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厚労省 ポリファーマシー対策で入退院時のプロセス評価を提案 中医協総会

公開日時 2019/09/19 03:52
厚生労働省は9月18日、中医協総会に入院時のポリファーマシー対策をめぐり、減薬できた薬剤数をベースとした評価を見直し、減薬に至るまでのプロセスを評価することを提案した。超高齢社会に突入するなかで、ポリファーマシーや重複投薬をめぐる課題は深刻さを増しており、地域一体となった取り組みも求められている。この日の中医協では、重複投薬、ポリファーマシー解消に向けて医療機関への評価がわかれた。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、改正医薬品医療機器等法(薬機法)案を引き合いに、薬剤師に職能発揮を求め、「周りに評価をつける前に薬局薬剤師が本来業務をしっかりやるということが必要ではないか」と薬剤師に職能発揮を強く求めた。

入院時のポリファーマシー解消に向けて評価する点数としては、薬剤総合評価体制加算がある。入院前に6種類以上の内服薬を服用している患者に対して、退院時に2種類以上減薬した場合に評価する点数(退院時に1回、250点)。2016年度の診療報酬改定で新設されて以降、増加傾向にあるものの、2018年度に2848件にとどまっている。医療現場からは減薬の数が評価にすることが、算定要件のハードルになっているとの声もあがっていた。

◎チームや体制などの評価も視野


同省は入院中を処方の一元的な管理や、処方変更後の多職種による確認が可能だとして、「処方薬剤の総合調整の好機」と指摘。医療現場での取り組みとして、東京大学医学部附属病院と、国立長寿医療センターの例を紹介した。

東京大学医学部付属病院では、入退院時に重複投与や相互用、肝・腎機能など7つのスクリーニング項目からなる「持参薬評価テンプレート」を活用。薬剤師がポリファーマシーのスクリーニングを行い、医師が処方薬剤の調整を行っている。一方、国立長寿医療センターでは、入院患者に対して医師、薬剤師、看護師などの多職種がそれぞれの専門性を発揮して連携し、減薬に取り組む。

退院時の情報提供として、医療機関に対しては診療情報提供書、患者や薬局に対しては退院時薬物療法サマリーを活用している。一方で、退院時の薬剤情報提供について評価する点数のうち、退院時薬剤情報管理指導料については、お薬手帳に必要な事項の記載を行うものの、情報提供を薬局に直接行うことを想定したものとはなっていない。そのため、同省は、地域で共有する取り組みを推進するため、医療機関から薬局への情報提供を評価することを提案した。

◎厚労省・森光医療課長「アウトカムだけでなくプロセスを評価」

厚労省保険局医療課の森光敬子医療課長は、「アウトカムだけでなくプロセスを評価するという考え。体制という言い方もあるし、チームでかかわったという場合などというやり方もあるだろうし、診療報酬上には色々な評価がある。結果だけでなく、取り組みを評価させていただきたい」と主旨を説明した。

診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は、「6種類以下でも有害事象が出ているケースがある。有害事象を減らせたということがあるのであれば数ではなく、有害事象を減らしたということを評価していただきたい」などと述べた。一方で支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「どのようなプロセスであればアウトカムが出やすいのか客観的なデータが必要だ」と述べた。

◎重複投薬防止でお薬手帳の議論再燃 支払側・吉森委員「将来的にはオンラインも視野」


重複投薬については、医師、薬剤師の取り組みだけでなく、保険者がレセプト情報を活用し、重複投薬が多い医薬品成分や重複が疑われる薬効群の見える化などを進めている。医師、薬剤師の連携がカギとなるなかで、診療報酬上は医療機関への評価として地域包括診療料・加算、薬局への評価として、かかりつけ薬剤師・薬局の評価がある。同省は、総合的な取り組みを円滑に行うための対応や連携などを評価することを提案した。

支払側からは、医師、薬剤師、保険者の役割に意見が集中。支払側の幸野委員は、「薬剤師は調剤だけが業務ではない。本来業務は、調剤後に重複投薬などを医師に報告して対応すること。保険者、医療機関に点数をつける前に、服用薬歴指導管理料のなかで薬局にしっかりやってほしい」と述べた。外来服薬支援料の算定回数7464回にとどまっていることに触れ、かかりつけ薬局・薬剤師としての職能発揮を求めた。そのうえで、「一次的には、薬剤服用歴管理用に医療機関への情報提供を要件に入れることや、薬局の本来業務をしっかりやるということを考えるべき。周りの環境はその後ではないか」と述べた。

ポリファーマシーや重複投薬に向けて情報共有が必須になるなかで、お薬手帳による情報共有の必要性も指摘された。ただ、薬局で活用が進む一方、医療機関では活用が進まない現状がある。支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「お薬手帳の在り方の議論が必要だ。中長期的な視点で言えば、現行のようなアナログな対応で医療機関・薬局官の連携強化には限界がある」と指摘。2021年3月からマイナンバーカードに保険証機能を持たせることがスタートし、オンライン上での投薬状況の確認について環境整備が進む。吉森委員は、「オンラインでの投薬状況の確認を要件化することは進めていくべき」との考えを示した。
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