指摘した。具体的には、「これ以上置き換えが見込めない先発品のない先発品のない後発品を対象から外す」ことに加え、「金額ベース」を提案した。
◎市販後類似薬の保険給付除外を提言
また骨太方針2020に見据え、給付と負担の議論が本格化するなかで、薬剤自己負担引上げについて、「入院等を除き、市販類似薬(OTC類似薬)を保険給付から外すべき」とも提言した。
◎次期調剤報酬改定「患者本位とすべき」
調剤報酬改定については、対物業務から対人業務の調剤報酬へと適正化する必要性を指摘した。対物業務の象徴ともいえる、“調剤料”については、薬剤の投与日数や剤数に応じて点数が増える算定方式の見直しを求めた。一方、対人業務を評価する“薬学管理料”については、「患者にとっての薬学的管理・指導が十分に行われていないのではないか」との指摘があることを明記。患者本位の調剤報酬改定とすべきことを強調した。これに対し、加藤勝信厚労相は、「身近で質の高い効率的・効果的な医療の提供体制の整備を推進する」との考えを示した。
◎地域医療構想の着実な実施求める 民間病院には「大胆な財政支援を」
民間議員はまた、地域医療構想の着実な実現を求めた。地域医療構想をめぐっては厚労省が再編・統合も視野に再検証が必要な424の公立・公的病院を公表したところ。民間議員は、病床の7割超が民間病床であることが地域医療構想の進捗を阻んでいるとして、「官民合わせて過剰となる約13万床の病床削減」を求めた。厚労省に対しては、民間病院の再編に資する分析を19年度中に示すことを求めた。さらに、今後3年程度を集中再編期間に位置付け、病床機能転換や病床の整理・合理化を積極的に行う民間病院には、「大胆に財政支援をすべき」と提言した。これにより、急性期から回復期への転換や、介護医療院を含む介護施設、在宅医療への転換を推し進めたい考え。
厚労省は、地域医療構想、医師の働き方改革、医師の偏在対策を“三位一体”で取り組みを進めている。諮問会議の議長を務める安倍晋三首相は、「地域の住民の方々の医療・介護サービスへのニーズを的確に反映し、持続可能で安心できる地域医療・介護体制を構築していくためには、地域医療構想を実現していくことが不可欠だ」と述べた。