厚生労働省医政局経済課の三浦明課長は６月７日、日本ジェネリック医薬品販社協会定時総会後に講演し、「毎年のように大きな変化がある。流通改善ガイドラインはその適正な流通環境に備えるためのものだ。徹底し、皆さんと共に良いものにしていく必要がある」と強調した。10月の消費増税改定、20年４月の薬価通常改定、21年度以降の薬価毎年改定を見通したもの。高齢化の進展と労働生産年齢人口の減少により、「社会が変わるときは社会保障も大きく変わらないといけない。ビジネスはその延長線上にあるのではないか」との考えを表明。製薬企業や医薬品流通に携わる当事者は、「襟を正したビジネスをやっていただきたい」と要請した。

◎7月、9月に公表したQ&Aの意義に言及

2016年12月に４大臣合意された薬価制度抜本改革に向けた基本方針では、医薬品の産業構造転換が起きるなかで、安定的な医薬品流通を確保することの必要性を強調している。具体的には流通の効率化を進めるとともに、「流通改善の推進、市場環境に伴う収益構造への適切な対処を進める」ことをメッセージとして盛り込んだ。厚労省は18年１月に医政局長・保険局長で「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」を発出。一次売差マイナスの解消に向けた適正な最終原価の設定や早期妥結・単品単価契約の推奨を盛り込んだ。その後、Q&Aを７月と９月に公表していた。

三浦課長はこの狙いについて、ガイドライン周知の初年度に当たり「価格交渉は７月くらい、９月は大口先との交渉はどうしてもその時期に妥結する。そのあたりの交渉でしっかりとした交渉をいただくためのアドバイス、素材が必要ということで２回Q＆Aを発出した」と説明した。三浦課長はまた、最終原価は変わらないという指摘もあることに触れ、「最終原価を変えてくれと言うのは次の問題。仕切価をきちんとするという意味では大きな進歩」と評価した。川上取引も焦点となるなかで、価格形成の在り方についても当事者間で共通認識を持つことの必要性を指摘した。

◎社会構造の変革こそ社会保障改革のトリガー　流通当事者はこの意味を十分理解せよ

高齢化の進展と労働生産性人口の減少が日本の経済を直撃する―。高度経済成長以降の日本経済は右肩成長が当たり前で、誰もが未来永劫続くこと期待感を国民は抱いていた。

三浦課長はこの日の講演で、日本社会が人口構造の変化により、これまで経験しないような局面に差し掛かっているとして理解を求めた。三浦課長は、こうした構造変化が社会保障制度を改革する引き金になっていると強調。伸び続ける高齢者医療費について、「必要な予算は取りに行くがこれだけの財政規模になるとある意味厳しい目が向けられている。国民が納得いくような使い道になっているかどうか。それが販売情報提供活動ガイドラインにつながっていく」との見方も示した。

一方で製薬産業側に対しても、臨床研究のデータ不正や調剤報酬の不正請求など、国民から厳しい視線が向けられているとし、「業界という広い目で見ると国民の目に納得できない情報になりかねないという報道がなされている。所作が一つ一つ気を付けていかないといけない」と強調した。

そのうえで、厚労省として根本厚労相の肝いりで、医療・介護、福祉、年金などだけでなく、農業や金融、住宅、食品にもウイングを開いた政策対話を実施したことを説明した。製薬業界も“創薬”をテーマに５月に官民対話に臨んだ。創薬については、「根本厚労相の強いイニシアチブの下、厚労省としては文科省、経産省と連携しないと一貫した政策」の必要性を確認したと説明した。さらに、政府が健康寿命延伸を３年間伸ばすことを目標にかかげるなかで、変化を捉えて医薬品産業に生かす必要性も指摘した。

◎”GEは何か？”という時代は終わった

後発品80％時代のジェネリックメーカーのあり方についても言及した。「”ジェネリックは何か？”という時代は終わったのではないかと思っている」との見方を示した。重視される安定供給も、すぐに欠品するという過去に起きた事例のようなものではなく、「物の異動が国際化しているとや、原薬問題など、課題自体が同じジェネリックの安定供給という言葉を使いながらも変わってきている」と述べ、ジェネリックビジネス自体が大きく変化を遂げているとの見方を示した。